127.ゼースヒル洞窟・属性石広場 4
レッテの攻撃が当たったということは、物理攻撃で撃退出来るはず。
しかし元はといえば、俺が壁に手を触れてしまったから出て来た影だ。
偽の属性石だったとしても、魔力に反応して影が出たなら、それをもう一度確かめる必要がある。
「よし、レッテ! キミには影を攻撃し続けて欲しい!」
「でも、キリが無いですよー? 時間稼ぎだとしても……」
「それなら、ルールイとリウも加勢出来る体勢が出来たようだし、どうにか耐えて!」
「そういうことなら、任せて欲しいでーす!!」
「うん、頼むよ」
彼女たちはすぐに動いてくれる。そういう意味では、魔法が効かない俺よりも行動にブレが無い。
『エンジさぁん~! あなたの奥様が助けに来ましたよぉ~』
レッテを送り出しリウたちの動きを確かめていると、素っ頓狂な声で駆けて来る子が見えた。
「誰が奥様だって……?」
「うふふ……あなたのレシスですよぉ~」
「……それで、レシス。君は何とも無いの?」
「はい~! 獣さんに見つめられた時は、思わずドキッとしてしまいましたけど、浮気じゃないですからね?」
「あぁ、うん……」
何だかどんどんレシスの人格が破壊されて行く気がするが、どうしてこんな子に変わったんだろう。
レシスがいても何かが劇的に変わるわけじゃないが、何かの手がかりでも得られれば。
「レシス。君はあの影の正体が?」
「はい。私の見立てでは――」
レシスの説明によると、光の属性石に見せていた石は魔物の擬態によるもので、この部屋そのものが魔物の棲み処ということらしい。
「お、驚いたな……」
「ほえ? 何がです~?」
「いや、よく擬態だと見抜いたな、と」
「私もやる時はやれる女なのでありまして!」
「そ、それなら早く言って欲しかった……」
「そんなわけでして、エンジさん! 壁に向けて得意の魔法をドーンとお見舞いしちゃってくださいませ~!」
「壁に? 目に見える壁の、どこでもいいのかな?」
「どうぞどうぞ、遠慮なく!」
にわかには信じがたいが、影の方ではなく壁に当たり判定があるというのなら、放ってみるしかない。
リウたちは、影の魔物相手に善戦をしている。
彼女たちが影の気を引いている内にやるしかない。
「属性は土の反属性にして、風にしておくか……」
「エンジさん! さあさあさあ!」
「わ、分かってるよ」




