125.ゼースヒル洞窟・属性石広場 2
「ほえ? エンジさん、地震なんてどこで起きてるんです?」
嘘だろ……まさか彼女は、揺れにすら気付いていないのか。
リウやレッテ、ルールイまでもが揺れによって立てなくなっているというのに。
「にぁぁぁぁ!! エンジさま、怖いにぁ怖いにぁぁ」
「リウ、俺に掴まって!」
「それならわたくしは、アルジさまの腕に絡ませて頂きますわ」
「ヌシさまの足にくっつくでーす!」
「こ、こら……」
平然と立ち尽くすレシスをのぞいて、リウたちは俺の体にしがみつく。
彼女たちにこうもくっつかれると、身動きが取れなくなりそうだ。
「あ~!! みんなでエンジさんに甘えるなんて、ズルいじゃないですか!! わたしもエンジさんの所に行きますからね~!」
そう言うと、レシスは俺たちのいる所に近づこうと向かって来る。
するとどういうわけか、さらに揺れが大きくなって来た。
「怖いにぅぅぅ!」
まさかと思うが、レシスが震源なのでは。
光の属性石を手にした彼女といえば、以前は”絶対防御”を有していた。
そうなると考えられるのは、光の属性石に気に入られた彼女を守ろうとして、揺れを起こしている。
そんな気がして来た。
「レ、レシス! その石を地面に投げてくれないかな?」
「え、石ですか?」
「頼むよ」
「エンジさんがそういうなら、てぇいやっ!!」
「げっ!? な、何で投げる……」
属性石の効果が分かっていないレシスは、手にしていた石を迷いも無くその辺に投げてしまった。
光の属性石とされる石は、壁にぶつかって地面に落ちた。
レシスの手から離れたと同時に、俺たちを襲っていた揺れがピタリとおさまる。
「にぁ~……もう安心にぁ」
「全くでーす!」
「アルジさま、揺れは一体何だったのかしら?」
「うう~ん……少し嫌な予感がするんだけど、ルールイはどうかな?」
「そ、そうですわね。ここでアルジさまを危ない目に遭わせたくありませんけれど、本当に光の属性石なのか、壁に触れてみてはいかがかしら?」
「そうだね、それが手っ取り早いか」
彼女たちは俺を守ろうとしている。
それでも触れただけでコピーが出来る上、性質をも探ることが出来るのは俺だけの能力。
危険は承知で触れてみるしか無さそうだ。
「エンジさん、戻りましたよ~! そういうわけですので、わたしもくっつかせていただ……あれっ!?」
レシスが戻って来たと同じくらいに、彼女が投げた石がぶつかった壁に触れてみた。
すると、壁に埋め込まれていた光の属性石から、輝きが全て失っていくように見える。
『こ、これは――!?』
驚くよりも先に、黒い影の獣が俺の周りを取り囲み始めた。
『エンジさまっ!! 防御魔法を使ってにぁ!!』
『むぅっ!?』




