123.閑話:ほめられたがりのリウ
ゼースヒルの洞窟に入ってからしばらく経つ。
ここに入るまでは、人工的な試練部屋や面倒な仕掛けがあるとは、想像もしていなかった。
そんな中、誰よりも努力をしている彼女の動きに感心と感謝を寄せつつある。
出会った頃はまだ、子猫のような感じに思えていた彼女。
それが今では、常に前を歩き誰よりも前向きに進んでくれている。
「にぅ! エンジさま、広いお部屋に出れるにぁん!」
「さすがリウ! レシスたちがまともに動けるようになるまでにかなり時間がかかりそうだから、それまでリウだけに頼ることになるけど、いいかい?」
「にぅにぅ! エンジさまのお願いなら喜んでするにぁ~」
「うんうん」
「でもでもエンジさま、それなら今のうちにして欲しいことがあるにぁ」
「うん?」
他の彼女たちと比べても、リウは滅多に願いを言ってくることがない。
レシスたちの身動きが取れない今だからなのか、リウは俺の顔を一生懸命に見つめて来ている。
これは話を聞いてあげねば。
「何かな?」
「にぅぅ……エンジさまに甘えたいにぁ。リウ、時々寂しく感じることがあるにぁ。それでもリウ、自分に厳しく言い聞かせているにぁ……」
しっかり者で、パーティーの中ではがんばり屋さんだとばかり思っていた。
でもそうではなく、自分に言い聞かせていたようだ。
そういうことなら、今のうちに甘やかそう。
「よし、それじゃあリウ。おいで」
「にぅ!」
俺の言葉に、リウは勢いよく飛び込んできた。
普段からほとんど猫耳を触ったりすることがなかったが、今こそ撫でまくってあげよう。
「にぁん~にぁぅぅ~エンジさまの手が触れてきてるにぁ~」
ゴロゴロと喉を鳴らし、モフモフとしたリウの耳や顔が何度も胸元に近付いて来る。
むぅ……これは至福。
やはり猫耳のモフモフは最強かもしれない。
◇◇
しばらくして、俺よりも先にリウから離れた。
そして、
「エンジさま大好きにぁ~! リウ、もっと頑張るにぅ!」
「うん、その意気だよ」
「もっともっとお役に立てて見せますにぁん!」
そう言うと、リウは広い部屋からさらに先の気配を探る為か、耳をピンと立たせた。
そのまま尻尾も警戒の姿勢に移行して、サーチを始めた。
「エンジさま、リウ頑張るにぅ!」




