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夜会の夜

ダリル王太子に手を取られ、大広間に表れたアデレードに人々の目が釘付けになった。

アデレードがバーラン王国に来て、3ヶ月が過ぎ、アデレードの披露の会が催された。



先程までは、サンベール公爵令嬢をエスコートするショーンに注目が集まっていた。

ユリシアの婚約がこの場で正式に紹介されたが、ユリシアが王太子妃候補を辞退したことを知る人はなく、驚きをもって迎え入れられた。



アデレードの身体は、細いがダリルから贈られたドレスを装い美しくさえあった。

パールピンクの薄い色合いのドレスは、細い身体を覆うようにレースで飾られている。

宝飾は真珠のみ、というシンプルだが、清楚で初々しい。


ミュゼイラ達がキリエ侯爵邸に来てから、徐々に回復していた体調は、食欲が出てくると一気に結果がでた。

ジェリーがいない、というのが大きかった。

3ヶ月で体重が増え、身長も伸びた。

醜く痩せ衰えたアデレードは、もういなかった。


王から、亡きロクサーヌ姫の娘であるアデレードがバーラン王家に引き取られた事が発表された。

アデレードの披露ということで、13歳のアデレードが夜の宴に出席しているが、本来、15歳が夜会のデビューである。

これからの2年間、王家の奥深く隠される姫というのが、誰にでもわかった。


まだまだ細いが、ロクサーヌ姫の娘である。

美しく育つであろうと、誰もが思う。

そして、そんな姫を15歳のデビューでエスコートする者が手にいれるだろう、という事も。


各国の大使達が目の色を変えるのがわかる。

諜報の者も多数入り込んでいるはずだ。

王家の血をひく姫君、ロクサーヌのように恋愛で嫁ぐことは珍しい。

アデレードは、細く儚げで美しく、若い。

王太子ダリルも婚約者がいないが、アデレードの方が争奪戦になるのは目に見えていた。


バーラン王国と調停、条約、協力と様々な形でアデレードの利用価値が高まる。

ロクサーヌ姫のように美しく育つであろうアデレード。

ダリルの心配していたことが、現実になろうとしている。


そんなダリルは、アデレードを王妃とユリシアに預けると、ショーンと他に数人の貴公子達と談話を始めた。

普段は領地にいる貴族も集まっている今日の夜会を、トルスト戦に向けて利用していたのだ。


王はサンベール公爵と、シャンパンを交わしている。

先だっての議会での報告のようだ。




「陛下!」

突如、男性の声が聞こえた。


人垣の中から、飛び出すように王の前に現れたのは、ボナペリ子爵。

「陛下、どうか我が娘の調べなおしを!

無実の罪をきせられるなどと、許せません。」


「どこが無実なのだ!?」

声をあげたのは、ダリル王太子。

「お前の娘は、僕の目の前でアデレードを襲わせていた。」

コツン、コツン、と足音を響かせてダリルが前に出る。


「ユリシア嬢とアデレードは拐われて、僕達が助けに駆け付けた時、お前の娘が男達に指示してナイフで襲わせていた。

目撃者はたくさんいるぞ。

フルーラ・ボナペリは、王家のバラ園で蜂の大群を放ち、その騒動に紛れて。ユリシア嬢とアデレードを拐った。

アデレードの捜索に、多くの騎士が動員され、それが目撃者だ。

フルーラ・ボナペリは現行犯で捕まった。」

「僕達も目撃者の一人だ。」

マックス、ショーンが前に出る。



ワイズマン師団長が言った王家の人間などいないと思っていた。

王家の人間に害をなして、家が処罰されないなど、ありえないからだ。

サンベール公爵と共謀して、ユリシアを王太子妃にする為に、邪魔なフルーラを無実の罪で処刑したと思っていた。

ボナペリ子爵が膝をつき、駆けつけた騎士達に連れられていった。



ダリルがアデレードを振り返ると、アデレードは立っていた。

背にユリシアと王妃を隠すように。

口元に笑みをうかべているが、瞳は燃えるような輝き。


ブルッ、ダリルの背中が震える。

惹きつけられる、ダリルは自覚すると笑いを飲み込んだ。

ふと、視線に気がつく。

アデレードを見つめる男の視線。


男もダリルに気がついた。

二人の視線が絡み合う。


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