133.彫金ギルドと強制入門?
「……そうそうそう、そのまま角を削って」
「こ、これで合ってます?」
「筋がいい! このままここで続けていけば、徒弟になれるぞ~!」
ずっと続けるつもりは無いのに、どうして黙って言うことを聞いているのだろうか。
しかもこの部屋には見事に、俺とギルドの偉い人しかいない。
軽い気持ちで頼みごとを聞いただけなのに、まさか彼女たちと別行動になってしまうとは。
◇◇
「ええ? 留守番? そんな、俺はこの町の人間じゃないんですよ?」
「そこは問題無いぞ! 鍛冶師の口利きが効くからな。それにエンジは唯一の男だ。留守を頼むのには丁度いいんだよ! な! 頼む!」
「彼女たちではまぁ、確かに……」
「よしっ! それじゃあ、エンジがギルドの留守番をしている間に、彼女たちには観光案内でもしとく!」
「そういうことなら……」
鍛冶師デリオンの頼みは単純なものだ。
知り合いの彫金ギルドマスターが留守にしている。
帰って来るまで展示している宝石類が心配らしく、留守を頼まれているのだとか。
デリオンがすればいいだけのことだったが、町長から俺たちを案内して欲しいというのを頼まれているらしく、離れられないらしい。
「にぅぅ……エンジさまお留守番なのにぁ?」
「そうなるね。リウは町を見て回っておいで!」
「エンジさまの代わりに記憶するにぁ!」
「うん、任せたよ」
「にぅ」
リウを始めとして、ルールイたちは俺と別行動になることに首を傾げていた。
その状況を破ったのはレシスだ。彼女は、宝石だらけの町に興奮して勝手に動く危険性がある。
レシスの行動力にうんざりしながら、彼女たちはデリオンの案内に従って移動して行ってしまった。
町長はどこか怪しいものの、デリオンからはそういう気配を感じなかったので、彼に任せるしか無い。
そしてギルドの部屋に入っていたら、何故か弟子入りしていたのである。
「エンジと言ったか。お前、筋がいいよ! どうだい、このままこの町で宝石を削ることに没頭しては?」
「い、いえ。俺は冒険者なので、特定の町に居続けることは厳しいかと」
「でも宝石を削るスキルを身に着ければ、役に立つよ? そう、例えば属性石を見つけ出す……とか」
「属性石を?」
「探しているんだろう? それも光の属性石を」
「……どうですかね」
デリオンから事前に聞いていたか、あるいは町長から……。
それにしても、宝石を削れば見つけ出せるとか、光の属性石は宝石の中に紛れられるのだろうか。
「町長からは何も言われていない。これは私個人からの依頼だ」
「何故俺だけを……? 単なるギルド入会なら、町の住人でもいいんじゃ……」
「……ここの住人は、町長のルファスに心酔する女ばかり。ルファスが黒い強国と繋がっているなんて、怪しむ者もいないのさ」
「黒い強国……」
「とにかくだ。デリオンがお前のツレたちを案内して気を引いてるうちに、合成スキルを身に着けて欲しい。そうじゃなければ、この町もゼースヒルのようになってしまう」
「ゼースヒル!?」




