表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/62

第36話・リムのわがまま

 対戦相手の消失を確認して、アリシアが闘技場の中へと降りて来た。


「カナデさん、お疲れ様です。最後の魔法すごかったですね」


 アリシアは拍手しながら、勝利した俺を称えてくれた。


「ありがとよ、それにしても魔法はすごいな。最初からあの魔法を使っていたら、すぐに終わっていたな」


「あれは闇属性の上級魔法ですよね。私も使えるから分かります」


 俺が王魔法で使用した『腐敗の波(コラプションウェイブ)』は闇属性の魔法のため、闇魔法の使えるアリシアには分かるようだ。


「ああ、思っていたよりも強力だったけどな」


「あの手の魔法は相手との力の差が大きく出るんですよ。相手が弱ければ弱いほどその効果が大きいんです」


「格上相手には通じにくいということか」


 今回は相手がDランクの魔物だったため通用したが、Aランクが相手になれば大した効果は得られないかもしれない。


「そういうことですね。とにかく頑張りましたね。敵の攻撃を受けてしまったときはハラハラしましたけど」


「傷に関しては心配ないと証明していただろ」


「それでも不安になるものなんです。血も出てましたし、リムちゃんにはとても見せられる戦い方ではないですよね」


「それに関しては何も言えん。それでも、この戦い方が有効だと思う。俺の強みを生かした戦い方だからな」


「凄いです、あの再生力。ほとんど不死身ですよね。私たち虫の魔物も治癒のおかげで再生は早いですけど、カナデさんには到底及びませんよ」


「仮にも治癒が1000あるからな。超再生のスキル使用無しであれだから、スキルも使えば木端微塵になっても死なないかもしれないな」


 本当にこの再生能力は素晴らしい。蟲王になった影響なのか痛覚も鈍くなっており、躊躇なく自分自身をおとりにできる。


「いきなり実戦をしようと言ってきたときは驚きましたけど、戦い方を学んだりスキルの使用も実感できたみたいなので、やるだけの価値はありましたね」


「だから言っただろ。けど、戦い方はまだまだだな。剣術なんかのスキルを覚えられればいいんだけど」


「このダンジョンには人型の魔物が少ないですから、魔物に教えてもらうのも難しそうですね」


 アリシアの言う通り、このダンジョンには剣術や槍術のスキルを持っている者はいてもどれも人型ではない。


 同じスキルでも虫と人では体の動かし方は全く違う。剣術などのスキルはあくまでスキルの所有者に対しての補助をするものだ。


 所有者が変われば当然、補助の効果も変わる。そのためそもそもの姿かたちが違う者から教えを受けることの効果は薄い。


「どうしようか…」


「どうしましょう…」


 2人して沈黙が続いた。


「おにいちゃ~ん、おねえちゃ~ん」


 すると突然、子供特有の甲高い声が聞こえてきた。


 闘技場の壁を登り、建物の上から声が聞こえた方向を見るとリムが人の姿のベルゼブブに連れられて手を振っているのが見えた。


 場所は墓地ではあるが、美麗な男と幼女が手を繋いで歩く姿はなかなか絵になるものだ。


 何事かと思い、闘技場から降りてリムたちの元へと駆け寄る。


「リム、どうしたんだ。なにかあったのか?」


「一人で寂しかったから会いに来たの」


 俺とアリシアが闘技場へと向かう時にはリムは寝ていたため32階層に置いてきたが、もう少し配慮すべきだったかもしれない。


 俺が少し表情をゆがめていると、何か勘違いしたのかリムを連れてきたベルゼブブが少しうろたえた。


「申し訳ありません。私が32階層に向かったところ、蟲王様が不在のようだったため探そうとしたのです。その際にリム殿が自分も行きたいとおっしゃるので、お連れしてしまいました」


「いや、別にそれを咎めているわけじゃないよ。寧ろ、よくやってくれた」


 俺はベルゼブブを称えた後、リムへと向き直った。


「ごめんな、リム。俺が軽率だったよ。お前を置いていったりして」


 俺はリムの頭を撫でながら詫びると、リムは首を横に振って申し訳なさそうに言った。


「わたしこそごめんなさい。おにいちゃんたちに迷惑かけちゃって」


 リムはこういった場面で妙に大人な対応をする。


「まったく…子供はわがままなくらいでいいんだよ」


 俺はしゃがんでリムの両足を掴み、自分の肩に乗せる。俗に言う肩車というやつだ。


「お前は遠慮なんしなくていい。したいことはなんでも言え。リムがしなければいけないことは笑顔でいることさ」


 俺の頭に捕まるリムの手に少し力が入る。


「じゃ、じゃあね。鬼ごっこしたい。みんなで鬼ごっこ!」


「よし、分かった。鬼ごっこやろう。アリシア、ベルゼブブも一緒にやるぞ」


 アリシアとベルゼブブは突然巻き込まれて一瞬驚いていたが、互いの顔を見て苦笑した。


「分かりました。頑張りますよ。カナデさん、鬼にばっかりなって泣かないでくださいね」


「私もやりましょう。人の姿を使いこなすにはちょうど良い機会ですね。Aランク魔物の力を見せて差し上げましょう」


「わーい、みんなで鬼ごっこだー」




 その後、みんなで鬼ごっこをしたものの地獄だった。


 アリシアが初めは遊び感覚でやっていたのに、途中で本気になり能力を全開で使い始めた。


 それに対抗するようにベルゼブブも本気でやり合い、Aランク上位の魔物同士の鬼ごっこが始まった。


 流石に俺とリムはそれに参加するわけにはいかないので、離れた場所で鬼ごっこを続行して2人と2人の鬼ごっこになってしまった。


 結局、アリシアとベルゼブブはお互いに息を切らしてぶっ倒れ、俺は子供の持つ異様な元気に翻弄されることになった。


 それでも最後にリムが俺たち3人に向かって満面の笑みでお礼を言った時は、やってよかったと思った。
















最新話の終わりから感想、評価をつけることができます。


良ければ、是非感想、評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作品です 【蟲王の戯れ】
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ