139.ルファス鉱山を探れ 6
俺が言うと同時に、リウやルールイたちはその場をすぐに離れた。
そして、
「一点集中!! 『パラリシス』だっ!」
普通なら属性による攻撃を当てればいいだけだったが、この巨人族は下層への仕掛けに含まれている。
そうなるとダメージが通るような攻撃では、状況が一変してしまう。
衝撃を与え続けた所に麻痺を当てたが、どう変わるか。
「――グオォ……オォォ」
巨人族はうめき声を上げながら、膝元から崩れ落ちていく。
態勢を崩した図体は、そのまま仕掛けである赤いレバーごと壁に倒れ込んだ。
「おぉっ!! やったのか?」
「さすがわたしのエンジさんです!」
レシスとデリオンが、身を乗り出して騒いでいる。
しかし下層への壁が開かれたわけでは無く、油断は出来ない。
「にぁっ!? 何か遠くから音が響いて来たにぁ!」
そう思っていたが、リウが耳をピクピクさせながら何かを感じ取ったらしい。
すると、足下が微かに揺れているような感じを受け始めた。
「――うっ!? これは……!」
「エンジさま、ひ、開くにぁ!! よけて下さいにぁん!!」
異変に気付いたリウの声が届いた時には、自分の足下の床が左右に動き出していた。
間に合うはずも無く、倒れた巨人族とともに床穴へと吸い込まれそうだ。
「くっ――!?」
「ヌシさまっ!! ガウゥッ、腕が届かないです」
すでに巨人族は穴へ吸い込まれ、底の見えない下層へと落ちて行った。
それに加え、下層への階段そのものが見えなくなっている。
デリオンが言った話と違う展開になっているが、このまま穴に落ちたら無事では済まされないはず。
もちろん魔法で衝撃吸収をすることも可能ではある。
「アルジさまっ! わたくしにお掴まりになって!!」
悩む前に、ルールイが翼を広げて俺の所に飛んで来てくれた。
ルールイに掴まりながら周囲を見回すと、レシスも含めてみんな心配顔を見せている。
あぁ、そうか。俺だけが落ちてしまっていい問題じゃなかったな。
「ルールイ、重くないか?」
「ウフフッ! アルジさまを堂々と抱ける、またとない機会ですわ! 重さなど微塵も感じませんわよ」
「そ、そっか……」
床穴が完全に閉じきるまでそう時間はかからず、ルールイとの飛行はすぐに終えた。
心配していた下層への階段も、穴が無くなると床下に姿を現わしていた。
「にぅぅ! エンジさま、さすがにぁ~」
「ヌシさまの判断は、絶対正しいと確信してましたでーす!」
「ウフフッ! アルジさまの魔法に間違いなど、あるはずがありませんわね!!」
「い、いやぁ……っと、それはともかくとして――」
少し離れた所で成り行きを見守っていたデリオンとレシスの二人。
よく見てみると、どうやら俺たちが問いかける前にデリオンが意外な形で頭を下げていた。
「鍛冶師デリオンさん。正直に言ってくれるんですよね? 言わないと、エンジさんを危ない目に遭わせたことを罪に科して、尋問しますからね!」
「す、すすす、すみません!!」
「全く、全く全く!! 反省している態度に見えないですよっ! 良いと言うまで、頭を上げてはいけませんからね!!」
「わ、悪かったです。どうかお許しを……!」
まさかのレシスがまともに見えている。
もちろん回復士は別にそういう役目でもないのだが、ここはレシスに期待してみよう。




