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第48話・恐ろしく強力な友

投稿が遅れて申し訳ありません。先月の私用が長引き、執筆に支障が出ております。

 友達を紹介するというリムに連れられて部屋を出る。俺は1ヶ月近く眠っていたようなのでその間に友達ができてもおかしくはないが、このダンジョンにはリム以外に人間はいない。


 そのため友達というのは恐らく魔物だろう。虫以外の魔物もいないわけではないので、人型の魔物である可能性もある。


 もし人型であるならば30階層の階層ボスとかだろうか。あいつならリムと友達になっても納得できる。いや、あいつは持ち場を離れられないからありえないか…。


 一体どんな魔物なのだろうかと想像しながら、2階の廊下を出て吹き抜けになっている階段からリビングの様子を確認する。


 すると、俺はリビングの様子を確認して動きを止める。リムはそんな俺を気にすることなく階段を軽快に降りていき、リビングの椅子に座る1人の人物の隣に移動する。


 そして、満面の笑みで俺へと向き直った。


「おにいちゃん、紹介するね。私の友達のルーちゃん」


 そういって、紅茶を片手にくつろぐ人物を紹介した。楽しげに笑うリムとは対照的に俺の顔は引きつっていた。


 それは決してリムが悪いわけじゃない。しかし、俺の同じ状況であれば誰だって俺と同じ表情をしただろう。問題となったのはリムの友達だという人物だ。


 美しく絵画から飛び出してきたかのように整った顔立ち、汚れひとつない鮮血のような赤い髪、纏っている貴族のような高潔さ、そして見るものすべてを射殺すかのような金色の鋭い双眸。


 見間違うはずもない。そこにいたのはこのダンジョンを襲った張本人、竜王の娘だった。


「な、なぜ…お前が…ここに」


 俺は率直な疑問を口に出したが、その声はあまりに小さく当の本人には届かなかった。


「あら、起きたのねリム。昨日の続きをしましょう」


 竜王の娘は俺に気づく様子はなく、リムの手を取り自らの隣の椅子へと招き入れる。


 しかし、リムは首を横に振りながら俺を指差す。


「今はダメ。ルーちゃんをおにいちゃんに紹介しなくちゃ」


「おにいちゃん?誰よそ…れ……」


 竜王の娘はリムの指差す方向へと視線を向けて、俺の姿を視認した。すると、その瞳は大きく開かれ表情も歪む。


「そ、そう。起きたのね、貴方」


 竜王の娘は手に持った紅茶を置き、席を立つ。そして、ゆっくりとした足取りで俺へと近づいてくる。


 俺は少しずつ後ずさるが、それよりも速く竜王の娘は距離を詰めてくる。階段を上がり俺の目の前でピタリと止まる。


 そして、大きく息を吐いて黄金の瞳で俺を見つめてきた。不安、後悔、緊張、罪悪感そして恐怖、それらが入り混じった感情がその瞳の奥には渦巻いていた。


「お前は—」


 俺が口を開き発言しようとした瞬間に竜王の娘は床を突き抜ける勢いで跪き、額を床へと擦り付けた。


「ごめんなさい!!」


 竜王の娘の口から出たのはなんの飾り気もない純粋な謝罪の言葉だった。


「私の思い込みのせいで貴方達に危害を加えてしまった。そのことを謝罪したいの」


 俺は竜王の娘のいきなりの行動に少しばかり拍子抜けしてしまったが、自分の怒りを奮い立たせて声を荒げる。


「お前は自分のしたことをわかって言っているのか。勘違いでしたで済む話ではないんだぞ」


「ええ、分かっているわ。貴方達を殺しかけたのだもの。簡単に許してもらえるとは思っていたないわ。だから、償いをしたいの。私のできることならなんでもするわ」


 こいつは分かっていない。家族を失うかもしれないという恐怖を、強大な力に蹂躙される理不尽さを。


「なら、お前の命をもって償え。ここでお前の首を落とせば俺の怒りは和らぐ」


 俺の無慈悲な言葉を聞き、竜王の娘の顔色は真っ青に染まっていった。その瞳には絶望の色が浮かんでいる。


 当然だ、自分が犯した罪の重さを知れば良い。何故かは分からないが、現在の竜王の娘は俺へと攻撃を仕掛けてこない。


 攻撃しないのか、それとも出来ないのかは知らないが好都合だ。間近で結界も張られていない現状なら、MPを全力で使えばそれなりに傷は負わせられるはずだ。


 俺が竜王の娘の頭へと手をかざした瞬間、それを阻む声が聞こえた。


「待って!」


 リムが大声で叫び、階段を駆け上がってきた。そして、跪く竜王の娘と俺との間に両手を広げて立ち塞がった。


「リム、そいつは—」


「知ってる!ルーちゃんがダメなことをしたんでしょ。たからおにいちゃんは怒ってるんだよね。でも、ルーちゃんはちゃんと謝って許してもらうために良いことをいっぱいして頑張るって言ってるの。きっとルーちゃんは一生懸命頑張るから、お願い殺さないで」


 リムは全力で俺に竜王の娘の救済を願い、竜王の娘はその言葉を聞いてより一層後悔の感情が強くなる。


 しばらくの沈黙の後、俺はリムを脇に寄せて竜王の娘を見つめた。視界の端に映るリムは俺が要望を拒否したと思ったらしく、悲しい表情をしている。


 そして、竜王の娘もその現状を悟り、身体が小刻みに震える。そんな2人に対して、俺は冷静に言い放った。


「竜王の娘、リムに免じてお前の謝罪を受け入れる」


 俺の言葉の意味を理解した瞬間にリムは歓喜の表情を浮かべ、竜王の娘も安堵したかのように大きく息を吐いた。


「だが、俺はお前を許してはいない。お前自身が言った通りに罪は償ってもらう」


「分かっているわ」


 竜王の娘は顔を上げて、先ほどよりは安心した表情を見せる。


「だが、それには問題がある。俺はまだお前を信用していない。お前が俺たちを攻撃しないという証拠を示せ」


 竜王の娘は罪を償うつもりではあるようだが、それをせずに俺たちに危害を加える可能性はある。口だけでなら何とでもいえるからな。


「蟲王様、そのことに関しては既にわたくしが手配しております」


 俺の後方からアリシアと共にベルゼブブが部屋から出て、ゆっくりと近づいてきた。


「既にその小娘と私は絶対契約(ギアス)を結んでおります」


 絶対契約(ギアス)、確かこの世界に存在する魔法を用いた契約だったはずだ。絶対契約(ギアス)は専用の魔法を用いた後に、魔法による洗脳や支配などがない状態で両者が条件を提示して、お互いがその内容に了承することで成立する契約だ。


 決して破ることができない契約でそれは魔物の王も例外ではないとされている。この世界ではどんなものよりも信用できる契約方法だ。基本的には禁術の為、使用される機会は少ないようだが。


 しかし、そんなものいつ、どうやって結んだんだ。仮にも相手は竜王の娘、手負いであったとしてもベルゼブブでは契約を結べるような立場には立てないはずだが。


絶対契約(ギアス)を結んだ経緯についてご説明させていただきます。戦闘の後、私は手負いではありましたが、虫の魔物ゆえ再生は早いため比較的早く復帰することができていました。その時には既にアリシア殿が蟲王様を搬送していたため、私は既に瀕死であった小娘の処理を行うこととしました。しかし、私の手で葬るよりも蟲王様自らの手で行った方がよいかと思いまして、私の部屋まで運び魔法を使い拘束しました。」


 竜王の娘が瀕死だと、誰がそこまで追い詰めた?31階層の()()()を使ったのだろうか。いや、()()()を開放したのならこのダンジョンが無事なはずがないか。


「本来はその後、蟲王様が目覚めた後に始末していただくつもりだったのですが、小娘があまりにも無様で醜い命乞いをしたもので、絶対契約(ギアス)を結ぶ代わりに開放したのです」


「契約内容は?」


「小娘が出した条件は私が小娘を殺せないこと、私が出した条件は私の言葉の絶対遵守でございます。結果的な絶対契約(ギアス)の内容のとしては私は小娘を殺せない代わりに、自害を除く全てのことを行使させることができるというものに落ち着きました」


 なるほど、竜王の娘が襲ってこないのは絶対契約(ギアス)によるものだったのか。それにしても、その内容の絶対契約(ギアス)ならばベルゼブブさえいれば罪を償わさせることも容易だ。


 それに、あくまでベルゼブブが殺せないだけであり、動きを封じたところで俺が殺すこともできる。竜王の娘がそれに気づかない馬鹿とは思えないから、契約を結ぶ際、よほど死ぬのが怖かったんだろうな。


 とりあえずは、これが罪を償わせる証拠になる。


「…分かった。竜王の娘…いや、ルージュ・ドラグーン。お前をこのダンジョンの戦力として加える。しっかり働け」


「ええ、任せて!」


 顔を上げて握りこぶしを作るルージュの瞳には覚悟の火が灯っていた。

最新話の終わりから感想、評価をつけることができます。


良ければ、是非感想、評価をお願いします。


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