153.シンヴァルト大森林3 ダークエリア
オーグリスを倒せたのもそうだし、体内から抽出出来たのも何かの予兆かもしれない。
そう思いながら、原石を"加工"してみた。
すると――。
【光属性防御 ルーセント・ガード 生成完了 コピー完了】
「おおぉ!? こ、これは、新しい防御魔法?」
思わず興奮の声を上げてしまったが、成功したようだ。
しかも原石は失われず、形を留めたまま手元に残っている。
光の属性石にはならないらしいが、光に関わるものが石に秘められているのではないだろうか。
そうだとしたら、コピーするたびに可能性が広まるのでは。
「アルジさま。加工は上手く出来ましたの?」
「ルールイ、これだよ!」
「――? 見た感じ何も変わっていないみたいですけれど?」
原石自体は、特に変化していないように見えているようだ。
しかし内に秘められている魔力量が明らかに違う。
「それよりも、レシスを何とかしないと。ルールイは、合図とともに魔物に攻撃を!」
「わ、分かりましたわ」
レシスは寝惚けながらもかなり強力な噛みつきで、植物を弱らせているようだ。
このまま放っておいても問題は無いが、このエリアで魔物を引き寄せるわけには行かない。
「よし、やるか。《ルーセント・ガード》!」
「それは、光の魔法!?」
「ルールイ、今だ! レシス……じゃなくて、魔物を切り裂け!!」
「かしこまりましたわ!」
未だに寝惚けているレシスには、強力な光魔法をかけた。
それにより彼女の全身は光に包まれ、寝惚け状態から静かな寝息へと変わった。
回復効果は無いが、睡眠効果に似た光のようにも見える。
「にぁぁぁ!? ピカピカ、眩しいにぁぁ」
「レッテ、目が開けられないですーー!」
俺の傍で待機しているリウたちが、目も開けられないほど眩しがっているようだ。
この光は獣には強すぎるのか。
「ハァァァァァ!! このぉっ!」
ルールイの切り裂き攻撃が、魔物に炸裂している。
コウモリの女王だけあって、瞬時的な攻撃に長けているみたいだ。
「ギ……ギギギギギ――」
しばらくして、植物系の魔物は活動を停止した。
――というより、原形をとどめないくらいまでに切り刻まれたようだ。
「アルジさま、倒しましたわ!」
「うん、よくやってくれたよ。レシスも無事だ」
「それにしても、その光魔法……獣にも効きそうですけれど、防御の効果だけですの?」
「防御と眠らせる効果があるみたいだけど獣というより、リウたちの目には追い付かない光量があるのかもしれない」
「元来光が苦手なわたくしが平気ですのに、不思議な効果があるのですわね」
そう言われれば確かにそうだ。
コウモリ族であるルールイの方が、真っ先に嫌がりそうな光なのにどういう効果があるのか。
「むにゃむにゃ……むにゃ~……あ、あれぇ? 野菜はどこへ~?」
リウたちが目をこすっている間に、ようやくレシスが目を覚ました。
やはり寝惚けていた間のことは、何も覚えていないように見える。
いや、何かをかじっていたことだけは覚えているようだ。
「レシス! 君に何が起きていたと思う?」
「ほえ? みんなで味の濃い野菜をかじっていたんじゃないんですか?」
「……それは悪夢だから、忘れていいよ」
「え、悪夢だったんですか? それにしては口の中に味が……ところで、ここはどこでしょう? そ、それに私の体が何か軽い気がしますよ?」
悪夢ということにしといた方が彼女の為だな。
それはいいとして、体が軽いというのは魔法の効果が効いていることのようだ。
自分で浴びてみれば何か分かりそうな気がするが、どうしたものだろうか。
リウたちが近くにいる状態で使うのは避けた方がいい気もするし、効果を試すのは中々に厳しい。
「リウ、レッテ。そろそろ動けそう?」
「にぅぅ」
「はいでーす」
「とりあえず、ここを離れよう! このエリアで使うと光も強力なものになっている感じがあるし、自分たちにも影響がありそうだ」
闇が強いエリアで光魔法は良くも悪くも――といった感じか。
また厄介な植物系の魔物が襲って来ても面倒だ。
別のエリアにまで移動した方が、自分たちにとってもいいはず。
「アルジさま、移動を?」
「長くいていいことは無いからね。レシスが平常の時に動いておくよ」
「それがいいですわね」
「あれれ、エンジさん、どこへ行くんですか~? 置いて行かないでください~」
このエリアを抜けた先にあるのが何なのか分からないが、ここに来て新たな魔法が現れた。
これを前向きにとらえて進むしか無いだろう。
「レシス、迷子になるなよ」
「そ、それならエンジさん!! 手を繋いでも~?」
「…………少しだけなら」




