121.ゼースヒルの試練部屋 1-3
ヒメマスの香草焼 ちょっと塩が強い 魔力が回復する コピー不可
怪鳥肉のソテー やや濃い味 物理攻撃上昇 一時的に体躯面積が増加する コピー不可
野牛の姿焼き 角付き 物理耐性上昇 回復効果上昇 コピー不可
大麦パン こんがり焼かれている 毒耐性 火傷耐性 コピー不可
こんなところか。
コピーが出来ないのは当然だとしても、料理に効果が含まれているのが意外だ。
ルールイの言う通り、確かに本物のようだ。
レシスが食べたそうに我慢しているが、果たしてこれらを口にさせていいかどうか。
「エ、エンジさんん~、も、もういいですか~」
「う、うん」
「いっただっきま~す!!」
何という勢いだ。レシスってこんなに食べる子だったのか。
レシスに負けじとレッテも食べまくっているが、料理の量が減っているようには見えない。
「アルジさま。何も問題は無かったのです?」
「コピー不可ではあったけど、料理に何か問題があるような感じでは無かったね」
「……ですけれど、何か臭いますわね」
「にぁ? お魚もお肉からもニオイは感じないにぅ」
「そういう意味では無くってよ? そうではなくて……」
ルールイは魔力に加えて、危険察知能力が高い。
もしかして、この料理の数々も洞窟が仕掛けた何かに関係しているのか。
「リウ、ルールイの言う臭うっていうのはね、怪しいって意味だよ」
「そうにぁんだ? でも、ニオイが無いのは変な気がするにぅ」
「匂わないって、彼女たちが食べている料理からかい?」
「そうだにぁ! リウ、どんなに鼻をフンフンしてもニオイが届いて来ないにぅ」
リウの鼻が全く利かないということなんだろうか。
でも言われてみれば、料理を探った時に匂いそのものを感じることが無かった。
しかし毒性は感じられないし、何かが出てくるでも無い。
レシスとレッテは勢いが衰えることなく食べまくっているし、どこも怪しい所なんて。
そもそもこの部屋には料理が山盛りに並んでいるだけで、仕掛けそのものが見当たらない。
そうだとすると、この料理自体に意味を持たせているということになるが……。
『ひっひええええええ!? エ、エンジさんんん、お助け~』
『ヌシさまあああああ!! く、くるぢいですううう』
半ば呆れた感じで二人を見守っていた、まさにその時だった。
レシスは信じられないくらいの体型に変化しているし、レッテも苦しそうにしている。
「こ、これは――!? レシス、レッテ、大丈夫?」
「にぁぁ!? レシスがおっきいにぁぁぁ!!」
「アルジさま、やはりこれは……」
ルールイが気になっていたことが起きてしまった。
食べまくっていれば腹は膨れるだろうけど、二人の変化は尋常じゃない。
そう思っていたら、料理が消えて無くなっていることに気付く。
その代わりに現れたのは、試練の石板だった。
「あぁ、やはり……アルジさま、ここをお読みくださいませ」
「どれどれ……この部屋を脱するには、600kgの重りが必要となる……か。全員の体重を合わせてどれくらいになるんだろう」
「リウ、軽いにぁ」
「わ、わたくしも身軽ですわよ? そうでなければ空なんて飛べませんもの!」
「そ、そうだね。そうすると……」
みんなでレシスたちを見つめていると、レシスはかなり悲しそうな表情で睨んで来た。
「な、何ですか!? エンジさんまで!! わ、わたしは決して重くなんか……」
「レッテだって同じでーす! ううう、苦しいですー」
さすがに個々の体重を調べるわけには行かないし、レシスとレッテはその場から動けそうにないしどうすればいいんだろうか。




