113.再起の魔法士、最強への再出発をする
二人の驚きようが半端ないが、一体どこから呼び寄せたのか。
ルールイやアースキンも一緒だったと思うが、リウとレシスだけだ。
レシスといえば、ラフナンに想いを伝えただろうか。
その答えが上手く行っていることを願うが、そうなると愉快なレシスとは旅が出来なくなる。
「ザーリン……、どうすればいいんだ?」
「存分に話し合っていい。コウモリ女と狼は、待たせておくから」
「そうか、確実なんだな」
「ネコはともかく、その人間とはよく話をすること。話が済んだら、山を下りていい。フェンダー、強くなってくださいね」
「――あぁ。そうするよ、ザーリン」
最初こそは素っ気なかったザーリンではあったが、もう俺のことを蔑むといった言動はして来ない。
彼女が見る導きの先は、きっと確かなものなんだろう。
「にぁ~! エンジさまにぁ~」
「えーと、お帰り……かな?」
「ただいまにぁ~! エンジさまこそ、元気にお帰りなさいにぁ!」
「おぉっと……!」
「にぅぅ~」
何の迷いも無く、リウは俺に抱きついて来た。
モフモフなネコ耳が、俺の頬をくすぐる。耳がピクピクと動いて、かなり嬉しそうだ。
「会いたかったにぁ! エンジさまが必要なのにぁ~!! リウ、お役に立ちますにぅ」
「俺もだよ。もちろん、リウには来てもらうよ。俺はリウがいないと寂しいんだ」
「にぅ!」
物理攻撃や、危険察知、それでいて冷静な判断力。
そして時々大人になるリウは、俺にとって必要不可欠な存在になった。
このコに出会いを果たしていなければ、俺は駄目なままだったな。
そして、
「えーとえと、何と言いましょうか~……こ、こんにちは。エンジさんっ! 本日はお天気にも恵まれ~」
「はははっ! 君は変わらないな。レシス、俺に言いたいことがあるよね?」
「そ、それは~そのぅ」
何やらもじもじしているが、やはりラフナンと仲直りをしてさらには、告白も果たしたのだろう。
顔を見れば分かるくらい、スッキリさっぱりとした顔つきだ。
「いや、言わなくても分かるよ。顔に書いてるからね」
「えぇぇぇっ!? か、顔に……!? おかしいですよ、それは~。顔にどうやって書くって言うんですか~?」
「……うん、俺が悪かった」
「ほえ?」
レシスは一見賢い子だ。しかし、何かがおかしい気がする。
性格が愉快すぎるというのが、何とも惜しいと言わざるを得ない。
「んんっ、それで、告白は上手く行った?」
「ど、どうしてそれを知っているんですか? まさか、眠っている間に見ていたとか!?」
「……そんなことは出来ないよ。でも、君はラフナンが気になっていただろ? だから会いに行かせたんだけど、その顔を見れば沈んでいないしそうなのかなと思ってね」
動揺を見せているが、レシスは落ち着きを取り戻して、俺の顔をジッと見つめて来る。
きっと答えが出たのだろうな。
「エンジさんんっ!」
「うん」
「わたしは忘れられませんよっ!」
「……うん? 何が?」
「決まっているじゃないですか~! やだなぁ~エンジさん。エンジさんは、わたしを離すまいと印をつけてくれたじゃないですか。それが決め手でして、ラフナンさんには諦めてもらいました!」
「――は? 印が何だって? というか、ラフナンには何と?」
「エンジさんに全てを見られた挙句、奪われてしまったのです! と言ったら、彼も分かってくれまして。そういうことでして、わたしもエンジさんについて行きますよ」
「あぁぁ~……はぁ……」
あらぬ誤解をさせたうえに、諦めさせてしまったわけか。
印というのも、どうせ指を噛んだことなんだろう。
レシスは恐ろしく天然であることを、再認識。
天然に加えて、悪気の無い告白を実行してしまうのか。
まぁいい。レシスの告白次第では……などと考えていた俺が甘かった。
これで気にすることなく、最後の旅に立つことが出来る。
次にこの国に帰って来るときは、最強になった状態でだ。
「エンジさま、行くにぁ?」
「ほよ? ルールイさんたちって、先回りして待っている感じですか?」
「……うん、行こう。リウもレシスも俺には必要以上だ。頼むぞ!」
「にぅぅぅ!!」
「おっおぉぉぉ……これが武者震いというやつですね!?」
絶対違うと思うが……。
さて、これで揃ったな。




