147.オーグリスとの戦い 3
「どっ、どうぞーー!!」
「助かるよ、ありがとうレシス!」
「いえいえ、これも奥さんの務めでして」
レシスの妄想は置いといて、彼女から自然治癒魔法を少しだけかけてもらった。
オーグリスとまともにやり合うのであれば、魔法攻撃を離れて撃つだけでは済まないと思ったからだ。
リウとルールイは体力回復中で、動けるのは俺とレッテだけ。
そうなるとどうしても、身軽い動きは限定されてしまう。
その意味でも、まずは俺が突っ込んでぶっ放すことにした。
「……ガ! ガアアアアアア――!!」
魔法攻撃に入ろうとしたその時だった。
俺からの攻撃気配に感づいたのか、奴が突然唸り声を上げたのだ。
「ひええええええ!? な、何ですか!? 何事ですかーー?」
レシスが耳を押さえながら膝を付いている。
俺に気付いたということは、彼女たちがいる場所で攻撃意思を見せては駄目だ。
「――くっ、こっちだ、化け物!」
オーグリスからは、岩を投げて来るといった攻撃はされていない。
隙を見せている今がチャンスだ。この場を離れて、俺は奴を上層の方へとおびき出す。
奴は足元をまるで地響きを起こすかのように揺らし、その場所から離れ俺について来る。
俺を追いかけるようにして飛んで来る奴に対し、不意打ちによる魔法攻撃を開始した。
「これでも喰らってみろ、《グラビトン》!」
「ッ――ウガァァ……!?」
実戦的な魔法攻撃をするのは久しぶりだ。
下層では見上げるしか出来なかった巨躯だが、飛翔したことで優位に魔法を展開出来る。
重力系魔法はダメージを与えられる程の威力は皆無だ。
あくまで、動きを鈍化させるだけに過ぎない。
だが奴の頭上から不意打ちを喰らわせたことで、追って来る速度が鈍さを見せている。
ここは致命的なダメージを与えるのではなく、徐々に弱体させる戦法で行く。
「次はこれだ。《マッディストリーム》で不自由な動きを追加してやる」
上からの激しい水流は、見上げながら追いかけて来る相手には非常に有効だ。
しかも範囲が広い水魔法なので、左右に避けようとすれば無駄に体力を奪う。
「グゥアッ……! グググァゥゥゥゥゥゥ!!」
オーグリスからは、苛立った視線が俺の全身に注がれている。
この調子で、俺だけに敵対心を集中してくれた方が好都合だ。
レッテに止めを刺してもらう為にも、限りない魔法を与えておくとするか。




