(小話) ショーンの初恋
200万PVになり、びっくりしております。
とても嬉しくて、お礼に小話をUPいたします。
小話をUPする為に一時的に完結を解除しましたが、完結であります。
アデレードとショーンがバーラン王国に来て間もない頃の事件からです。
ショーンも親の愛情を失くした一人ですが、優しい青年に育ちました。
王家より生活費は受けているが、無駄遣いはできない。
僕はアデレードと違い、バーラン王家に縁はない。自分で暮らしていけるようにならなくてはならない。幸運にも、マックス王子と同じ学校に入学させてもらい、勉強を続けることができた。
王都にある商会で通訳のアルバイトを得られたことで、生活は少し楽になった。
学校の後、週に二日、書類の翻訳や通訳の仕事は夕食も出してもらえるのでありがたい。
その日も、商会に向かうべく王都の街を歩いていた時だ。
侍女を連れた美しい令嬢を見かけた。有名な雑貨屋から出て来た姿に目が惹かれる。
仕事があるから背を向け歩き出した時だ、小さな声が聞こえ慌てて振り返ると、令嬢がならず者に手を掴まれていた。
「お嬢様を放しなさい。」
侍女が声を出しているが、巻き込まれる事を嫌ってか、見ている人もいるのに誰も助けようとしない。
身体が考える前に動いた。
令嬢の手を掴んでいる男に殴りかかると、一瞬男がひるんだ。
「早く逃げるんだ。」
僕は令嬢を背に庇って言った。
「あなたは。」
令嬢が僕のことを気にしているらしい。
「僕はただの留学生です。僕が奴らの気を引いている間に逃げてください。」
殴った男が興奮したせいか、スタンブル語を叫んでいる。
バーラン王都でスタンブル語は珍しい、後で王太子殿下に報告をあげておこう、と思いながら男達の相手をする。
貴族の子息として武術の訓練は受けている、ギリアン殿下の相手をするぐらいの腕前はあった。
男達は僕が簡単にはやられないことで、諦めて逃げて行った。
令嬢は侍女と逃げれたらしい、とわかって安心する。
三日もしないうちに、サンベール公爵が娘を助けてくれたと、訪ねて来た。
名前を名乗らなかったのに、情報力には敬服する。
「当然のことをしただけです。お礼など必要ありません。」
固辞しても、公爵も引き下がらない。
美しい令嬢だった。公爵家の姫君だったのか。
僕には手の届かない令嬢だ。
まさか、アデレードが薔薇園で行方不明になり、発見した場所にその令嬢が一緒にいるとは思いもしなかった。
ダリル王太子殿下がアデレードを抱き上げ、休憩室に急ぐ後ろを、僕も令嬢を抱き上げ付いて行く。
体力のある警備兵が代わると言ったのだが、彼女を他の男に任せたくなかった。
ユリシア・サンベール公爵令嬢。
美しい姫君。
腕の中で、震えているのが伝わってくる。怖かったのだろう。
「ショーン、君に縁談があってね。」
王太子執務室に呼ばれた僕は、王太子殿下から、思いもしない言葉を聞かされた。
たくさんの方が読みに来てくださり、ありがとうございました。
嬉しい、ありがとう、この言葉で埋め尽くしたい程です。
violet




