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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
壱頁:コピー・アプレンティス

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39.書記、荒れ果てのログナを属国にする 前編


「――な、何なんですか、これ……?」

「むぅ……この前来た時はこうではなかったのだが、一体どうなっているというのだ」


 俺やレシスにとっては久しぶりで、アースキンにとっては数日ぶりくらいのログナだ。


 国に入るまでは何か言われるのではないかという心配があった。

 しかし今のログナは、それどころじゃない。


 道行く民の姿が無く冒険者ギルドが閉じられている。その時点で異変に気付いた。

 

 ギルドは昼夜問わず一定数の出入りがある。それなのに閉鎖され、人の気配がまるで感じられないのはどうみてもおかしい。


「エンジさん、ログナって平和そのものな国でしたよね?」

「そのはずだけど。どうしてこんなに荒れ果てているんだろう……まさか勇者が」

「そ、そんなはずあるわけないです……」

「ふむ。ラフナンの様子がおかしかったことと関係しているのかもしれぬが……」


 ログナには俺が卒業した義務学院があり、国民のほとんどは戦いにおける基礎を身に付けている。故に書記の俺だけが弱者と見られていたくらい、腕に覚えのある者しか暮らしていない。


 それにもかかわらず家々の者たちは扉を閉ざし、外を歩く者をまるで見かけないし、賑わってもいない状態だ。道も荒れていて異常ともいえる。


 誰かに聞こうにも出歩く人間を見ないとなれば、サーチするしかない。


 ……なるほど。

 ギルドの中、それと学院の方に集まっているのか。


「アースキン。ギルドの中に数人いるけど、中に突入してみる?」

「それしかないだろうな。現状を知る者が閉じこもっているのであれば、そうするほかあるまい」

「レシスもそれでいいね?」

「は、はい」


 そう思いながら入ろうとすると、


「あ、あれ? 入れなくなってる……俺じゃダメなのかな」


 通常はギルド所属もしくは、従事している者はたとえ閉じられていても開けることが出来ていた。

 どうやら追放者としての懲戒がなされているようで、扉に触れることも許されないようだ。


 魔法による封印ならコピーしつつそのまま何とか出来そうなのに。

 ギルドの扉にかけられているのは魔法の類とは異なっていて、どうにも出来ない。


「では、私が触れてみるとしよう」


 賢者のアースキンが扉に触れるとあっさりと開き、中への進入を許された。


 そう言えば彼は一応賢者か。何かの役に立ちそうだし、後でアースキンからコピーしておこう。

 アースキンのおかげですぐに中に入ることが出来たので、そのまま話し声のする奥へ進む。


「何だか深刻そうな声が聞こえます」

「……うん、この声はギルドマスターだね」 


 声の主はかつての雇われ主であるギルドマスター。

 足音で分かったようで、他の男たちも俺たちに気づいてすぐに驚きの声を上げた。


「お、お前は――エンジ!? バカな、何故……」

「……レシスまでいるのか」

「コイツ、どうやって入って来れたんだ?」


 勇者の仲間たちか。しかも俺に麻痺を喰らわされた連中とそこそこ手練れの冒険者だな。

 そしてすぐさま抜剣の気配が漂い始めた。


「あのっ! どうして閉鎖をされているんですか? それにログナの様子もおかしいです」


 今にも襲い掛かろうとした時、レシスが割って入った。


 レシスの問いかけにかつての仲間たちは顔を見合わせ、返事をするべきか迷いながらも「レシスは、ラフナンとは出会えたのか?」と仲間の一人が話しかけ、レシスは静かに頷いて見せた。


 レシスは別扱いなんだな。

 話し合いを彼女に任せるのもいいが、でもな……。


「私は賢者アースキン! ここでの現状を話してくれぬか? さらに言えば、ここにいるエンジは我が友であり、我が主でもある。下手な真似などは私が許さぬ」


「け、賢者!?」


 この言葉にはここにいる連中誰もが驚愕。

 

「お前、本当にあの書記しか取り柄の無かったエンジ? それとも勇者の言っていた通り、何もかもが変わってしまったのか!?」

「勇者は俺のことを何と言っていたんです?」

「……それは――」


 ギルドマスターによればログナが勇者に依頼をしたのは本当らしい。

 しかしあくまでも山奥からの追い出し程度であり、討伐というものではなかった。


 山奥の獣によって理性を失い、同じ人間相手に襲って来るようになった……。

 それが俺なのだと。でもどっちかというと、勇者の方が襲って来ていたけど。


「ラフナンがギルドの依頼を勝手に変えていた……そういうことですね?」

「……そういうことだ。勇者は次第にギルドに関係なくエンジを討伐することだけにこだわっていたからな」

「ではログナの見解は?」

「勇者を疑うことは無く、やれるだけのことはしていた。それこそ学院の召喚士たちや魔法士たちを惜しみなく支援に回していた。しかし、勇者は……」


 話を聞く限りギルドはあまり介入していなく、勇者の単独行動ということだった。

 勇者の仲間たちは沈んだ表情を一様に見せ、話しづらそうにしている。


「わ、私からもお願いします! ラフナンさんがあそこまで変わったのは、どうしてですか?」

「私からも頼むとしよう。ラフナンとは旧友でもあるのでな。エンジに対する執着さは普通ではないと感じたぞ」


 レシスとアースキンの頼みにより、重く閉ざしていた連中の口が開き話を始めた。 



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