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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
零頁:落ちこぼれの書記

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18.書記、湖上都市国家に入国する


 俺たちは湖上都市タルブックを目指して歩いている。


 ザーリンによるとタルブックは水上に都市を形成。その場所に置いていることから、防衛力に優れているという。


 レシスを同行させナーファス村からしばらく歩き続けると、ゆるやかな川面が広がっていた。陽の光が反射し照らし出す光景は、山ばかりのログナとは別世界を感じさせるものだ。


「にぁ~~ピカピカ光っているにぁん」

「ネコ、泳ぐなら止めない」

「お、泳がないにぁ! ザーリンは意地悪にぁ!」


 リウは常に好奇心旺盛な姿を見せる。彼女に対し、ザーリンは感情を動かすことがない。しかしからかうのが好きなのか、リウにはわざと意地悪している。


 フェアリーは気まぐれな性格で、どうやら気に入った相手にはあえてそうするようだ。

 

「エンジさんは書記なのに、すでに仲間を得られてしかもリーダーなんて、すごいです!」

「書記はともかく、俺はギルドを追放されてログナの厄介者ですよ」

「そ、そんなことは――無いと思います……」


 少なくとも書記はオークを見て平気でいられないし、そもそも火に飛び込んだりはしない。

 彼女からすれば万能か何かだと思っていたのかもしれないが。


「君の待遇は悪くなかった?」

「良くはされなかったですけど勇者パーティで色んな所をついて回っていただけなので、お荷物といえばそうだったかもです。……そ、それはそうと、リウちゃんとはどこで知り合ったんです?」

「ログナが放置してあった拠点にリウが棲みついていたんですよ。そこに不明の襲撃に遭って助けたら、味方となっていただけに過ぎないというか」

「え、どうやって助けたんですか? エンジさん、魔法とか使えましたっけ?」


 色々と突っ込んで聞いて来る子だ。

 しかもリウのことをすでに「ちゃん」付けか。


「体が頑丈なので盾になっただけですよ。レシスも見た通り、炎の中に突っ込んでも何ともないし」

「そ、それもそうですね。なるほどです!」


(今の説明で納得したのか)


 レシスはザーリンが警戒するような子には到底見えない。だが杖はともかく、少なくともレシス本人に触れてみないことには。彼女が危険かどうかの判断は現時点でつけようが無い。


「……フェンダー」

「ん? どうかした?」

「あなたはまだ魔法を知らない状態。コピーで作ったオークも、あくまで魔法を使ったにすぎない。これから目に見えるもの、触れられるものは全てコピーする」

「向かっている都市には、コピーするモノがたくさんあるの?」

「コピーすることであなたは強くなる。魔法を増やし、国づくりの知識も増える。そして敵も増える……」


 ただでさえしつこい勇者が襲って来ているというのに。それなのにコピーする過程の中で、新たな敵が増えてしまうなんて。


 不安を感じつつ、いつの間にか川の幅が横に広い道にたどり着いていた。途中まで土埃が舞っていたほどの荒れた道は途切れた。


「エンジさん、この先の道が湖に沈んでいます。どうすれば進めるんでしょう?」

「本当だ! 何でこんなになってるんだ」

「にぁ~~泳ぐしかないのにぁ?」

「ネコが泳ぐなら、ネコだけ泳いでいい」

「むむぅ……泳がないにぁ!!」


 目指している都市国家タルブックは、湖上に浮かぶ都市。

 ――とザーリンから聞いていた。


 しかしまさかこんな道の途中で道が沈んでいるとは。


「どうやってこの先に行けば?」

「あなたのスキルを使えばいい」

「俺の? 何かあったっけ?」

「……毒で腐食させて水を()らせば前に進める。つべこべ言わずにやる! でも本当は別の魔法がいいけど、早く覚えて」


 湖上の都市国家なら舟くらいあっても良さそうなのに。魔法でしか入国出来ないとか、そういう意味では防衛力は高そう。


(えーと、腐食魔法(プワゾン)か)


 本来であれば、乾燥させるくらいの火力魔法で水を干上がらせるのが最適。しかし炎の魔法は今の時点では火花程度しか使えない。


 炎を全身に浴びてもその程度止まり。

 ということは、火の属性は他の属性よりも覚えにくいのかもしれない。


 魔法も段階的な成長が必要だとすれば、コピーしまくらないと駄目ということになる。


「――えええっ!? み、水が腐って涸れている?」


 魔法を発動させてから少し経ち、レシスが真っ先に気付いて慌て出した。

 そんな彼女に対し、ザーリンは淡々と答えた。


「心配ない。水深も深くないし、そのうちに回復」

「そ、そうなんですか、エンジさん?」

「そのとおりです!」


 都市国家の人々には申し訳ない。などと思いつつも、道を確保して何とかタルブックのゲートにたどり着くことが出来た。


 ――と、そこに。


「お前たちは何者か?」


 ログナの中枢でしか見たことが無い大量の兵たち。

 そんな者たちが、俺たちの眼前に立ちはだかる。


 話に聞いていた通り、防ぎの都市国家というのは間違いないみたいだ。

 門の近くには警護兵の詰所が見えていて、防衛の力をまざまざと見せつけている。


「観光者です」


 ここは無難に答えることにした。

 今の時点で自分を冒険者と答えられないというのもある。


「……旅の者か。船着場からの連絡は無いが、まぁいい。旅の者。湖は現在警戒中につき、しばらく出入り出来ない。よってしばらくここに滞留せよ!」


(警戒? まさか水を涸らせたことだったりしないよな?)


「ど、どうも」

「エンジさん、無事に入国出来ましたね! それにしても水が腐って涸れるなんて、偶然でも幸運でした!」

「にぅにぅ! 泳がなくて済んだにぁ」


 彼女たちには直接俺の魔法を見せたわけでは無かった。それだけに、まさか俺の仕業だとは思わないだろう。


 しかし腐食による水涸らしで、国家都市の警戒心を上げてしまったようだ。


「……ばれなければ問題ない。どのみち敵と出遭う運命」

「そ、それならいいけど。とにかく宿を探そう」

「それなら、フェンダーとは別行動をする。ネコたちと別。その間に城を見て来ていい」

「あ、うん」


 最近は単独行動をしていなかっただけに多少の不安を感じてしまう。こうなれば出来るだけコピーをしまくって、スキルを上げることにする。

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