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追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました  作者: 遥風 かずら
零頁:落ちこぼれの書記

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16.書記、絶対防御を手に入れる


 リウをけしかけ杖を振るだけ。

 などと言ってみたものの、そう簡単には行きそうにない。


 リウは一度敵とみなした相手には容赦のない素早さを発揮する。俺のことをいつから主人扱いになったのかは定かでは無いが、俺にいい所を見せようとしているようだ。


 対するレシスは特に目立った動きを見せてない。

 セイアッドスタッフを握りしめたままでその場から動くつもりが無いように見える。


「むむぅう!! お、おかしいにぁ……」

「え、えと、ごめんなさい! わたしは何も出来ないので、どうか杖に近づかないで欲しいです」


 俺とザーリンは、少し離れた所で二人の様子を見ている状況だ。

 どちらかというとリウの動きだけを追っているのだが……。


「ネコはあの女に近づくことが出来ないから勝てない。……フェンダーはそんな危険な女を仲間にしようとしている」

「俺にはリウが見えない恐怖に近づけないようにしか見えないし、レシスは何もしないで立っているだけにしか見えないよ?」

「見えない力。それがあの女が手に入れた力」


 俺はレシスに触れるだけでコピーが出来る。そのはずなのに握手をしようとした時、偶然にもリウの割り込みでそれが出来ていない。


 思い返すと、あの勇者たちも邪魔者扱いしていながらレシスに手を出そうとはしていなかった。

 まさか見えない力が働いているのか。


 そんなことを思い巡らせているとようやく機会が訪れた。

 見えない力があったとしても、リウとレシスの距離が徐々に縮まって来たからだ。


 しかし――

 レシスは杖に守られるように、何度もリウに光の魔法を向け出した。


「にぁっ!? あ、危ないにぁ!」


 当たっても回復効果しかなくリウに害が無い杖。しかし杖から放たれた光は一定では無く、辺り構わずに放ち始めている。


「にぁぁぁぁ!? あぶあぶあぶ!!」


 今が好機と感じた俺は逃げ惑うリウの前に出た。そして杖から放たれた光を一身に浴びることに成功する。


「エ、エンジさま!? だ、大丈夫かにぁ!?」

「ええ? ――あぁっ! エンジさん!?」


【セイアッドスタッフ ランク? 属性光、神聖、リジェネレーション 絶対防御】 


 浮かんだコピーイメージはやはり回復メイン。

 しかし何故かコピー出来たのは絶対防御だけ。光の種類は他にもあるのにだ。


【絶対防御 魔法名なし 固有スキルとしてコピー完了】


「……コピー出来た?」

「それがさ、杖の能力しか出来なかったんだけどこれって?」

「だからあの女が危険だと言った。あの杖はフェンダーが得られた古代書に反する力。光魔法なら、すでにフェンダーは覚えている。杖が守る者として認められていない」

「それって、レシスのこと? 仲間にすると危険ってどういう――」

「あの女に手出ししなければ問題ない。それだけ」


(手出し……って、まさか握手をするのも防御されていたのか?)


 そんなこんなでリウと彼女の対決は、結局レシスの圧倒で終わることとなった。

 当のレシスに至っては、訳も分からずに立ち尽くしていただけだ。


「し、仕方ないにぅ……エンジさまが言うなら、リウは何も言えないにぁ」

「ありがとう、リウちゃん」

「む、むむむぅ」


 レシスから手を差し出す分には杖は何もして来ないらしい。

 しかし俺に対しては、杖自体にヘイトを持たれてしまったように思えた。

 

 果たしてどこまでが絶対防御なのか、それを試すことは今はやめておく。


 人、もしくは杖のような特殊な武器からのコピーに関してはまだ分からないことばかり。その意味でも、俺自身のコピースキルを上げる必要がまだまだあるということだろう。


「フェンダー、砦の壁を整える為に城壁のある場所へ行って、コピー」

「ええっ!? そんなこともする必要が?」

「ある。全て、あなたの成長にかかってる。地面から生やしただけの壁、何の防御力も無い」

「じゃあ、今コピー出来た絶対防御を……」

「それはあくまで防御。整えられるのとは別。あなたは今すぐ、城のある国に行く」


 何だか書記としてあらゆる設計図や、書式を転写していた頃を思い出す。

 つまりはそういうことらしい。攻撃魔法、今回の防御魔法、いずれにしても相手から得られるとは限らないことだ。


「極めたいならフェンダーから出向く。そうでなければ、何もならない」

「そ、そうか。それなら出発の準備を――」

「駄目。ここを人間に奪われるわけには行かない。だから、外界のオークをここに置きたい」

「またオークを相手にするのも……」

「その力は何のため?」


 要するに自分で考えて行動しろ。そういうことらしい。

 ザーリンは俺を導く者。しかし細かいことは教えるつもりがないようで、今みたいなやり取りが発生する。


「じゃあ、レシスを連れて行って来るよ! ザーリンとリウはここで待ってて」

「それでいい。オークに触れなくても、あなたにはそれが出来る」


 ザーリンの言葉には確かなものがいつも無い。だがコピーするには直に触れなくても出来るということを、今回の光魔法で教わった気がした。


 まずはレシスと話をしながらオークのいる所に向かう。

 それしかなさそうだ。



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