146.オーグリスとの戦い 2
「ヌシさま、レッテはどうすれば~!?」
「待って! まだ動いたら駄目だ」
巨躯な怪物が出て来たのは不意打ちに近い。
レシスを抱きかかえるリウと、彼女を引っ張るルールイでは、恐らく攻撃に転じることは出来ないだろう。
その為に防御魔法をかけた。
だがあの怪物が古代書と同等の力を備えているとしたら、彼女たちでは厳しいはず。
「にぁぅっ!? だ、駄目にぁ、避けられないにぁ!!」
「ひぃえええ」
オーグリスは手当たり次第に、巨大な手足を動かし続けている。
これではどんなに俊敏な動きが出来ても、予測が難しい。
リウたちは怪物の足下を上手く避けながら隠れようとしているが、その度に怪物は狂喜に似た雄たけびをあげて、足下にいる彼女たちを吹き飛ばそうとしているようだ。
徐々に動きを速くするオーグリスに対し、リウたちの動きが緩慢になっている。
すると、オーグリスの叫びと同時に、奴の腕がリウを掴みかけた。
「リウッ! お避けなさいっ!!」
「にぁっ!?」
掴みかけられたリウを庇ったルールイが、壁に叩きつけられてしまった。
「ルールイ!! 無事かっ!?」
「……アルジさまのおかげで何とかなっていますわ」
どうやら防御魔法の効果が功を奏したようだ。
怪物がルールイに気を取られた間に、リウが俺の元に戻って来た。
「エンジさま、ごめんなさいにぁ……」
「あうぅぅ~……エンジさんん~うぅっ、ぐすっ……びえぇ~」
「……い、いや、俺の方こそ」
どうやらリウもレシスも無傷のようだ。
レシスを放置していた俺の責任でもあるし、調子に乗った怪物は俺が倒すしかない。
「アルジさまっ、戻りましたわ」
ルールイは体のあちこちに切り傷が出来ていたが、大きなダメージを負ってはいないみたいだ。
しかしリウとルールイの体力は相当に消耗していて、しばらく動けそうにない。
「ヌシさま、レッテはいつでも行けるです!!」
「……うん」
まともに動けるのはレッテだけだが、巨躯の相手に対しどう動かせるべきなのか。
恐らくでかいだけで、あまり強くないと思われるが。
「レッテ。キミは奴が弱ってからトドメを刺してくれ! それまで俺が相手をする」
「はいでーすっ!!」
鉱山洞窟に来てから、まだまともに戦ってもいない。
ここは魔法のレベル上げも兼ねて、思いきり力を解放してみることにする。
「エンジさま、気を付けてくださいにぁ~」
「うぐずっ……エンジさん~」
「アルジさま。もし吹き飛ばされたら、わたくしの元に!!」
「……き、気を付けるよ」
レシスだけ泣きじゃくっているが、彼女は体力が有り余っているはず。
彼女にも協力を頼んでおくか。
「レシス! 多分、洞窟が崩れるかもしれないから、君も防御魔法をかけておいて!」
「わ、分かりました~ぐすっ……」
本当に大丈夫だろうか。
とにかく今は、オーグリスを何とかするしか無さそうだ。




