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猫に転生しましたが、思ったよりも大変です。  作者: カナリア55
第二章

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27 誘拐

 護衛の男は、腹部を剣で刺されていた。

 服がジワジワと、赤い色に染まってゆく。

 剣を突き立てているのは、やはり護衛の男。二人ともディガル家に仕えている者だ。


(……どういう、事? だって、そんな……え? 本当に刺してるよね? なんで……)


 茫然と見つめている間に、刺された男は呻き声を上げながら地面に崩れ落ちた。


「あんたに恨みは無いが、見られたからには……な」

「おい、このガキはなんだ?」


 その声にハッとして、リリーは辺りを見渡した。


(知らない男がいる。誰なの? ああっ、ミッシェル君!)


 ガラの悪そうな髭面の男がミッシェルの胸ぐらを掴み、持ち上げている。

 ミッシェルは首が絞まってしまい、声が出せないらしい。苦しそうに足をバタバタさせている。


「絞め殺していいか?」

「駄目だ、そいつも連れてけ。そのガキはベルナルド伯爵の一人息子だ」 


 その言葉を聞いた髭男は目を見開いた。


「本当かよ! ハハッ、ついてるぜ。騎士団長の娘ともう一人の邪魔者の子供も手に入るなんてな。さぞかし礼金をはずんでくれるだろうよ」

「わかったら早く行け。そろそろ戻りが遅いと思われる頃だ」

「ああ」


 男は、ミッシェルを地面に放り出した。

 苦しそうに咳き込むミッシェルの口と鼻に布を当てると、すぐにぐったりとする。


「いっちょあがり、と」


 そう言うと男は、大きな麻袋に乱暴にミッシェルを入れた。もう一つある袋は既に膨らんでいるので、おそらくアンジェレッタが入っているのだろう。


(まずい! ミッシェル君が攫われる!)


「ニャーニャーニャーニャーニャーニャーニャーニャー!!」


 向こうまでは聞こえないだろうが、とにかく出来るだけ大きい声で鳴き続ける。


(少しでも時間を稼ごう。そうすれば誰か来るかもしれない)


「なんだよこの猫、うるせえなっ、行けっ、シッシッ!」

「伯爵の猫だ。子供を追いかけて来たのか。そんなの放っといてさっさと行け!」


(行かせるもんですか! ミッシェル君とアンジェちゃんを返して!)


 必死に足元を走り回り、邪魔をする。


「あーもう、うるせえっ!」 

 

 蹴られたが、咄嗟に横に跳んだのでかする程度で済んだ。子供が入った重い麻袋を運んでいることもあり、動きがあまり早くなかった事も幸いした。


(大丈夫、そんな痛くない! でもどうしよう。リュカ様に知らせた方がいい?)


 子供達を連れて行くのは一人だけで、護衛の男は残るらしい。自分で服を切ったり、汚したりしている。


(ということは、一人で運ぶから時間がかかるわよね? じゃあ戻って……)


「馬はどの辺にいる?」

「すぐそこだ。後はうまくやってくれよ」

「わかった。さあ、行け!」


(駄目! 馬がいるならリュカ様を呼びに行ってる間に見失っちゃう!)


 蹴られそうになりながらも男に纏わりついているうちに、馬が繋がれている場所に到着してしまった。

 その頃には、男はリリーを無視することに決めたらしい。

 馬に袋を乗せてしっかり括り付けると、自分もさっさと乗ってしまった。


(ああ駄目! 逃げられちゃう!)


 リリーは覚悟を決めてジャンプし、麻袋の上に飛び乗った。

 男はその振動に気づかなかったようで、そのまま馬を走らせて行く。


(落ちないように、声を出さないように、道を憶えるように……)


 リリーはそう自分に言い聞かせながら、麻袋に爪立てた。




「なんて事だ!!」


 苛立ったデューイの声が響く。


「……残念ながら、既に死んでいますね」


 地面に倒れた護衛の首筋に手を当て、脈を確認していたリュカが低い声で言う。


「も、もうしわけございませんっ!」


 震えながら土下座しているのは、後から向かわせた護衛の男だ。


「私の責任ですっ! どんな罰でも受けます!」

「お前のせいじゃない。それより落ち着いて、どんな状況だったか説明しろ!」


 デューイの大きな声に身体をビクッとさせ、男は慌てて顔を上げた。


「は、はいっ! 私がここへ来たときには、既に彼は刺されていて、お嬢様と坊ちゃまが馬車の中に押し込まれているところでした」

「馬車か……犯人は見たのか?」

「黒いフード付きのマントを着た男達でした。フードを被り口元を隠して目だけしか見えなく……御者と、私を切り付けてきた男と、少なくとも二人いました。馬車に乗り込もうとしましたが蹴り落とされ、馬車が走り出してしまったので、私は助けを呼びに……」

「……なるほど。馬車はどんな物で、どっちの方角へ行った?」

「小さいホロ付きの荷馬車です。南の方へ行きました」

「南……町の方か。すぐに追跡しろ。お前も行け、馬車を見たのはお前だけだからな」

「はっ! 必ず見つけます!」

「リュカ、お前この男、ジェイムスを連れて行け。俺は先に城へ行って陛下にこの事を話し、騎士団を動かす許可を頂く」

「わかりました。行くぞ」


 そう言って屋敷の方へ戻ろうとした所へ、マリアンヌとアレックスがやって来た。

 息を切らし、マリアンヌは震えている。


「だ、旦那様、アンジェは……」

「連れ去られたらしい。」

「ああっ、そんなっ! アンジェ!」


 両手で顔を覆い、マリアンヌが座り込む。


「ああアンジェ……ミッシェル君は!?」

「ミッシェルも一緒だ」

「そんな……こんな事が起こるなんて……」

「……俺のせいだ。俺がアンジェの事をからかったから。俺がすぐ追いかけなかったから。俺がっ!」


 アレックスが、泣き出す。


「ごめんなさい、ごめんなさい母上。父上、俺のせいです。……リュカ様、俺のせいでミッシェルが……」

「アレックス、君のせいじゃない。それに大丈夫、必ず救い出す。そうですよね、デューイ様」

「当たり前だ、近衛騎士団団長の名にかけて必ず! だからアレク泣くな。お前がしっかりして、母上についていてやるんだ」

「……わ、わかりました、父上」


 しゃくりあげながらも、アレックスは顔をあげ、両腕でゴシゴシ涙を拭いた。


「では、行くぞ」

 

 デューイが大股で屋敷の方へ歩き始め、リュカもそれに続いたが、


(……リリー……君はどこにいるんだ。無事なのか?)


 全員、必ず無事に取り戻すと心に誓い、リュカは歩調を速めた。 







大変な事になってしまった!

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