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ダリルの正妃

アデレードはダリルに連れられて、ダリルの部屋に来ていた。

「まだ、仕事があるからここで待っていて。

好きにしていいから。」

そう言ってダリルは、アデレードにキスをしてきた。


「ダリル。」

キスの合間にアデレードが名を呼ぶ。

ダリルのキスは止まらない。

何度も何度も深いキスを繰り返す。

「会いたかった。」

ダリルの囁きも、息切れで朦朧(もうろう)としたアデレードには聞こえない。


気がつくと、ベッドに押し倒され背中のボタンが外されていた。

「ダリル。」

胸を隠そうとするアデレードの抵抗も、ダリルの力の前に意味がない。

「ダリル!」


アデレードの強い言葉にダリルが、アデレードの首筋から顔をあげた。

真っ赤になっているアデレードを見て、掴んでいたアデレードの両手を離す。

「悪かった。」

アデレードの身体を起こし、外した背中のボタンを留める。


「ダリル。」

アデレードがダリルの頬に手をやる。

「私も会いたかったけど、恐かった。」


「ごめん。」

そう言いながらも、ダリルはアデレードを抱きしめて離さない。

アデレードもこんなに想われて、嬉しいとしか表現できない。


「この2年、報告を受けていたが、君が生きているか心配でしかたなかった。

ずいぶん良くなった。綺麗であせってしまった。」

アデレードの身体はまだまだ細いが、少しずつ食べる事が出来るようになった。

「嘘。

全然、綺麗じゃないってわかっている。

もっと食べて肉を付けないと・・・」

「嘘じゃないよ。」

ダリルがアデレードに会いに行った時は、一番ひどい状態の時だった。


この人は、自分の醜い姿を知っている、そう思うとアデレードの中で片意地を張っていた何かが落ちた。

見栄を張る必要はない、今の自分でいいんだ。

クスッとアデレードが笑う。


「今は綺麗じゃない。

けれど、きっと綺麗になってみせるから!」

キラキラ瞳を輝かせてアデレードが言う。


そんなのわかっている、ダリルは思う。

ロクサーヌ姫は吟遊詩人に唄われる程の美貌で、余多(あまた)の結婚話がありながら、麗しい隣国の外交官と恋に落ちた。

アデレードは、その二人の子供なのだ。


「アデレード、君に話しておかねばならない。

僕の婚約者はいなくなったが、婚約者候補はたくさんいるんだ。」

アデレードは何も言わずに聞いている。

「国内の安定を得るために派閥の長の令嬢、他国との協定を得るために他国の王女。

アデレードを娶っても、国に利益は少ない。

それでも僕は、アデレードがいい。

出来るなら正妃にしたい。」

それは、出来なければ側妃や愛人にしたいと言っているのだ。


黙って聞いていたアデレードだが、クスクス笑い出した。

「私以上に、ダリルを必要としている女の子はいない。」

アデレードにとって、ダリルは生きる為に必要だ。


「だから、私がダリルの妻になる。」


ギラギラ、アデレードの瞳は獣のように強い輝きを放つ。

ダリルは身震いする程に惹きつけられる。


少し力を入れれば折れそうな細い腕をダリルの首に回して、アデレードはダリルを見上げる。

「絶対、誰にも譲らない。ダリルは私のものだから。」

フフフ、笑う瞳は優しい光。

強い瞳も優しい瞳も、ダリルを惹きつけてやまない。



アデレードはダリルに嫁がすには利が少ないが、他国にバーラン王国の姫として嫁がすと大きな利となる。

バーラン王家には、王太子のダリル、第2王子のマックス、男子しかいない。

アデレードは唯一の姫となる。

王が考えてないはずはなく、試されているのはアデレードだけでなく、ダリルもなのだ。

アデレードがダリルの正妃になれない時は、ダリルの側妃ではなく他国に嫁がされるだろう。


この細い身体が少女らしい身体になったら、どれほどの男を惹きつけるだろう、とダリルは思わずにいられない。

何より、この光に満ちた瞳。

誰もが望む姫になる予感。


「何ができるかわからないけど、進むしかないわ。

私は、他の令嬢より不利だってこと知っているけど、負けない。」

またダリルの知らない顔をアデレードがする。

「君から目を離したくない、ずっと見ていたいな。」


「ダリル、私、生理もまだなの。子供が産めるかも不安なの。」

アデレードは栄養が不足したせいで、成長が遅れている。

胸もわずかなふくらみしかない。

「子供ができなければ、次代はマックスか、マックスの子供という事でいいじゃないか。」

子供がいなくてもアデレードがいい、とダリルは言う。


「私もダリルがいい!」

抱きつくアデレードの感触を楽しんで、ダリルは執務に戻った。



ダリルの部屋にはたくさんの本があった。

その一つを手に取ると、アデレードはリビングのソファーに座って読み始めた。




しばらくすると、アリステアが王妃の使いで呼びに来た。

ドレスの仕立てのためだったが、ダリルがアデレードの首筋に跡を残した事が採寸の時に、皆に知られてしまった。

可哀想なぐらい、真っ赤になるアデレードであった。



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