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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
捌頁:極めの帰結

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169.失わない力 2


 サランの不意打ちを突き、ティアマトが求めに応じて現れた。


「人間め……召喚で優位に立ったつもりか?」


 一瞬の隙も与えぬまま、ティアマトが地から飛翔し羽ばたきの翼でゴゥッとした旋風を起こし始めた。

 そして刹那のごとく、サランが展開した闇空間一帯もろとも吹き飛ばす。

 

「ち、かき消されたか……」

「【ディスペルウィンド】だ。巨躯の召喚獣であれば、すぐにかき消せる」

「……貴様ごとき人間が召喚に頼り、霧を払うとはな」

「俺は魔法士なのでね。召喚魔法も使えるってわけだ」


 俺が呼び出したティアマトにより、一帯の黒霧は全てかき消された。おかげで、リウやレシスたちの交戦状態が目視出来るようになった。


「あーっ! エンジさんが!」

「エンジさまにぁ!! すぐ手伝いに行くにぅ」


 真っ先に気付いたレシスとリウが声を張り上げている。

 しかし――


「獣どもを呼び込むなど、くだらない……貴様にはもっと闇を味わってもらう」

「まだ何かする気か?」

「獣どもに近付かれても面倒だ……。手出しの出来ない"壁"を作らせてもらうぞ」

「――!」


 サランは手の平を上にし黒い球体を作り出したかと思えば、べったりとまとわりつく闇を顕現させた。

 そしてそのまま薄い壁のようなもので、彼女たちの間に障壁を作った。


「クク、魔法士の真似をするならば、さしずめダークシールドといったところか? 貴様の魔法でも容易く破れはしない。少なくとも、オレの存在……闇の化身が保たれている限りは。ククク……」


 闇の化身とも言うべき存在は、闇に特化した力を有しているようだ。そのせいで、またしても彼女たちとは隔絶された状況が生じてしまう。


「悪いが、俺は何度でも召喚魔法が使える。それこそ、ティアマトに限らずだ」

「……それなら、似た存在を喰らってみるがいい!」

「――似た存在?」


 リウたちに近付いたのもつかの間、サランは召喚に似た存在を呼び出すようで、何かを呟きだした。

 直後、妙なざわめきが辺りを覆う。


 そして――


 スンッとした呼気が背後から感じられる。

 ティアマトほどではないが、それに似た何かが牙を向けて間近に迫っている感じだ。


 振り向いて確かめるまでも無く、どう探っても背後にいる存在は死霊めいたものとしか考えられない。


「クックック……、魔法士。一思(ひとおも)いに喰われてみるか? すぐに他の人間の元に行けるぞ?」

「それはごめんだな。後ろの竜の名は?」

「ククク、やはり気付くか。ソイツは黒闇の飛竜。ワタシのペットのようなものですわ……フフ、今から召喚なぞ間に合うわけもない!! 死ね、魔法士!」


 小手調べのような展開をあえて作り出していたが、サランの方に我慢が足りなかったようだ。

 後頭部に感じる黒闇の飛竜からは、言葉どおり俺もろとものみ込むつもりがあるらしい。


「フフフフッハハハハハ!!! 人間は油断するのがクセになっている! 所詮、人間のすること! ワタシのような闇の化身に敵うはずが無いのですわっっ!!」


 サランは、すっかり余裕と勝ち誇りの高笑いをしている。

 だが魔法のほとんどをコピーした俺には、不意打ち攻撃など造作もないことだった。


 しかしこの際、どうせなら闇に喰われてみるのも面白い。黒闇の飛竜の呼気からはわずかながらに、人間たちの呼吸が感じられた。サランの油断も生じるし、そこで救い出すのも手か。


 そう思った俺は、避けもせずに黒闇の飛竜に全てを委ねた。


「クククククク!! アハハハハッ! 魔法士め!! やはり腕を無くした人間がオレに敵うはずなど無かったのだ!!」


 ――サランの高笑いを聞いた直後、俺は静寂に閉ざされることになった。

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