165.レシス、敵を一人残らず倒し尽くす?
「にぁぁぁ!! しつこいにぁ!」
「ネコ、右に人間! レッテは左をやる!」
「言われなくても見えているのにぁ!」
エンジとサランが対峙している頃、違う場所ではリウたちは敵と化した人間たちと戦いを繰り返していた。
普段は全く協力をしないリウとレッテではあったが、ここに来て戦闘協力をしているようだ。
敵のほとんどは、サランあるいは国から仕向けられた住人がほとんどで、魔法の類は一切使って来ない。
しかし国に協力的な人間が多くいることで、違う意味で苦戦を強いられている。
「ひぃえええええっ!? ルールイさん、あっちもこっちもですよ!!」
「そんなの見れば分かることですわ! とにかく、もう少し大人しく掴まってて下さらない? そうじゃないと落ちてしまいますわよ?」
「わっ、分かりました~。そ、それとも、私もリウちゃんたちの援護をした方がいいんですかね~?」
「……かえって弱く――んんっ! ここで死にたくなければ、大人しく見ていればいいだけですわ」
一時はエンジと行動を共にしていたルールイだったが、今は無事にレシスたちと合流を果たした。
しかしレシスが逃げまどっていたことに気付き、彼女を掴んで今は空中で待機している状態だ。
「でもでも、同じ人間たちが相手だったら、さすがに死ぬことは無いんじゃないですかね~?」
「それなら好きにすれば?」
「ええっ? い、いいんですか!? 本当にやっちゃいますよぉ?」
レシスはエンジと一緒にいた時、まだ歯止めがかかっていた。
しかしいざ自由にさせてしまうと、止めることは不可能になる。
そんな場面を何度も見て来ているルールイにとって、レシスを強引に止めることは出来ないと判断。
どうせすぐに泣きついて来る。
ルールイはそう思いながら、リウたちが戦っている辺りにレシスを降ろすことにした。
「よーし、よぉぉし!! でぇぇぇい……った、わたたたた!?」
勢いよく地上に降ろされたレシスは、勢い余ってバランスを崩した。
そうかと思えば、リウたちに襲い掛かる大勢の人間たちに突っ込んで行く。
「あの子ったら、一体何をやっているのかしら……。仕方ないわね、もう一度掴んで――あらっ?」
勢いがつきすぎたレシスは、何度も頭を下げながら向かって来る人間たちを次々と弾き飛ばす。
それはまるで、暴走したバッファローのようだった。
「どいてどいてどいて~~!! ひぃえええええ!!! わざとじゃないんですよぉぉ」
鈍い音と同時に、数十人単位の人間たちがレシスの体当たりによって飛ばされまくっている。
飛ばされた人間たちのほとんどは、起き上がれないくらいのダメージを負った。
「ぐわぁっ!!」「な、何だ、何が起こっ――」といった感じで、有無を言わせない勢いだ。
「にぁにぁ!? 何が起こっているにぁ?」
「レシス……あの人間が人間を吹き飛ばしてる。ここはもう、終わった。ネコ、レッテはヌシさまのところに向かう。どこにいるのか教えた方がいい」
「にぅ。エンジさまならこの先に……もちろんリウも行くにぁ!」
思わぬ乱入があり、リウたちの戦闘はあっさり終えた。
辺りに倒れまくっている者に頭を下げるレシスを連れて、リウたちはエンジがいる所に急ぐのだった。




