124.ゼースヒル洞窟・属性石広場 1
「エンジさま、こっちこっちにぁ~!」
「あぁ、今行くよ!」
広い部屋を見つけたリウが、張り切りながら俺たちを誘導してくれている。
リウだけが身軽なのに対し、レシスとレッテは未だに苦しそうにしていて、ルールイと俺とで彼女たちを引っぱっている状態だ。
「ウ~ウ~ウウウ~……ゲプゥ……はぁひぃ」
「ヌシさま~申し訳ございませんです~ウグゥゥ」
試練の扉を開くための仕掛けとはいえ、いくら何でも食べすぎだ。
これに懲りて、特にレシスの食欲が収まってくれればいいのだが……。
「呆れますわね。人間というのはもっと賢い生物かと思っていましたのに、レシスを見るとわたくしの認識があっさりと崩れ落ちそうですわ」
「レシスはあれだよ、えっと……試練の扉を開けたい思いが強かったんだよ。だから人間全てが、彼女の姿じゃないってことで――」
「そんなの、分かっていますわよ! アルジさまは少なくともそうじゃないと見ていますもの」
「そ、そうだよね、はは……」
レシスの食べっぷりは誰もが驚いた。
彼女の本来の姿はまだまだ不明だが、きっと頑張りすぎているのだろう。
「ほえっ? エンジさん、私を見つめていますか!?」
「気のせいだよ」
「ゲェプゥゥ……まだですかまだですか~あひぃ」
「広い空間はもうすぐだから、ゆっくりでいいから歩いて」
「はいぃぃ」
今の姿をラフナンに見せたら幻滅するのだろうか……いや、レシスが好きな彼なら全て許せそうだ。
『エンジさま~ピカピカ光って綺麗にぅぅ! 早く来るにぁ~』
息を切らせる二人を気にしていたら、俺を呼ぶリウの声が近くなった。
どうやら広い部屋へは、もうすぐらしい。
◇◇
「こ、これは! 宝石……いえ、属性石ですの!?」
「間違いないね。ここにこれだけの光がひしめき合っているってことは、やはり普通の洞窟なんかじゃない。属性獣はいないだろうけど……」
「エンジさま、光のピカピカを拾うにぁ?」
「……それは危険な気がするんだよな。とにかく足下に落ちている石も、うかつに拾わないようにしないと!」
――と、いち早くレシスに注意をするつもりだったが、彼女はまだしゃがむこともままならないはず。
いつでもどこでも問題を起こすのがレシスだ。
しかし、今回は大丈夫だろう。
……などと思い込んでいたのは、やっぱり間違いだった。
「エンジさんっ、これですよ! これこれ!!」
「……ん? レ、レシス……一応聞くけど、その石はどこで拾った?」
「いやぁ~、ようやくお腹がへこんでくれたので、しゃがんで息を整えたら目の前に落ちてまして~」
「あああ……」
「アルジさま。だ、大丈夫ですわよね……? 何も起きませんわよね?」
「分からない。一つ言えるのは、光の属性石は手にしただけでいいことが起きないってことくらい。何も起きないことを祈るしか……」
少し目を離したら、やはりやってくれた。
もちろん、光の属性石が散りばめられたこの部屋で、良くないことが起きるとは考えられないが。
「にぅぅ……エンジさま、何かおかしいにぁ」
「む? リウ?」
「ゆ、揺れている気がするのにぁ」
「揺れ……ほ、本当だ。微弱ではあるけど、確かに」
「ヌ、ヌシさま……レッテは地震嫌いです~!! アグウゥゥ……」
「ほえっ? 地震ですか? どこどこ!?」
光の属性石の部屋で何かが出て来るか、それとも……。
仕掛け部屋で悩むよりはましだが、早いところ外に出たいものだ。




