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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
壱頁:コピー・アプレンティス

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31.書記、機巧少女に心を見られ、名付ける


 新たなスキル、"トレース"を手に入れた。それを使い、機巧ドールの女性の跡を追って俺たちは目的地であるラボに着くことが出来た。


「ここがラボ?」

「何もないにぁ……」

「不思議なお部屋! ヌシさまに何かあってはならないのでっ! 密着させて頂きますっ!」

「ちょっとちょっと、くっつきすぎだから……」

「じゃあリウもエンジさまをお守りするにぁ!」


 しかし――

 何があるわけでもなく、誰かが待ち構えていたわけでもなかった。


 てっきりここでこの国の主導者のような人間に出会えると思っていた。それなのに特別なドールの姿はおろか、何かに囲まれるといった状況にすらなっていない。


 見える壁に扉があるでもなく、手持ち無沙汰な時間。試しで壁に触れてみたものの、そこから何かのイメージが浮かんでくることは無かった。


「ううーん? ここに来れば誰かが姿を見せてくれるんじゃないのかな」

「匂いは感じないにぁ」

「ネコは黙れ。機械仕掛けの国で匂いなどと、ヌシさまに余計な考えを巡らせるな!」

「うるさいにぁうるさいにぁ!!」

「ま、まぁまぁまぁ……」


 しばらく何も無いラボで、リウとレッテの賑やかなやり取りを黙って聞いていた。すると、何も見えず感じることのなかった壁から扉らしきものが突然出現。


「にぁにぁ!? か、壁がーー!?」

「ヌシさま、下がって!」

「……いや、大丈夫。様子見をされていたみたいだ」


 扉から姿を見せたのはここへ案内した機巧ドールの女性。それと恐らく遠隔攻撃をして来たドールたちが次々と壁の中から現れ出した。


「か、囲まれたにぁぁぁ!?」

「うるさい、ネコ!」


 慌てるリウとなだめるレッテ。彼女たちとは別に、何故か俺は恐怖も緊張も感じない。妙な落ち着きを持って、ドールたちを一体ずつじっくりと見つめることが出来ている。


 その中の一体、少女姿のドールが無表情のまま俺の前に近付く。


「――え、えっと……?」

「……アナタヲ見る」

「へ?」


 数体以上のドールに囲まれている中、少女姿のドールが突然触れて来た。彼女のイメージが浮かび、編集を求められた。


【機巧少女 ノーネーム 編集可能 名前?】


「え? い、いきなりそんなことを望まれても……」

「エンジさま? 何をブツブツ言っているのにぁ?」

「ヌシさま、大丈夫ですかっ!?」

「あぁ、うん。何でもないよ」


 ドールからは言葉を一切発していない。リウたちにも聞こえていないということは、直接俺の心に問いかけて来ているのだろうか。


(えーと、名付ければ言葉を話すようになるのかな)


「……じゃ、じゃあ、ピエサでどうかな」


【認証 ピエサ コピーアプレンティス指示。メカニークを"アルクス"にコピー】


(え? アルクスに何だって?)


「エンジさまエンジさま!! く、崩れているにぁ!?」

「ええっ!?」

「……ヌシさまの国に遷る為に、ここを放棄とかじゃないでしょうかー?」

「遷す? 何で急にこんなことに?」


 まさか名前を与えたことが関係しているのか。


「この国自体にヌシさまのような人間はいなかったと思うんです。レッテと同じようにヌシさまを認めて、国を遷すことにしたんじゃないでしょーか?」


 古代種がどうとか言っていたけど、このドールたちを作ったのは古代種の人間。古代種である俺がここに来たことで、メカニークを崩してまだ岩窟状態のあそこに遷る……。


 駄目だ……。やはりザーリンがいないと、急な展開になっても理解が追い付きそうもない。


「国そのものが無くなるってこと?」


 いや、まさかな。


「そーです! ヌシさまは国を作りたいって言っていましたよね? 機巧ドールたちは、きっとヌシさまを待っていたと思うのでーす! ヌシさまの国に移動すれば、そこが守るべき国になるはずですから」


 コピースキルが上がった影響だとしても、国ごと無くなるのは想定していない。


「そ、それはそうなんだけど……頑丈そうな壁を求めて旅に出たはずなのに、まさか国ごとコピーして元からあった国を崩して失くすなんて」

「ヌシさまの国は、きっとどの人間の国よりも頑丈になっていくんじゃないでしょうーか」


 いやそれにしたって。国をコピーしてその機能が移動するとか。


 アルクスに戻ってみないと分からないことばかりだ。ザーリンがどうしているか気になるし、白狼のルオと接触しているかも気になる。


「……と、とにかく、ここを出て森を探そう」

「森に行くのにぁ?」

「森からじゃないと行けないからね。だからリウとレッテは、人の気配を感じない大きめの森を探してくれないかな?」

「にぅ! よく分からないけど探すにぁ!」

「ヌシさまに従いまーす!」


 まさかと思うけど、勇者ラフナンが諦めないとも限らない。国として認められていない岩窟が、一体どこまで成長しているのか。


 勝手に戻ってザーリンに怒られるかもしれない。それでも、そこからまた――

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