表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェイクソウル ~Relight Ver.  作者: 木浦 耕助
8/28

Interrupt(1)

 深夜のナースステーション。当直の二人の看護師は一仕事終えて、休憩がてら雑談に興じていた。

「ねえ、まゆ、聞いてくれる?」

「なにあんた、また男に振られたはなし? どうせ手術現場の話でもしたんでしょ」

「もうそれはしないわよ。ちゃんと付き合ってるってば。いまのところ完璧ね」

「さあ、どこまでもつか。あんたの浪費癖を直さないと結婚は無理よ」

「結婚? そんなこと今は考えてないもん」

千鶴(ちづる)はアラサーを甘く見過ぎ。余程の美人でもなけりゃ、チヤホヤされるのは二十代がせいぜいよ。今ので決めとかないと危ないわよ。何歳になった?」

「二十八。私は童顔だからまだまだ大丈夫だよ」

「童顔ねぇ……まあ、確かにそうだけど、急に来るのよ。三十過ぎると」

「何が来るの?」

「シワ、よ。笑うと特にヤバいわ、目尻のあたり」

「なにそれ怖い……いや、違うって。私が話しかったのはそうじゃなくて」

「そうじゃなくて?」

「最近遊んでたスマホゲームが突然、サービスを停止したのよ! エヴリプレイって知ってるでしょ」

「はあ? まあ一応知ってるけど」

「何でもできる面白いゲームだったのに。ショックだよ。私、そこでモテモテだったのよ」

「あんたの彼氏ってまさか、そのゲームの中にいるんじゃないわよね」

「馬鹿言わないでよ。そんなわけないじゃん。私はそんなサイコじゃないよ」

「じゃあスマホゲームごときでそんな深刻な顔しないでよ、くだらない」

 その時、巡回から一人の看護師が帰って来て、二人の横に座った。

「ねえ、まゆ、聞いてくれる?」

「なあに、あんたもスマホゲームの話?」

「なにそれ。違うわよ。もっと凄い話よ。古い映画だけど、まるで『レナードの朝』よ」

「んん、確かパーキンソン病の患者が意識を取り戻す映画でしょ?」

「そうそう、よく知ってるね。さすがまゆ」

「映画のことなら任せて。で、それがどうしたの」

「実はね、あの有名な『ロクゴーのルカ』さんが、昨日、一瞬意識を取り戻したらしいのよ」

「ええっ! もう半年以上も意識不明のままじゃないの」

「そうなんだけど、実際に立ち会った先生に聞いてみたら、一瞬だけ目を開けて、しかも、一言しゃべったんだって。そしてまた、意識が無くなったって」

「こわーい。それってけっこうホラー」

「そうなの、そして、その時言った言葉が『ミツ』だったらしいわ」

「なにそれ。意味わかんない」

「でしょ。これはミステリーよ」

「そんな事よりエヴリプレイもう一回遊べないかなぁ」

「その話はもういいわよ」

 その時、ナースコールが鳴った。また、同室の病人のイビキがうるさいとかそんな事だろう。

「仕事よ、千鶴!」

「はあい」

 二人は、立ち上がるとキビキビと病室に向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ