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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
零頁:落ちこぼれの書記

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28.書記、ケモミミに悩まされる?


 ――おかしい。

 賢者アースキンからコピーしたのは、火の上位魔法と属性石の魔法転用だけのはず。


 それなのに俺も獣好き……というより仕草や動きが気になって仕方が無い。何故だろうか。意外といい人だった賢者との魔法戦を制し、ルナリア王国に住まう狼族を預けられた。


 山奥から領地を拡げ国として必要になるのは強い者では無く、そこに暮らす民の多さがモノを言う。それだけに味方が増えてくれるのはいいとして、何故こうなっているのか。


「何でなのにぁ~!! エンジさまにはリウがいるだけで満足しているはずなのにぁ!」

「それを決めるのはヌシさまだとは思わないのか? ネコ族は知性が無いのだな」

「フゥーーー!! リウはその辺のネコとは違うにぁ!!」

「それならば、うちもその辺にいる狼族とは格が違う! ヌシさまにはレッテがいればいい!」


 危惧していたが、リウとレッテの口喧嘩が外に出た瞬間から始まっていた。


 賢者のおかげで無事平穏な王国を後にした時のこと。

 俺とリウが歩こうとすると、門の外で待っていたのか狼族の彼女が俺の元へと近づいて来た。


「ヌシさまのお強さ、見事なものでありました。賢者の薦めなど関係なく、このレッテ、ヌシさまに付いて行きたいのです。どうかお連れ下さい!」

「え、キミが狼族の?」

「レッテ……そうお呼びください」


 獣人である彼女はすでに味方となった白狼のルオとはまた違う雰囲気。律儀すぎる賢者の言葉通り、俺のことを認めてついて来るということなのだろう。


「誰にぁ?」

「ネコこそ何だ? ヌシさまのお役に立つことこそが獣人としての誇り! ネコでは戦力にもなれぬのではないのか?」

「むむむむ……! 何なのにぁ!! リウはエンジさまと初めから一緒にいるのにぁ!」


 ――そして現在。

 お互いの姿を見せた時から彼女たちはずっと喧嘩をしている。


 狼族のレッテも恐らく特別なスキルを持っているに違いない。連れて行かないという選択肢は無いだけに困ったものだ。


 リウの耳もレッテの耳も臨戦態勢だからなのか、尖ったように立っていてそこに触れてみたい衝動に駆られている。


 賢者と違い、獣が特別好きというわけではないのにも関わらずだ。どうして目の前にそびえ立つ獣耳に、目も心も奪われてしまうのか。


「こ、こらこら、リウもレッテも! いい加減、言い争いはやめてくれないかな?」

「リウは正しいことを言っているだけにぁ!」

「うちも間違いなど無い!!」


 ――と、まるで聞き耳を持たない。

 無防備にも程があり、このまま進むには賊や生物の格好の的となり得る。


 その意味でも、リウとレッテの隙を突くことにした。


「ふにぁっ!?」

「ヌ、ヌシさま……そこはお許しくだ……はふぅ」

「二人とも言い争いでいかに隙だらけだったか、思い知った?」


 リウもレッテも甲乙つけがたい。ケモミミはふんわりとそれでいて、毛触り心地が最高すぎた。耳か尻尾か、どちらにしても普段触れられることのない耳に触れてしまった。


 その影響で二人ともすっかりと気が抜けたようだ。


「きゅ、休戦にぁ……」

「うちもそれでいい~」


 レッテに触れたもののコピーする意識が生じず、彼女からイメージが浮かぶことは無かった。

 何はともあれ、ようやく俺たちは進み出した。


 歩き進もうとすると、木陰で休む馬車に遭遇する。


「もしかして人間がいるのかにぁ?」

「ネコは人間が怖いのか? ふっふん! うちは怖くも無いぞ!」

「違うにぁ! エンジさま以外の人間は好きじゃないだけなのにぁ」


 馬車は格式が高そうな外観をしているが、乗り捨てなのか外には人の気配は無い。誰かが乗っているとすれば、護衛もしくは馭者(ぎょしゃ)が近くにいるはずなのにだ。


「ヌシさま、うちが馬車の中を見て来ても?」

「あぁ、いいよ。でも気を付けてね」

「お任せ下さり、嬉しき事であります」


 レッテの人間言葉は確かではなく、聞いて覚えただけらしい。王国の外を守る騎士たちの言葉を聞き続けていたとかで、不安定な物言いになっている。


 耳と尻尾以外は人間が与えた洋服を着ていて、パッと見では人か獣か判断が付きづらい。


「ヌシさまー! 誰もいなーい! です」


(やはりただの乗り捨てなのか)


「エンジさまっ! 危ないにぁっ!!」

「んん?」


 レッテが見に行った馬車の距離は数百メートルといったところ。レッテがすぐに戻れるわけではないのを狙っていたかのように、何者かの奇襲を受けている。


 こちらの様子を探っていたのか、俺とリウの周辺から石つぶてや、木片が無造作に投げられまくりだ。


 基本的に魔法相手や物理的な遠隔攻撃であっても、絶対防御の前では怖さは感じないのが救いだが、ここで危ないのはリウだけ。


 自分を中心とした防御魔法でもないのが絶対防御の欠点ともいえる。それだけに結果的にリウの前面に立って守る必要があった。


「ふみゅぅ……エンジさま、ありがとにぁ」

「リウは相手をサーチしてくれるかな? 相手からの攻撃が止まない限りは動いちゃ危ないからね」

「あい!」


 もぬけの殻の馬車を見に行ったレッテの方にも、飛び道具が降り注いでいる。彼女一人だけで防いでいるようだが。


 魔法ではなく物理的な集中攻撃。レッテの方も気になるが今はリウの範囲サーチを頼り、その後で相手の出方を気にするしかない。

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