130.鉱石採掘の町アルファスへ
「エンジさま、失礼いたします……」
「えっ……あ、いや、すみません」
「い、いえ、これしきのことですので……」
『『『むぅぅぅぅ!!』』』
リウたちの怒りが、建物全体を揺らしてしまっている。
『ひ、ひいいい! お、お客様、お店が壊れてしまいます~!』
――などと口元を拭いてもらっただけなのに、レストランが危うく壊滅しかけてしまった。
◇◇
ログナのレストランで聖堂騎士ローザをもてなした後、彼女に同行し、まずはルナリアへ向かうことになった。
ゆっくりしてもらうつもりだったが、王国に一刻も早く戻りたいらしく、足早に店を出る。
「お代は――」
「気にしないでください、ローザさん」
「お優しいのですね」
「いやいや、そんなことは」
「不思議な縁ではありますが、わたくしは縁を大事にしておきたく願います」
聖堂騎士だからなのか、心が綺麗な人のようだ。
レッテと同じ狼族なのに、何だか緊張してしまう。
「むー!」
「あれ? あなたは賢者配下のレッテ! 今はエンジさまに仕えているのですね。フフ、仕えている方がエンジさまで羨ましい限りです」
「ヌシさまは、レッテが守る! 賢者は関係無い」
落ち着いた女性で気になるが、レッテの機嫌が悪くなりそうなのであまり見ないようにしなければ。
◇◇
「エンジさま。まもなく着きます」
「王国が近くて良かったよ」
「ええ」
ルナリア王国はログナから比較的近い所にある。
そのおかげで、時間がかかることなく王国にたどり着いた。
王国に入ってすぐに、鍛冶師の方から声をかけてきた。
「おぅ! 待ってたぜ!」
「あれ、どこかで会いましたっけ?」
「面識はねえな。ゲンマで見かけたってだけだ」
「ゲンマ……城塞都市の?」
「あんたら、属性石をあそこで掘ったろ? オレもそこにいたんだよ」
「えっと、護衛を頼みたいんでしたっけ?」
「ああ、頼む! 早くしないと町が大変な目に遭いそうなんでな」
鍛冶師の人が焦っているということは、よっぽどのことが起きているということだろうか。
「分かりました。俺はエンジ・フェンダーです。あなたは?」
「おお、そうだったな。オレは、デリオンだ。よろしく頼む」
デリオンと名乗った鍛冶師は、すでに出発支度を済ませていて俺たちを急かしている。
「エンジさん、急いでどこへ行こうとしてるんですか~?」
「あ、そうだ」
「ほれ、急いでくれ」
「えーと、どこへ行けば?」
「鉱石採掘の町アルファスだ。ここからかなり歩くが、あんたらならすぐだろ!」
「聞いたこと無い町なんですが……」
ゲンマとは別に、鉱石が出る町があることも知らなかった。
果たして信用していいのか。
ローザの方に視線をやると、
「ご存知ないのですか? では、ただいま地図をお持ちいたします!」
地図か。
まだまだ自分の足で動かないと、訪れていない町があるということみたいだ。




