134.ルファス鉱山を探れ 1
「何だい、ゼースヒルのことは知らないのかい?」
「い、いえ、洞窟のことですよね?」
「そう! 最近になって崩落した、あの洞窟のことだよ。ゼースヒル洞窟には、古代の書物があると言われていたんだけど、いつの間にか冒険者が持っていったみたいでね」
「な、なるほど」
「それが無くなった途端に、凶悪な洞窟になったんだ」
古代書のことだろうか。実は洞窟を正常に保っていた書物だったのでは。
今や俺の体の中に備わっているわけだけど。
「ゼースヒルのようにっていうのは、どういう?」
「書物には妙な力があって、光の属性を持っていたとも聞く。光の属性は決していい光だけじゃない。だからこそ魔物が守っていたとも聞くけど、真相は分からないね。それがどうだい、書物が消えたら洞窟がおかしくなったじゃないか!」
「ま、まぁ」
「ここルファスの女町長も、宝石に目がくらんで光の属性石を求めるようになった。ここの鉱山には、何度も採掘に行かされてるんだ」
「……」
光の属性石を巡っての争いがすでに起きているとは。
古代書が光の属性なら、この俺のコピースキルもその恩恵があるのだろうか。
「――よし、エンジ。今から依頼を変える。お前さんには、ルファス鉱山を探ってもらいたい! もし鉱山に光の属性石があれば持って来て欲しい。無かったとしても、構わない」
鉱山を探る、か。そうなると鍛冶師であるデリオンがいてくれれば心強いが。
確か今は、リウたちを町案内している最中のはず。
「一人でじゃないですよね?」
「もちろん。そろそろデリオンが戻って来るはずさ。そしたら、あいつに案内させるよ! お前さんの仲間もいた方がいいんだろう?」
「そうですね。ところで、デリオンは戦えるんですかね?」
「鉱山の中だけなら、冒険者にも引けを取らないはずだ。鉱山での戦い方は、あいつに聞きな!」
鉱山の中だけってことは、外ではまるで弱いということなのか。
護衛を頼まれて何事かとも思っていたけど。
「……とにかく、ルファス鉱山を探ってくれ! この町……いや、光の属性石を狙うゲレイド新国には、奪われたくないからね」
「ゲレイド新国……なるほど」
「さて、エンジ。そろそろ支度だ」
「でも、まだ完全には削り切れてないですよ?」
「今はそれで十分。要は原石を削ることが出来ればいいんだ」
「そ、そういうことでしたら」
ルファス鉱山を探って来い、とか、絶対嫌な予感しかしない。
それにしても、ゲレイド新国か。俺の腕を奪ったあの女が狙うのは、光の属性石……。
あれこれ悩んでも仕方が無い……そう思っていたら、デリオンが姿を見せた。
「おう! 戻ったぜ! 早速だが、エンジ。鉱山に行くぜ!」
「あ、はい。ところで、彼女たちは?」
「外で待たせているが、目立つんでな。鉱山近くに待たせてある」
「それじゃあ、そこに案内をよろしく」
「おぅ。こっちだ!」
マスターに頭を下げ、デリオンについて行く。
それにしても、またしばらく鉱山の中に籠ることになるのだろうか。




