120.ゼースヒルの試練部屋 1-2
「リウ! あんまりハリキリすぎても危ないよ?」
「大丈夫にぁ! リウ、エンジさまと同じくらいのサーチスキルがあるにぅ。任せて欲しいにぁ」
一つ目の試練部屋をクリアした俺たちは、リウを先頭に進み出した。
ゼースヒルの洞窟に来たのは、古代書とレシスの杖の手がかりを見つける目的で来ただけだ。
それがまさか仕掛けがある部屋がいくつも存在しているなんて、想像も出来ないことだった。
この洞窟の探索が目的では無いだけに、さっさと外に脱出したいところだが……。
「いや~ご飯楽しみですよ~! ねぇ、ルールイさん」
「はぁぁ……。そうですわね、と言っておきますわ。本当に、アルジさまのご苦労が身に沁みますわ」
「レッテも食べるでーす! レシスには負けられないのでーす」
「……」
当初のレシスは、こんな子じゃなかったと記憶している。
勇者だったラフナンが大人しくなるまでは、きちんとした回復士だと信じていたのに……。
こんな変な……いや、天然でおかしな子に変わるなんて。
どれが本当の姿なのかそれを求めるつもりは無いが、本当にユニークな女性だ。
ご飯ご飯と言い続けているレシスのことをこの時までは、冗談半分に受け流していた。
だが役立ちにつながることになるとは、本人を含めて想像だにしていなかった。
「エンジさま、次の部屋が見えて来たにぁ~」
「……うん? 部屋か。また何かの仕掛けがあるってことか。面倒だな……」
「おかしいことですわね。ですけれど、後戻りが出来ない構造のような気もしますわ。ここは仕掛けを解いて行くしかないと思いますわ」
「それしかないか~」
魔法や何かをコピーするのは得意なのに、謎解きだとか仕掛けをクリアするのは正直言って、不得意すぎる。
俺のパーティーでは、ルールイが得意そうではあるが……。
「な、何か熱い視線を感じましたわ! アルジさま、もしや……」
「え……今ので分かったの?」
「わたくしの胸に飛び込みたい! そうなのですね?」
「ごめん、全然違うかな」
「……冗談ですわよ? アルジさまのご心労の原因は、大体あの娘ですもの。分かっていますわ」
「そ、そうか。そういうわけだから、頼ってもいいかな?」
「わたくしが解ける範囲内であれば……ですけれど」
「うん、頼むよ!」
そうこうしているうちに、次の空間に入った。
リウの言う通りまた違う部屋になっていて、さっきとは違う雰囲気だ。
椅子も机も無いが、何故かあるのは料理の品々だった。
どう見ても人工的、もしくは誰かのいたずら。
「幻なのか?」
「いいえ、これは本物ですわね。毒も無ければ、罠でも無さそうですわ。しかし不思議な空間であることには変わりないかと」
「じゅるじゅるり……エ、エンジさんっ!! こ、これ、食べていいんですよね!?」
「待て、レシス! まずはコピーして確かめるから待ってくれ」
「ほえ? お料理をコピーするんですか? そ、そうなると無限に食べられ……ま、待ちきれません!!」
幻でも何でも構わないが、この料理を食べることで次に行けるとすれば、結構重要なんじゃないか。
まずは肉料理や魚料理に手をかざして、コピーの結果を見定めてからだな。
「にぅぅ!? よ、よだれがバッチいにぁぁぁ!!」
「レシス、どぅどぅ……!」
「まだですか、まだですかぁ!!」
「今やるから……」




