114.再起の魔法士、古代書の手がかりを探してみる
レシスの問題をずっと抱えることになるのを覚悟して、花畑を後にした。
リウは尻尾をフリフリしながら、張り切って前を歩いている。
「にぁ~ん、にぁんにぁん!」
「リウ?」
「エンジさまと一緒にぁ~」
「うん。そうだね」
嬉しさを隠さないリウは、やはり素直で可愛い。
一方のレシスは、またしてもどこかの不思議な世界へ旅立ちを始めているようだ。
「えへっ、えへへへ! エンジさんが~えへっ」
「……」
こんな子では無かった……そう思っているのは、彼女とそれなりに一緒にいた彼もそうだろう。
「エンジさん。もう行かれるのですか?」
「あぁ、うん。ラフナンは上手くやって行けそうかな?」
「やります。僕は迷惑しかかけてないので、エンジさんの為にもこの国を……」
「あ、そうだ。ラフナン、君に頼みがある」
「何です? 僕にできることなら何でも協力します。レシスのことも、エンジさんじゃなければきっと頼めないはずですから……」
これは中々重症だな。レシスのことをもっと違う感じで想っていたのだろうが……。
「ラフナンには確かに、俺の留守の間に国を見てもらいたいと思っている。でもその前に、少しだけ同行をお願いしたい」
「えっ? 同行ですか? ど、どこへ?」
「……古代書があった洞窟へ」
「――! あそこにですか? し、しかしあそこに行けば、僕は……」
「また気が狂うかもしれないと?」
「はい……僕は古代書を無理やり魔物から奪いました。レシスの杖は彼女が拾っただけですが。だから変になり始めたのは、言い訳にも何にもならないんです」
よほどの目に遭ったということだ。
アースキンの話では古代書を手にするまでは、とても穏やかな青年だったと聞いている。
もちろん、古代書を手に取っただけで変になったわけでは無さそうだが。
魔物が古代書を守っていた。その魔物はすでに倒されている。
そうなると気になるのは、
「洞窟そのものに呪いがかけられている?」
「それも僕には分からないんです。ただ、少なくとも僕はもちろんのこと、仲間たちも高レベルの域に達していませんでした。そうなるとあの洞窟自体、レベルが高くなくても行ける場所という認識で、間違いではないのです。今となっては分からないことばかりです」
無意識のうちに、洞窟から逃げ出して来たということになる。
魔物の呪いか、あるいは古代書を手にした時からラフナンを侵食していたか。
レシスだけはどういうわけか、変な感じになっていない。
元からと言ってはいけないが、その時から彼女にはすでに絶対防御というスキルがあったとも考えにくいし、よく分からないことだらけだ。
帰りのこともあるし、アースキンも同行させるか。
それとも……。
「そういえば、あの時の仲間はどこへ?」
「彼らですか? 彼らは故郷へ帰ると言って、僕から離れたはずです。途中までは確かについて来てくれていましたが、その後の足取りは不明です」
リウの尻尾を掴んだりしてはいたが、俺の麻痺や毒やらをまともに受けた人たちだ。
異常なほどしつこく行動していたラフナンに対し、仲間の彼らは普通の状態にも見えた。
出来ることなら、彼らにも話を聞いてみたいものだが。
『エンジ! ここにいたか! ルールイとレッテたちが待ちくたびれているぞ。ラフナンと深刻そうな顔をして何を話しているのだ?』
丁度いいところにアースキンが来たな。
かつての勇者であるラフナンと、一応賢者のアースキンとで協力をしてもらうとするか。




