137.ルファス鉱山を探れ 4
「アルジさま、わたくしたちは先に行きますわよ!」
「レッテも加わるでーす!」
四層目で早くも苦戦しているというデリオンの元に、まずはルールイとレッテを向かわせた。
敵は五層目への道を阻む巨人族らしい。
一方、俺とレシスにはリウが付いている。
魔法による攻撃メインでない敵であれば、ルールイたちだけで事足りるからだ。
それとレシスの足が、予想よりも遅いということが理由でもある。
「エンジさま、何かコピーするのにぁ?」
「どうかな。魔法に関わらず、役立ちそうなものなら触れて見るけどね」
「硬い岩は痛いにぅ。でもでも、守りはもっと良くなるにぁ」
「ふむ、ログナにも硬い壁を作れそうだね」
「にぅにぅ!」
リウは戦いばかりでなく、俺の国のことまで気にかけてくれる。
そういうところがリウのいい所だ。これまでずっと一緒に旅して来ているが、一番信用の出来る相棒と言っていい。
「ふっふ~ん! エンジさん! わたしのことを忘れないでくださいよ? わたしもやる時はやれるんです! 何なら常時回復をかけまくってもいいんですよ?」
時々鋭いというか、心の内でも読まれたというくらい、レシスは自分の思いをぶつけて来る。
そこまで言うのなら、苦戦しているであろうデリオンの元へ急がせるべきなのだが、不安すぎてそう出来ないのが悩みどころだ。
「いや、君は俺から離れるな。もちろん、言葉に深い意味は無い」
「そう言うと思ってました! 安心してください! エンジさんにこそ、回復しまくりますよ~」
「……ダメージを負っていたらな」
「もちろんです!」
相変わらずのレシスの話を上手く交わしながら、デリオンがいる場所にたどり着いた。
彼を見る限り、大してダメージを負っているように見えない。
それでもそのままという訳には行かないので、レシスを彼の元につかせる。
「わ、悪いな、嬢ちゃん」
「いいえ、当然のことです。ジッとしていてくださいね」
「……すまない」
いつ見ても不思議な光景だ。
普通にしていれば、レシスはきちんとした回復士だというのに。
それはそうと、下層への阻みを続けている巨人族は、確かに岩のように硬そうではある。
ルールイとレッテの攻撃は基本的に相手の弱点を突いて、そこから一気に崩すやり方だ。
しかし見ていると、こちらの強さに関係無く、ただ阻んでいるだけの存在のように見える。
つまりは、どんな攻撃を仕掛けても撃退することが出来ない存在だ。
「お、おかしいですわ。人間と同じ所に核があるはずですのに、そこを突いても消えないだなんて」
「頑丈すぎて疲れてしまうでーす」
鉱山の天井部分にまで届く巨人族は、ダメージを負っているようだが、やはり倒れる気配を見せない。
こうなると、彼女たちがどんなに攻撃を続けても、次の層には向かえないことになる。
「……デリオン! あの巨人族について知っていることは?」
普通の鉱山、それこそゲンマのように仕掛けがあると分かっている鉱山なら、作戦を練ってから突入する。
それなのにデリオンは、全くそういう事前準備をしなかった。
何かの企みで俺たちを足止めさせようとしていたのなら、巨人族の突破方法も知っているはず。
「それは……」
「あいつを何とかするやり方があるはずだけど? そうじゃなきゃ、先に進まないよね?」
どうにも疑いばかりが膨れ上がる。
観念したのか、デリオンは巨人族の足下近くにある赤いレバーに目をやった。
「そこに落とし穴のレバーがあるんだが、見つかっちまった。すまん」
「この鉱山も仕掛けが?」
「ゼースヒル洞窟と似た感じだ。エンジは行ったことあるんだろ?」
「……あるけど、そうならそうと」
「す、すまない。とにかく、赤いレバーを下に押せば床が開く。その巨人族自体が仕掛けのようなものだ。悪いが、頼めるか?」
この言葉には嘘は無さそうだ。
仕掛けのようなものとはいえ、意思を持つ巨人族である以上、意識を他に向けさせるしかない。
「リウ、行けるかい?」
「にぅ!」




