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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
捌頁:極めの帰結

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175.闇の存在、闇光に包まれる 後編


 サランがいる位置に向かって、ゆっくりと近づくと空も地面も未だ禍々しさを保ったままだ。レシスの光があまりにも強すぎたせいで、彼女がいる付近は闇の影響を受けていなかったらしい。


「サラン・ミオート。いや、闇の存在だったか?」

「……そうだとして、貴様に何が出来る? また無様に腕を失い、獣や人間どもを見殺しにするつもりか?」

「出来ることはある。お前を永遠に封じることだ」

「フフフ……ハハハハハ!!! 魔法士が闇を統べるオレを? クククッ、勇者を懐柔するよりも前に殺して差し上げれば良かったかしらね!」


 どうやらサランは、腕を失った俺のことを相当見くびっている。

 俺がここに来るまでにどれほどの魔法をコピーし、自分の力として来たかを知らないようだ。


 もちろんそう思わせる為に、あえて黒闇の飛竜に呑み込まれたわけだが。


「腕を失った……? じゃあ何故俺の腕がここにあるんだ?」


「貴様の近くに妖精が飛んでいた。その腕は妖精が作り出したものに過ぎない。つまり貴様はまがい物で弱いままだ!! 消えろ、魔法士!!!」


 サランとの距離は数メートルほど。


 互いの間合いは、それほど遠くない。魔法による攻撃、あるいは使役の魔物を眼前で出されたとしても、俺の魔法ですぐに打ち消せる。


 すでに人間としての形状を留めていないサランは、俺に向けて影を纏わせた腕を伸ばして来た。奴の攻撃は大部分が闇で覆われている。しかしその闇さえ恐れなければ、使える魔法だけで防ぐことが可能だ。


 伸びて来た腕と影に対し、【パラリシス】と【グラビトン】を使用した。

 闇には、闇属性を持つ魔法と無属性の魔法で相殺させられるからだ。


「影単体であれば麻痺も重力も苦にならなかっただろうが、自分の腕を使って来たのは間違いだったな」


「黙れ……黙れ黙れ黙れ――! 人間の腕など捨てるだけだ!!」


 人間としての形を残していたサランにとっては、屈辱的なダメージとなった。奴は伸ばした腕を自ら切り落とし、影で形を代用した。


 闇の存在とはいうものの、存在自体は人間に依存していたように見える。そうでなければ、影だけで動くことが出来るはず。


 だが今見えているのは、ゆらゆらとした動きでまともに立つことが出来ない無力の存在そのものだ。黒闇の飛竜をレシスに崩されたのが効いたとみえる。


「光を求めようとしていたのが間違いだったようだな!」


「――クククッ! だからどうした? 闇が尽きることは無く、消えることも出来ない。まがい物の貴様がどれだけ魔法を放ち続けても、闇が全てを覆い尽くす! 無限の魔力があろうとな!!」


 消失させた腕を拡げ、サランは上空と地下から次々と闇を呼び出している。集めた闇を膨れ上がらせてしまえば、一帯は闇に呑まれてしまいかねない。


 そうさせない為に、俺は間髪入れずにコピーしまくった四元素属性と属性範囲魔法を、サランに向けて放ち続けた。


 魔法が命中するたびに呼び集めた闇は薄くなるものの、すぐに集合体となって膨れ上がってしまう。


「なるほど……」


「闇はどこにいても集まるものだ! ククク、魔法士が持つ魔力を使い果たそうとも、オレの闇が尽きることなどあり得ないのだ!! クククッ! ハハハハハッ!!!」


「仕方ない、か」


「どうした、魔法士。永遠の闇に屈する気になったか? オレ……わたくしは闇を求むる者を拒まないぞ? 永遠になぁ!!」


 気持ち良く約束してくれているサランには、俺からも永遠の闇をプレゼントすることにする。闇には闇を使うのが最善だ。


「――悪いが、俺からもお前にあげる物がある」

「何でもいい……どんな属性でも喜んでもらってやろう。その全ては無となるだろうがなぁ!」

「それは良かった。それじゃあまずは、闇属性の魔法だ」


 一定の間合いの中、俺はサランに向けて闇魔法を放つ。この魔法自体に名前は無く、球体の闇がサランに近付いて行くだけだ。


「クク、闇をくれるというのか。ありがたく頂く。さぁ、次は何だ……?」


 闇魔法自体に攻撃力は無い。しかし次に唱える魔法を、この闇魔法に合わせることで威力を発揮することが出来る。


「サラン・ミオート。これまで、ゲレイド新国、タルブック湖上都市……ログナにまで足を運んで来てくれたことは、ある意味で感謝に値する」

「……何を……言っている?」

「お前の存在はどこにいても脅威なものだった。だが――それも終わりだ。お前に近付く闇魔法で全てが終わる!」

「フハハッ! 闇ではオレはダメージを負わない。人間の魔法士ごときでは、所詮無駄だったわけだ!!」


 闇魔法の球体はサランに取り込まれ、全体を包み出した。


「【ダーク・ライト】! 全てを包み、光と成せ!」


 闇の球体がサランに取り込まれるのを待ち、直後に光を注いだ。こうすることで、闇に覆われた光が失わず、奴を永遠に捕らえるからだ。

 

「バ、バカ――な……こ、この光は――……」


闇光(あんこう)だ。完璧な暗黒の中、自ら見ることが出来る存在。この魔法は永続性の効果を持つ。これなら、サラン。あんたが望む世界ってことになるな!」

 

 ――ダークライトに封じたことで、その時点で闇の存在は消失。

 

 これでようやく闇との戦いに終止符が打たれた。

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