126.ゼースヒル洞窟・属性石広場 3
「えぇ? 防御魔法って言ったって……すでに――」
咄嗟のことで、リウたちとは距離が出来ている。そんな状況で突如現れた影は、まるで獲物を嗅ぎまわるかのような動きを見せ始めた。
視覚は無さそうだが、もしかすると聴覚感知のような気もする。
そうなると、動かなければ襲って来る心配は無さそうだ。
リウが心配で声を張り上げてくれた防御魔法はすでに発動していて、物理と魔法に対する防御は心配ない。
心配なのは、影の感知に気付かずに近付いて声を上げる彼女だが……。
『ほええええ!? エ、エンジさぁん!! だ、大丈夫ですか~!?』
あぁ、やはり。レシスは期待を裏切らない……なんて悠長なことは言ってられない。
今の時点では確かに攻撃される確率は高くないが、影がどういう攻撃を仕掛けて来るのか。
『……グルルルゥ――』
どうやらレシスを標的と定めたようだ。
リウたちはルールイの気付きで手で口を覆っていて、その場で大人しくしている。
参ったな。影相手、それも獣タイプに魔法が通用するのか。
迷ってる余裕は無いくらい、レシスだけが孤立してしまっている。
『はへっ!? か、影が向かって来ますよぉぉぉぉ!? エンジさぁん~ひぃぃぃぃ!!』
絶対防御を持たないレシスでは、攻撃を受けてしまったら持たないはず。
こうなったら音に影響のありそうな魔法を、手当たり次第かけまくるしかない。
『――あぁっ、くそっ! おいっ! こっちだ!! こっちを向け、リップル!!』
音波で波を起こす魔法だが、獣の部分を残していれば効き目はある。
だが、
『ゴアァァッ!!』
『くっ!?』
数匹いた内の一匹には効き目が無かったのか、真っ先に俺の所に向かって来た。
影とはいえ獣の見開いたその眼は、どう見ても一思いに食いちぎる勢いだ。
「マッディストリーム!!」
範囲系水魔法で意識を逸らそうとするも、やはり実体のない影には攻撃が通らない。
そうこうしていると、影の獣が咽喉を引き裂かんばかりの狂暴で鋭利な爪を、分厚い腕で振り上げて来た。
これは避けるすべを持たない。そう思いながら自身の物理防御力に懸けていると、何かが声を荒らげ壁を蹴りながら、影の獣に強烈な蹴りを浴びせていた。
「ヌシさまっ! ご無事ですかー?」
「レッテ! どうやってここまで?」
「ウチは狼ですよー! ネコよりも獣相手に優位なのでーす! 壁には爪で穿ちながら近づいたでーす!」
よく見ると、壁の至る所に爪で開けた穴が出来ている。
「そ、それより、影に攻撃が当たったのかい?」
「んん~、感触はそんなじゃないですけど、あったですー!」
「……水魔法は効いてなかったけど、物理攻撃は有効なのか」
「どうするですー?」




