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第7話・冒険者たち

今回は冒険者視点です

 明かりのないダンジョン。しかし、そこにはわずかな明かりと4人の人影があった。




 正面から飛蝗の魔物が襲い掛かる。俺は半身になり攻撃をかわしながら、すれ違いざまに剣を振り切った。


「ギュアッ」


 剣が魔物の体を切り裂き、両断する。魔物の叫び声とともに体液をまき散らしながら魔物は倒れた。


「大したことないな」


 剣についた緑の体液を振り払いながら俺はそう呟いた。


「警戒しないとダメだよ。今までが、順調なだけかもしれないんだから」


 神官のリリが俺を注意する。


「ルセアの言う通りだ。グラン、気を抜きすぎだぞ」


 パーティリーダーのガイアスもルセアとともに俺をとがめた。


「うっさいな、分かってんよ」


「グランはすぐに調子に乗るよね」


 俺を鼻で笑うように馬鹿にする女はメルルだ。こいつとは何かとそりが合わず、口喧嘩が絶えない。


「メルル、お前には言われたくない」


「はあ?私がいつ調子に乗ったのよ」


「お前は四六時中、調子に乗ってんだろ」


「そんなわけないでしょ。ふざけんじゃないわよ」


「ふざけてねえよ」


 そんなこのパーティでのおきまりの会話をしながら、俺たちはダンジョンを進んでいた。

 

 俺たち4人はグリム王国で活動している冒険者だ。冒険者の収入は多いが、命の危険を伴う仕事だ。仕事は基本的に依頼をこなすことが多く、薬草集めから魔物退治まで様々だ。


 冒険者はその実力や経歴によって階級がつけられる。下からF級、E級と上がっていき、最上位はS級だ。


 C級になると一人前と言われ、大概の冒険者がこの位で一生を終える。そのため、B級以上の冒険者は数が少ないが実力を認められた精鋭だ。


 S級は世界に10人といない人類の切り札とも言える存在だ。その権威は並の貴族を上回り、国王に対しての面会も優先的に申し出ることができる。


 S級の冒険者が活動する国は、他国に対しての発言権が増すことすらあるほどその影響力は大きい。


 俺はそんなS級には遠く及ばないが、冒険者の中では上位のB級だ。パーティメンバーのリリとメルルも同じB級で、ガイアスはA級だ。俺たちは〈黒盾の一門〉という名前のパーティで活動している。


 俺、グランは茶髪で黒目の風貌で、孤児院の出だ。近所の引退した冒険者のおじさんに、幼少の頃から剣を教わっていた。冒険者になるための最低年齢である12歳から冒険者を始めて6年になる。半年前にB級に上がったが、いずれはS級になるのを目指している。パーティ内での役割は前衛で剣士を務めている。


 ルセアは金髪碧眼の小柄な女だ。年齢は13で冒険者を始めてたったの1年でB級までになった有望株だ。もともとは教会で働いていたが、孤児院などに寄付するため実入りの良い冒険者に転職したらしい。幼いがまるで聖女のような性格をしている。彼女は後衛で仲間の回復などを務める神官だ。


 メルルは黒髪で瞳の色は茶、平均的な肉つきの17歳の女だ。農家の出で口減らしのために家を出て、冒険者になったようだ。勝気な性格でよくケンカをする。幼少から狩りなどをして、弓を使いなれていたらしく4年ほどでB級にまで上がった。役割は中、後衛で弓などの飛び道具を使う射手だ。


 ガイアスは紺色の髪に蒼色の目で体型は大柄な男だ。最年長の28歳で俺たちのパーティ唯一のA級冒険者だ。S級とA級冒険者は二つ名を与えられるが、ガイアスは黒色の大楯を使うことから<黒盾>という名を与えられている。パーティのリーダーを務めており、タンクを務める重騎士だ。


 〈黒盾の一門〉はバランスのとれたパーティだ。前衛と後衛がバランスよく編成されており、臨機応変に戦える。


 パーティ名はガイアスの二つ名に因んでつけられており、このパーティが組まれたのもガイアスが中心となり勧誘したからに他ならない。


 パーティメンバー全員がガイアスに戦闘力の面でも、人徳の面でも多大な信頼を寄せている。A級冒険者としての実力を持ちながらも、驕らないその性格は好ましいものだ。


 俺たちは普段はグリム王国の西に位置する王国有数の都市であるバライアで活動をしていた。しかし、先日極秘裏に東にいる貴族から新しく発見されたというダンジョンの調査を依頼された。当初は不審に思ったが前金も高く、その後裏付けも取れた。


 本来ダンジョンは見つけ次第、その土地を治める王や皇帝に即座に報告するように決まっている。しかし、今回の依頼は極秘に行うように頼まれている。おそらく、発見した貴族はダンジョンを独り占めするつもりなのだろう。


 ダンジョンは発見されると、その土地の国の資源として扱われる。発見したものにも多少の恩赦は与えられるが、ダンジョンは国のものになる。しかし、貴族となれば自分の領地にダンジョンがあれば、それだけで領地は少なからず活性化して繫栄する。それを考えると依頼主の貴族はよほど強欲でがめついのだろう。


 ダンジョンからは様々な資源が取れる。代表的なものは魔物の素材だ。毛皮であったり、血肉であったり魔物によって様々だ。なかには、体に宝石をつけた魔物もいるくらいだ。


 他にもダンジョン内には特殊な武器や魔石がある。魔石とは魔力を浴び続けた鉱石が変質して結晶化したものだ。魔石は魔力をため込む性質があり、燃料にしたり見た目の美しさから宝石として扱われたりする。


 俺たち冒険者がダンジョンを攻略するのはこういったものを手に入れるためだ。しかし、ダンジョンは国の資源のため、冒険者がダンジョンから持ち帰ったものには少なくない値の税がかけられる。


 そんなダンジョンを独り占めできれば、税を払わずに資源を獲得できる。そうすれば利益はとてつもない額になる。しかし、もしそんなことが露見すれば、国の資源の私物化ということで関わったものは極刑は免れない。


 俺たちがそんな危ない依頼を受けたのは、単純に依頼料が良かったからだ。おそらく口止め料も含まれているのだろう。


 俺たちは最近パーティ専用の家を買ったため、懐がかなり寂しい。普段ならこんな危ない依頼は受けなかっただろうが、今はまとまった金銭が欲しい。そう思い依頼を受けたのだった。


 馬車で都市バライアから発見されたダンジョンの最寄りの街ルルイエに、2週間ほどかけて移動した。


 ついた当日は宿で泊まり、後日に依頼主の使いにダンジョンの位置を教えてもらった。その日のうちにダンジョンの調査を行うことにした。


 いざそのダンジョンに入ったが出てくる魔物はどれも虫系統の雑魚ばかり。未探検のダンジョンということで警戒していたが、そこまで危ないダンジョンではなさそうだ。


 こんな楽な依頼であれだけの報酬をもらえるなんて、かなり割の良い仕事だ。金になりそうなものは特に見つからず、独り占めしたところで大した利益にはなりそうにない。依頼主は落胆するだろうなと思いながらダンジョンを進んでいた。




「しっかし、でかいダンジョンだよな」


「そうですね、今は23階層目ですよね」


「大きいだけで、出てくる魔物は大したことないけどね」


「皆、気を抜くな。そういう話は調査が終わってからでよかろう」


「へいへい、了解しましたよっと」


 まったく早くこんなの終わらせて、念願叶って買った家で昼寝でもしたいもんだ。


 そう思いながら、俺たちは23階層を突破して24階層へと向かっていた。蟲の王の怒りを知らずに。


次回から主人公視点に戻ります。


最新話の終わりから感想、評価をつけることができます。


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