103.妖精の癒しと諭し
「――ヌ? 待て、ご主人様はまだ寝ているのじゃ。如何に妖精でも……」
「白狼のルオ、後は下がっていい。下がって、賢者の傍に向かって」
「賢者の? 例の人間が来てから進んでいないのじゃな? よかろう、妖精。ご主人様は眠っている。静かにするのじゃ」
白狼ルオを賢者の所に行かせた妖精ザーリンは、その場に光の守りを展開。
そして。
「エンジ・フェンダー、油断しないで……と言ったはず。片腕を奪われて意識を落とすなんて、一体今まで何を覚えて来た? あの人間、レシス。あれに深く関われば何か起きる……そう伝えていた。それが起きた。いい加減、成長するべき」
かなり長い時間と期間、眠っていた気がする。
暗闇の中、聞こえて来る声はルオだけだった。
だが今聞こえて来るのは、久しく声を聞いていない彼女の声だ。
らしいと言えばらしいが、癒しと同時に説諭をずっと聞かされている気がする。
魔法だけをコピーしまくり、ラーウス魔所で得た魔法でかなりの成長を遂げた。
そう思っていたところに、油断の失態。
彼女が怒るのも無理はないか。
「ごめんな、ザーリン」
「――っ! 聞こえていたのなら、そのまま聞く!」
「そうするよ」
「ネコがあなたの成長の影響を受けた。だから、ネコがやられることはない。あなたも同じ。それが何故やられたのか、分かっている?」
レシスに……と思ったが、彼女のせいではなく俺の油断だ。
これもザーリンにはお見通しらしい。
「油断かな」
「そう。それがあなたの悪いところ。レシスの絶対防御が欲しい?」
「いや……」
「あったとしても、油断が生まれた。自覚ある?」
「まぁ、あるね。敵対勢力の存在を気にしていなかった俺の油断だ。言い訳も無いよ」
「エンジ・フェンダーは、しばらくあなたの国でとどまる。腕は回復してから――」
「取り戻しに行く」
「違う。あなたのコピーで腕を作る。それが出来るのが、エンジ・フェンダー」
「腕をコピー? え、どうやって……」
最近、魔法ばかりをコピーしまくっていたから忘れていたが、
「ネコを救った時、あなたは何をコピーした?」
「そうか……そうだったな」
「そういうことだから。もう少し、眠る。フェンダー、おかえりなさい」
「ただいま、ザーリン。ただいま、俺の国……」
魔法だけに特化しすぎていた。
自分の国に戻って来られたのも、原点に戻るべきを思い出すためか。
もう少し眠ろう。
そして、目が覚めてあいつがまだいるのなら、俺が話を――




