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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
壱頁:コピー・アプレンティス

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32.書記、不意に集中攻撃を受ける


「にぅぅぅ~!! お花がぼんやりと光っているのにぁ!!」

「こ、これは――! もしかして、隠し抜け道のようなものです~!?」

「いいかい、俺の傍にいて大人しくしているんだよ。きっと行けるはずだから」


 白狼のルオから覚えた移動魔法のようなもの。これを初めて使ってみることになった。かなり前にザーリンとレシスだけ移動させたことがあるとはいえ、本当に行けるのか不安すぎる。


「じゃ行くよ、《エン・ラーセ》!」

「ふにぁっ!?」

「わーわーわー!!」


 リウたちの興奮が冷める前に、見慣れた花畑に着く。着いて早々にザーリンから指摘が飛んで来た。


「壁はコピーして来た?」


 壁……そういえばそうだった。それどころじゃなかったからすっかりと――


「ごめん、壁のこと忘れてた……」

「じゃあ人間たちを追い出してから考える。考えて?」

「え? 人間たちって、まさかまた性懲りもなく来ているってこと?」

「外を見れば分かるから」

「え、うん」


 ザーリンからの指摘を受けている最中、リウやレッテはすでにどこかへいなくなっていた。川に近い花畑は多少木々が生い茂っているだけで、そんなに変わっていないように見える。


「ところで、岩窟の状況――」

「フェンダーが得た獣と人形。それらに指示を与えて! そうしたらそのように動くから」

「ザーリンは俺の代わりに何かを……」

「何もしていない。まとめるのはフェンダー。国の主であるあなたが得たものを、見ていただけ」


 ことごとく反論が来る。何か怒らせただろうか。


「じゃあ外の様子は?」

「自分の目で見ればいい」


 ザーリンは相変わらずつかめない。導きのフェアリーとして見えないところで何かしてくれていると信じるしかないということか。


 国にする為に味方を増やした効果。それを知るために色々と見て回ることにする。花畑から岩窟へ戻る為の扉を探していると、待ちかねたように彼女が待っていた。


「エンジさん、お帰りなさい~!」

「あれ、レシス? かぶっていたチュニックは?」

「それがですね、顔を隠しているとルオさんが分かりづらいみたいなので、脱いじゃったんですよ」


 小柄なレシスは俺以外で唯一いる人間だ。一人だけの人間ということもあって、獣たちにとって素顔を隠されるのは厄介かつ、見分けのつかない物に違いない。


「ルオとはもう打ち解けたんだ?」

「そうなんですよ~! 彼女、フェンリルっていうすごい狼さんらしいじゃないですか! さすがです!」

「へっ? フェンリル!?」

「エンジさんから守られたのが嬉しかったって言ってました!」

「……そ、そうなんだ」


 魔法兵たちが怪我をし、さらにはサランという魔法兵が攻撃しようとしていた。それを助けただけだったが、やはり怪物的な狼だったのか。


 フェンリルというと神に近い存在。

 知らなかったとはいえ、とんでもない獣を助けてしまったようだ。


「それとですね、岩窟の中が相当変わりまして! ついて来てもらっていいですか?」

「もちろん、そのつもりだよ」


 扉から岩窟内に入ると、随分と様変わりした内部に作り変えられていることに驚く。


「……こ、これは!?」

「そうなんですよ! 最近大勢の機巧ドールさんたちがここに来て、すぐに洞窟の中を作り変え始めたんです。元々岩だらけだったのが良かったみたいで、どこかのお城みたいになりつつありますね!」


 命じてもいないのに、暗かった岩窟内には照明が付いている。暗かった内部を歩くのも松明要らずに。要塞のような造りに変えている最中なのか、岩窟だった形跡も失われている。


「山奥の寂れた拠点洞窟だったはずなのに、何か凄いな……」

「きっとエンジさんの意思を読み取って動いているんだと思うんです。国って漠然としてますけど、ログナよりも住みやすそうな感じになりそうですもん」

「そうか。国を作るって思っていたから、その通りにしているのか」


 強固な国になればいい……これは自分が望んでいたことだ。とはいえ、それを実行したのが人ではなく機巧ドールたち。素直に驚くしかない。


「ええと、ルオはどこに?」

「ルオさんなら、オークの傍にいると思います」


 そういえばオークのコピーを置いたままだった。守りの為に置いていたけど、自由意思を入れた方がいいのだろうか。


「ご主人!」


 白狼姿のルオが勢いよく尻尾を振りながら、俺とレシスの所に駆けて来る。


 それにしても中腹の辺りは山肌が荒れていた感じだった。そのはずなのに、まさかの森状態になっているとは。


「これ……、この森ってまさかルオが?」

「うむん! ご主人と森の繋がりはより深くありたいのじゃ! ここがご主人の居場所なのだとしたら、ルオも安心出来るのじゃ!」

「確かにそうかもしれないね」


 岩窟の中は機巧ドールたちが作り変え、外はフェンリルが守っている。これは思っていたよりも強固な国になりそうだ。


 嬉しそうに話すルオにこの場を任せ、レシスと山を下っていると――


「あっ! エンジさんっ、危ない!!」

「えっ?」


 ルオによって森となっていた所から山の麓に向かっていた時だった。レシスの前を歩いていた俺に対し、どこからともなく魔法と炎の矢が一斉に降り注いだ。


「エンジさんっ!? だ、大丈夫ですか!?」


 レシスの声がかき消されるほどの魔法攻撃と、物理攻撃で身動きが出来ない状況となった。この攻撃は勇者の仕業だろうか。

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