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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
零頁:落ちこぼれの書記

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17.書記、オークを作って番人にする


「ええ? そんなことがあったんですか!? じゃあ燃やされた古代書の中身はエンジさんの頭の中に?」

「頭の中っていうほどじゃないけど、転写したモノは覚えててそれが浮かんでいる感じかな」


 レシスにはコピースキルのことは伏せつつ、今まで起きた経緯を説明した。


「わたし、確かにラフナンさんたちと一緒に行動していましたけど、そんなに悪い人では無かったんですよ。やっぱり古代書絡みでエンジさんを許せなくなったのでしょうか~?」


 悪い人では無いと言ってるが、扱いは最悪だったわけだが……。

 彼女はそのことに気付いていないのだろうか。


「勇者たちと難易度が高いダンジョンに行ったんだっけ?」

「古代書があったのは祭壇のような所に何げなく置いてありまして、そこに行くまでに結構なモンスターと戦ったくらいで、難易度とかはよく分からなかったです」

「……そ、そうなんだ」


(まさかモンスターが守っていた古代書を取って来た?)


 それをあっさり燃やして無かったことにしたのか。

 勇者らしくない行動だが、勇者という名声が先行しているのは間違いない。


「――ってことで、アルクスに到着。レシス。君もゆっくり休んで」

「はいっ!」


 レシスを連れて花畑からオークがいる所に行き、オークの集団を見た段階で引き返して来た。表向きは一先ずレシスに外を見せること。


 本当の目的は岩窟アルクスの番人代わりにオークのオリジナルをコピーする……だった。これもザーリンの言葉通りの行動によるものだ。


「オリジナルのコピーは上手く行った?」

「うん、さすがにね」


 アルクスについて早々、ザーリンが声をかけて来た。


「あの人間には遠目で?」


 チラッとレシスの方を見るザーリンの表情は険しい。レシスのことを警戒しているのは変わっていないようだ。


「驚いてたけど、オークの姿は確実に見ていたと思うよ」

「それなら大丈夫のはず。ネコなら、それがオリジナルかコピーかの判断がつく。分からないのは、あの人間だけ。だから編集してオークを置いて」

「強さはどれくらいの?」

「今のフェンダーのスキル次第。だから、出来るところまででいい」

「分かった。そうしとくよ」


 俺のコピースキルのことは、彼女自身が気付いた時点で話すべきと言われた。オークのオリジナルをあえて見せとくことで、コピーかオリジナルかをしばらく隠すつもりがあるらしい。


 リウは勝負に負けたことがあった影響で、レシスにはむやみやたらに威嚇をすることが無くなった。それはともかく、レシスが休んでいる間に編集をしておこう。


【ナーファスのオーク 強さA 物理防御B 魔法耐性B 岩窟アルクスの番人としてコピー完了】


(よし、これを壁の手前に配置させておけば……)


「にぁにぁにぁ!? オ、オークが突然現れたにぁ!! エ、エンジさま!!」

「リウ、落ち着いて。リウにはこのオークが、何なのか分かるはずだよ?」

「ふみゅぅ……」


 リウはしばらく首を傾げ、尻尾をブンブンと動かしながら考えまくっている。目を大きく見開いたと思ったら、納得したようにして俺に何度も頷いて見せた。


「……そういうことだから、攻撃しちゃ駄目だよ?」

「はいにぁ! オークは一体だけなのかにぁ?」

「うーん……複数いれば安心かもだけど、こればかりはザーリンのさじ加減かな」

「シェラは知っているにぅ?」


 リウはレシスのことを"シェラ"と呼んでいる。

 どちらでもいいわけだが、ザーリンも俺のことをフェンダーと呼ぶし気にすることではない。


「奥で休んでいるからまだ気付いていないと思うけど、彼女なら"杖"が守っているし何も言わなくても平気だと思うよ」

「あい!」


 さすが野生の勘。リウの狩人スキルで敵か味方かを区別出来たようだ。ザーリンからは特に聞いてはいないものの、国として築くにはオークだけで守らせるつもりはないらしい。


 今のところオリジナルを見られるのはオークだけであり、他の種族を知るにはさらに足を進める必要がありそうだ。


「ん~~! 疲れが取れました! エンジさん、外界の……えっ!?」


 そうこうしているうちにレシスが休けいを終えて来た。


「どうかした?」

「あわわわわ!? な、何でここにオークが……お、襲って来ないんですか?」

「敵対行動を取らない限りは、こっちに何かして来ることはあり得ないよ」

「え? 敵対? もしかしてここをオークに守らせるつもりなんですか?」


 ボケッとしているようで意外に鋭い。

 リウと違ってそれほど驚いていないが、何か悟ったか。


「オークに何かしらの役割を与えておけば、内側にいる者には手出しをしないってことみたいだよ」

「そ、そうなんですね。それじゃあ、ここにまたラフナンさんたちが来ても大丈夫そうですね」

「もちろん確実では無いけどね。もっと他の種族を見ておく必要があるかな」


 オリジナルのオークたちは集団行動で仲間を守る習性があった。それだけに、レシスはすぐに理解してくれた。


 コピーである以上俺たちに襲って来ることはあり得ない。その意味でとりあえず納得してもらえたのでよしとする。


「フェンダー。次はタルブックに向かうから」

「タルブック?」

「人間が砦で街を作った国。そこで造られた壁をきちんと見る」


 ログナから出たことが無い俺にとって、聞く名前全てが初めて。

 どこに行くにもしばらくはザーリンを頼るしかない。


「なるほど」

「他の番人候補もうろついているはず。絶対遭遇するべき。その時はネコを使う。フェンダーは、まだ支援系魔法だけで何とかすればいい」

「レシスは?」

「いずれ気付くにしてもまだ早い。あの女のスキルを完全にコピーするまでは保留」


 レシスが味方になってからまだ時間も経っていないし無理も無いか。

 心配を減らすにはオリジナルをもっとコピーして、魔法ももっと成長させなければ。

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