107.ネコと回復士 ルナリア王国と人助け編 後編
「――そういう訳で、我ら騎士では手出し出来ず……お引き受け出来ませんか?」
「ふんふん? シェラ、今のはどういう意味にぁ?」
「え、えとえと……危険ではあるものの、ネコ族であれば崖下に難なく行けると。そういうことですよね?」
「その通りです。わたくしたちは聖堂を守護する騎士。ネコ族と同等の力を有してはいますが、いま王国を離れるわけには行かないのです。勝手な願いではありますが、どうか……」
「リウ、嫌じゃないにぁ! エンジさまが訪れた王国で、助け合いが出来ればと思って来たにぅ。すぐに行くにぁ! そこはどこにあるのかにぁ?」
リウ、レシスのふたりは聖堂騎士ローザの頼みを聞き入れ、王国近くの谷底に向かうことにした。
魔物の類いは出ないものの、自然が生んだ気象変化が行き先を阻む。
直接ふたりには関係ないことではあったが、人助けを兼ねつつ万能という響きにレシスは胸を躍らせた。
「あわわわ……ほ、本当にここ、下りて行くの?」
「簡単にぁ」
「ひゃぅっはぅぅっ、リウちゃん。どうしよう……」
「にぁ?」
「こ、腰が抜けて動けない~……」
「シェラは冒険者じゃなかったのかにぁ? こんな所も経験があったはずにぁ」
「わたし、危険な所は置いてけぼり……じゃなくて、待ってることが多かったから」
「しょうがないにぁ。シェラはリウにおぶって行くしかないにぁ」
「あぅぅ」
大げさに暴れる前に気絶したレシスをおぶりながら、リウは難なく谷底へ到達。
そこに生えていた万能草を数本ちぎり、すぐにその場を離れる。
戻り際に突風、濃霧など自然がリウを阻むも、リウには関係ないものだった。
『えっ? もう行かれたのですか!? あ、ありがとうございました! このお礼は必ず……』
ローザ率いる聖堂騎士たちは何度も頭を下げて、お礼をした。
それに対しリウは、
「それなら、エンジさまの力となって欲しいにぅ。フェルゼンという国に、エンジさまがいるにぁ!」
「フェルゼン……ではやはり、賢者が降伏した方の国のネコ族だったのですね! 必ずや!」
「にぅ!」
あっという間にお願いを解決したリウは、清々しく王国を後にする。
おぶったまま目を覚まさないレシスを忘れたまま、次なる場所へ向かうことにした。
◇◇
「ううむ、一体あのふたりはどこへ行ったというのだ? エンジがいないとこうも苦戦するものなのだな」
「アースキン、エンジさんは相当強くなったのか?」
「うむ! あの方は魔法士であり、自分の国と共にたくましくなられている。俺の助けなどいらぬくらいにな! ラフナンよ、エンジ殿に尽くし精を出せ。お前がしたことなど、すでに気にしてもおらぬ」
「……そうだな。俺はあの魔法兵に惑わされすぎた。元勇者ではあるけど、もう一度やり直すよ」
賢者アースキン、元勇者ラフナンは揃ってリウたちの行方を追っていた。
彼らの少し後方をルールイが様子を窺いながらついている。
「全く、天然娘もネコも勝手に行動しすぎですわ……。それにしても、元勇者の人間は本当に大丈夫なのかしら……」
不安を感じながら、賢者、元勇者と共にリウたちの後を追うルールイだった。




