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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
零頁:落ちこぼれの書記

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25.書記、王国で賢者と相対する


 俺たちはルオの森を抜けて道なりに進んでいた。

 するとどういうわけか、魔法兵サランが前方から向かって来ることに気付く。


 今まで姿を消していたのにだ。

 てっきり後ろから追って来ているとばかり思っていた。それだけに俺たちは困惑した。


「エンジさん、あの人どこから来たんでしょうか?」

「いや、俺にもさっぱり……」

「いつ見ても不機嫌そうにしていますけど、エンジさん何かしましたっけ?」

「た、多分何かしたかな~はは、は……」


「おい貴様! ここから先にあるルナリア王国に向かえ! 貴様のことはすでに伝えてある。下手なことをすれば、冒険の旅が今後も上手く行かないことを知れ!」


 何なんだ、この人は。

 先回りして悪評を伝えるとか、どこまで俺に対する憎悪を高めているんだ。


「何なのにぁ!! 人間! エンジさまをいじめて楽しいのか~!」

「ま、まぁまぁ、落ち着いてリウ」

「ふみゅぅぅ……」


 リウの怒りはごもっともなことではある。

 しかしこの魔法兵に文句を言うのは危険だ。今はリウを抑えるしかない。


「獣ごときに文句を言われる筋合いなど無い。王国を避けて通ったとしても、オレは貴様の先回りをする。貴様はオレが裁いてやる!」


 そんなに強く無かった相手だった。それがまさかここまで敵対心を増幅させていたなんて。


 サランの言う通り王国を避けて一先ず俺の"国"に戻ることも手ではある。だが守りのオークを立たせているだけでは、この人をどうにか出来るとは思えない。


「エンジさん……やはり口に触れたのがまずかったんじゃ……?」

「それが問題だった?」

「それはそうですよ~! 自尊心が高そうな人なのに、どうして()()に触れてしまうんですか~!」


 コピーする為に直に触れたまでは良かった。

 どうして俺はうかつにも女の口に手を触れてしまったのか。


「そんなことより、ルナリア王国に早く行く。フェンダーは敵に怯えすぎる。すでに一国をコピーしたも同然なのに、何故?」

「俺は冒険者じゃなくて、書記なんだ。敵なんて出来て欲しくないよ」


 出来ることなら面倒事は避けたい。

 それが正直なところだ。


「……とにかく行く。その前に、シェラとわたしをアルクスに戻す。森に引き返して」

「えっ? キミとレシスを?」

「あなたが行く王国は人間に厳しい。ネコといるべき」

「よく分からないけど、キミがそういうなら」


 白狼のルオ、コピーオーク。色々気になるのか、ザーリンは別行動を取りたいらしい。

 

 レシスは王国に行く気満々だが……、ザーリンが上手く説明をして納得してくれた。ルオの森にいったん引き返し、"エンラーセ"を唱えて二人を移動させる。


 魔法兵のサランは森に近付いても来なかった。

 そのおかげで移動魔法が見られることは無かったようだ。


「にぁ! エンジさまとふったりきり~! にぁうん」

「そう言われれば出会って以来になるかな。よろしく頼むね、リウ」

「あい! エンジさまをお守りしますにぅ」


 ザーリンは俺のコピー能力を知り、リウとの共有スキルも知るフェアリー。


 ここから先に訪れる国や洞窟。

 そこではサーチが出来る俺かリウの方が進みやすいと考えたかもしれない。


 リウの力はまだ不確かで知らないこともある。

 その意味でも、彼女をお供にする方が安全性は高そうだ。


「にぁ?」

「君を頼りにしているからね」

「ふんふんふん~! お任せなのにぁ」


 鼻歌で機嫌よく歩くリウとしばらく歩く。

 すると眼前に見えていた王国の監視塔から、王国兵が一斉に出て来た。


「止まれ! お前たちが()()国賊だな?」


 タルブックの魔法兵の言葉で国賊扱い。どんな通達が行ったのか分からないうちにだ。国を危機にさせてしまったのは事実でもあるので、王国兵に睨まれるのは仕方が無い。


 ――とはいえ、何とか入国することが出来た。


「にぁにぁにぁ!? エンジさま、エンジさま! 狼族がたくさんいるにぅ!」

「本当だ……ルオがそこら中にいるみたいだ。兵は人間だったのに、国民は獣人が多いのかな」

「ルオ?」

「あぁ、リウは会っていないけど岩窟に帰った時には会えるよ」

「いつの間に仲間が~? でもでも、さすがエンジさまにぁ!!」


 嬉しそうなリウと王城に向けて歩こうとするとヒラヒラな法衣を来た男が、俺たちの正面で待ち構えていた。いくつかの装飾を身に付けている所を見れば、魔力の高そうな人間と予想出来る。

 

「ピカピカ~! 赤、藍、翠~。宝石屋さんかにぁ?」

「ち、違うと思うよ」


 見た感じ、強靭な素材をふんだんに使った防具のようだ。

 胸元から膝下にかけて色違いの宝石が法衣に埋め込まれている。


 どこから見ても派手な格好をした人間だ。そんな派手な人間の両脇を地味色の紋様チュニックを着た狼族が、数人で固めている。


「ログナの書記が何用で来た?」

「――! ログナからと何故分かるんです?」

「無論、この世界に在る数多の国々に書記を置く国は多くないからだ」

「俺は世界を知るために旅をしているだけです」

「旅? では、ログナの弱者……いや、ラフナンに追われているのは何故か?」

「ラフナン……? 勇者の?」


 賢者に弱者呼ばわりされている勇者。その時点で、実力も素性も大したことはないみたいだ。


「ピカピカにぁ~」

「リウ、待った!!」


 すっかり宝石の輝きに夢中になっているリウは、不用意に賢者に近づいている。

 しかし、


「……ふ、獣ならば仕方ない。ましてネコ族、光りものに飛びついてしまうだろう」

「ふにぁぁ……」


 さすがに獣人を引き連れているだけあって、悪い扱いはしないか。それよりも身に付けている法衣に触れてみたい。


 知らない魔法も使いそうだし、コピースキルの段階も上がりそうな気がする。


「――だが、追放の書記を見逃すわけには行かないな」

「追放のことも知っているのです?」

「落ちこぼれの書記か。ふっ……お前、名は?」

「……エンジ・フェンダー」


 急に見下すような態度に変わった。

 それならこっちもそれなりの態度に変えさせてもらう。


「書記で落ちこぼれる者など、エンジ……お前以外にいない。直に見ずとも、外聞の無い人間は勝手に知られていくものだ」

「それで見るからに賢者なあんたが、俺に何を?」


 勇者よりも話が分かりそうな相手ではある。それでも、隙をまるで見せない感じは油断出来ない。

 リウも含め獣を惹きつける賢者。


 まさか賢者と相対(あいたい)することになるとは、これもフェアリーの導きなのか。



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