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毒を減らして

クローン生物の製造はマンションのベランダでも可能

作者: 黒野千年

実は、今、うちのベランダではクローンを培養している(笑)。


クローンの定義をウェッブ上の辞書で求めたところ「 一個の細胞あるいは個体から無性生殖によって増えた細胞群あるいは個体群。全く同一の遺伝子をもつ。栄養系。分枝系。クロン」(大辞林)だという。


実のところ、世の中に案外にクローンはあふれている。たとえば、桜として一般的な「ソメイヨシノ」。これは人為的な交配の結果として生まれてきた種であり、美しい花を咲かせるが、実を結ぶことはまずない。では、どのように増やしているかというと、園芸業者は一般的には接ぎ木で増やす。もともとが「エドヒガン」と「オオシマザクラ」の交雑種がルーツで、今の園芸業者は「オオシマザクラ」を台木とし、そこに「ソメイヨシノ」の枝を差すというやり方で「接ぎ」、苗木に育てる。即興的に増やしたいのなら、適当な枝をカットし、植木鉢に「挿し木」を行い、枝から根が伸び、さらに幹になった苗木に育て、地面に植え替える。


いずれにしても、卵細胞と精子との結合する自然交配(有性生殖)の結果である種子から増えるのではない。今は生えている「ソメイヨシノ」の枝を増殖させていくのであり、古典的なやりかたではあるが、クローン培養なのだ。


スーパーで売っている身近な食べ物もある。たとえば、「ジャガイモ」だ。


スーパーマーケットで売っているジャガイモは、実ではない。地下茎の一部である。


そっくり食べることもできるが、これは「種芋」にもできる。普通に家で保存していても、うっかりと芽がでることがあるだろう。それは本当の種子ではないものの、そこから根と地上の茎へとつながる地下茎が伸びはじめ、あたかも種子のような状況になってしまうのだ。だが、本当の種子ではない=有性生殖ではないから、これを植えて育てることができれば、立派にクローン培養である。草が生えてしまうようなことではあるが、大マジである。


実際、うちのベランダで行っているクローン培養はこれだww


以前に何かの漫画で呼んだのだ。普通、ジャガイモは芽が出始めた種芋を数個にカットして、それを土に埋めて水やりをしておけば、ニョキニョキ生えてくる。しかもそれどころではない。芽の部分だけカットして、家庭菜園の一角に捨てて置いたら、見事に根付いてしまうほどで、種芋なんか要らんやんという生命力の旺盛さらしい。


で、一日、カレーに使い、厚めに剥いたジャガイモの皮を、それにならって、プランターの土の上にならべ、さらに薄く園芸用の土をかぶせたのだ。あとは土が完全に乾ききらないように、水やりをしただけ。


そしたら2週間で、ニョキニョキと緑の茎が伸びて出て、葉が茂り始めた。種芋なんて上等なものではない。その辺のスーパーで買った、ジャガイモの皮のまあまあ大きめの破片が、立派に育っているのだ。


もともとジャガイモは生命力の強い植物である。南米のマヤとかアステカで作物としてかなり一般的に育てられていて、大航海時代にスペインの南米進出に逆行してヨーロッパに持ち帰られたらしい。らしいというのは、歴史的な経緯など分かっておらず、いつのまにかスペインに根付き、そこから徐々にヨーロッパ全体に広まり、1700~1800年代には爆発的に栽培されるようになり、ヨーロッパから飢餓を消しただの、世界4大作物の一つ(ほかは、ムギ、イネ、トウモロコシ)だのと言われるほどになった。


特に、アイルランドでの普及は目覚ましく、1740年ころにジャガイモが定着して1世紀後の1840年までに、アイルランドの人口が倍増したというほど、食糧生産を向上させたのである。


ただし、弱点もある。クローンだと遺伝子が画一的なわけで、特段に弱い病気や昆虫が表れると十把一絡げにやられてしまうことだ。アイルランドでも病害が起こり、続く1世紀でアイルランドの人口が半減するという「ジャガイモ飢饉」まで起こってしまった。もっとも、このころの人口減少には、アメリカへの移民もけっこう多く、おかげで合衆国にそれなりの規模のアイルランド人移民の勢力ができ上る原因になった(その中には、ジョン・F・ケネディの祖先もいたりする)。


ともあれ、かていさ……げふんげふん……クローン培養の実験を、家庭で試みたいのなら、ジャガイモは断然にオススメである。自分も、ただカットしたジャガイモをプランターに植えただけに過ぎない。それだけで、今や立派に緑の葉が生い茂るということになっており、基本的に水やりしかしていないのだから、育てやすさは大請け合いする。


ただ、これから病虫害はあり得るのだろうし、そうなった際の対策はまた手間暇がかかるのだろう。また、生命力が旺盛なだけに、地力も大きく奪うらしく、連作障害を回避するためには、土づくりにそれなりに気を使わねばならないらしいが、それは来年の課題にしておいて良さそうだ。


さて……クローン培養が上手くできて、食するに足るジャガイモが、プランター内にできるのか、どうなのか。これはまだ数カ月後の秋芋の収穫期を待つしかないようだ。


……何でこんなことを書き始めたのかというと、小説のなかで、劇的な収量の改善が見込め、人口爆発を吸収できるチート作物を考案したいと思ったわけなのだけど……なかなかジャガイモのチートぶりに勝て、なおかつリアリティのある設定は難しいww 特に日本だと、イネがムギを雑穀扱いにするチート主食だったりするので、なおさら難しいww まだ頭を悩ます日が続きそうだ。

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