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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
零頁:落ちこぼれの書記

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21.書記、わざと捕まって国家魔法を浴びる


「解けっ! 今すぐ、拘束魔法を解け!! そうでなければ、我が国家は貴様を許さぬぞ!」


 ここまで敵対心を上げるつもりは無かった。それなのに、レシスの杖で拘束を解いたことよりも俺が魔法返しをしたことで相当頭に来たらしい。


「エンジさん、ど、どうしましょう?」

「レシス。キミは宿に戻って、ザーリンに伝えてくれないかな?」

「え、何を?」

「俺は捕まった……とね」

「え? ええええ!? だって、捕まっているのはこの人であって、エンジさんじゃ……」


 レシスの言うことはもっともだと思いつつも、手っ取り早く知らせるにはこれが一番いいはずだ。


「敵を捕まえても何の不思議さも無いからね。とにかく、宿に戻ってザーリンの言うことに従って欲しい」

「わ、分かりました。どうかお気をつけてくださいね」


 レシスは何の気なしにお別れを意味したつもりなのか、俺の手を握って来た。本人から接触して来た時点で、セイアッドスタッフは沈黙。


 そして――


【レシス・シェラ  女 回復士/ソーディッカ ランクE 力E 耐性C 固有スキル】

【イグザミン 触れたものの能力を垣間見ることが出来る 信じる心 絶対防御オリジナル】


 浮かんで来たイメージは予想通り。

 ようやく共有ではなく、絶対防御オリジナルを完全にコピーすることに成功出来た。


 回復士の他にやはり何か付いていた。

 彼女の全てを見ることが出来たが、書記としてのスキルも彼女に知られてしまった。


「コ、コピー……? え、嘘……」

「レシス。この事は他言無用だよ。どうか、キミの心の内に秘めておいてくれないかな?」

「――! ひ、秘めます秘めますっ! エンジさんとの秘密を共有ですねっ!! それじゃあ、宿に戻ります。お気を付けて~」


 レシスの杖の能力に関しては、俺だけがほとんどコピーしてしまっているが。 


「何か小賢しいことをしていようと、貴様は許されぬ!!」

「……今すぐあなたの拘束を解きます。ですので、俺を連行してください。抵抗はもうしませんから」

「――何っ!? 人を拘束しときながら、抵抗しないなどとほざきよって!! だが、まぁいい。国に裁きをしてもらう。我が命の水を涸らしたことを後悔するがいい!」


 誤解でも何でもなく俺の仕業なのは間違いない。


 サランという名の女兵士は刺々しい形のヘルムを装着しているが、素顔を見せることを否定しているかのようだ。


 胴装備にしてもタルブック支給によるものなのか、物々しいアーマーに身を包んでいる。


「何しに来たかは聞くまでも無いが、タルブックから出られると思うな!!」

「はい……」


 このまま願わくば国家都市の中枢に連行されないだろうか。


 ログナの場合は義務学院の時の書記認定であっさり入っていた場所だった。それだけに、案外素直に入れそうなイメージがある。


「貴様はこれから囚人となる。死刑も確定するだろう。拘束を解いた事に免じて聞いておく。貴様、名は?」

「書記のエンジです。あなたはサランですよね?」

「き、貴様……! 何故、オレの名を奪っている!?」

「へっ? 奪ってなんか……見張っていた時の声が聞こえて来ただけで」

「――! 記憶から消せ」


(奪ってはいないけど、コピーさせてもらいましたとは言えない)


 しばらく連行されていると、さっき閉鎖されていたギルドはすでに開放。

 見慣れない冒険者が頻繁に出入りを見せている。


「お、おい、アレが例の奴か?」「来て早々に国を貶めるとはな……」などと勝手に噂されているみたいだ。


 何も魔法をかけられないまましばらく歩き続け、思い通りの場所にたどり着く。

 そこには、サランよりも明らかに魔力に長けていそうな男兵士ばかり。


 彼らの多くが両側の壁に整って並びこちらを凝視している。

 兵士たちのほとんどは、魔法を基本とした装備群に身を包んでいるような感じだ。


 睨まれながら中央の円形型の台に足を進めると、そこだけ周りよりも何段かせりあがり始めた。


(これはもしかして裁きの台なのか?)


「エンジと言ったな? 貴様は何故敵対する? 湖上の都市を窮地に立たせるとは、どこの刺客か」


 俺の余裕を失わせるかのように、姿無き声が響き渡った。

 その声に反応し、すぐに返事を返す。


「俺はただの書記です。この国には初めて来て、水に遮られてしまったので仕方なく水を……」


「仕方なく……だと? 書記ごとき落ちこぼれがどうやったかは知らぬが、我が国家を滅するつもりで来たはずなのは明白だ!! タルブックの裁きを今ここで受けよ!!」


 せり上がりの台に何かしらの仕掛けがあると思いきや、四方八方の見えない空間から魔法術を展開して来た。


 まだまだどうこうされるつもりはない。

 ――ということで、絶対防御を全身に張り巡らせた。


 そして向かって来る何かしらの魔法を、この身で全て受けることにした。


【レーリック・エンド 無属性 対象を醜い姿に変える 咎人と認めた者限定 タルブックの敵として認められる】


 浮かんで来たイメージは、予想に反して優しめに思えた。やはりというべきなのか、ザーリンが言った通りになった。


「……な、何故だ!? 何も起こっておらぬというのか? ただの書記ではないのか」


(絶対防御を完全にコピーしたというのも関係しているけど、書記じゃないと言われるのは納得いかない)


「誤解させてしまいましたが、俺はこの国を危機にするつもりはありません」


「では何とする?」


 水を涸らしたのも入国する為に過ぎない。

 これだけではない罪状のように思えるが、正直に訴えるしか無さそうだ。


「敵と認められてしまいましたが、せめてここに滞在する間は俺も他の敵を作りたくはないので救いの魔法をかけます。それをお認めになって頂けたら、俺はこの国をこれ以上どうもすることはありません!」


 にわかに信じがたいことなのか、周りの兵士を含めてざわつきを抑えられないらしい。


「咎人を信ずるつもりなど無いが、猶予を与える。三日の間に湖を再生せよ! 然れば、その罪を軽減することとする」

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