第18話・ダンジョン構成
正月に向けてのストックを用意するために、3日間で1話を更新する形にさせていただきます。ご了承ください。
本当にすいません。
本来ダンジョンの階層の最奥にはその階層のボスともいえる魔物が居座っていることがある。
そこには転移陣というものがあり、次の階層へと進むのに必要なものだ。それを守るために強い魔物を配置する。
このダンジョンでも階層ボスは存在する。アリシアによれば5階層ごとにボスがいるらしい。このダンジョンの上層は長い間活動していなかったこともあるが、冒険者たちの進行によってほとんどの魔物が死んでいた。
しかし、ある程度強い魔物である階層ボスたちは、そのほとんどが身を隠すことで殺されるのを免れていた。
唯一殺されたのは最初の階層ボスであるフェル・アントだ。Dランクの蟻の魔物で、指揮をとる女王蟻がいなかったため突っ込んでしまったわけだ。
ダンジョンの魔物は階層が深くなるほど強くなっていくが、階層ボスも同じだ。第5階層にいる階層ボスのフェル・アントはDランクだが、第10階層にいる階層ボスはBランクだ。
冒険者たちに23階層まで突破されたが第10階層、第15階層、第20階層の階層ボスは殺されずに生き残っている。
まずは、侵入者によって侵攻されやすい上層の第10階層と第15階層の階層ボスを確認することにした。
☆☆ ☆ ☆
第10階層の最奥の部屋に俺とアリシア、そして2体の階層ボスがいた。
【種族】 エッジ・シケイダ
【ランク】 B
【LV】 40
【HP】 70
【MP】 80
【力】 100
【魔力】 60
【防御】 50
【俊敏】 140
【治癒】 20
【スキル】
『飛翔Lv3』『加速Lv2』
『硬化Lv2』『風魔法Lv1』
【称号】
-
【種族】エッジ・シケイダ ランクB
Bランク下位の虫族魔物。動きが速く、敵を翻弄する。羽が硬質化、鋭化しておりすれ違いざまに羽で切り裂く戦法を得意とする。
【種族】 ブラック・オーガ
【ランク】 B
【LV】 40
【HP】 150
【MP】 10
【力】 170
【魔力】 10
【防御】 120
【俊敏】 40
【スキル】
『剛力Lv3』『棒術Lv2』
『身体強化Lv2』『気力Lv2』
『剣術Lv1』『槍術Lv1』
【称号】
-
【種族】ブラック・オーガ ランクB
Bランク上位の魔人族魔物。オーガの変異種。オーガの弱点である知能の低さを克服しており、策を講じるなどの知能の高さを活かす。オーガの剛力も健在であり対人戦を得意とする。
これが第10階層と第15階層の階層ボスだ。エッジ・シケイダは3メートルほどの蝉だ。黄緑色をしており、羽は半透明できれいだ。羽は固く鋭いが、大きさの割に軽く素早い動きができる。
ブラック・オーガは身長3メートルほどの人型の魔物だ。オーガは体が赤みがかった肌色らしいが、こいつは名前の通り黒い肌をしている。黒いといっても真っ黒ではなく黒人の黒さに似ている。
かなり筋肉質で力が強く、片言ではあるが話すこともできる。このダンジョンでは珍しい虫族以外の魔物だ。
こいつらがこのダンジョンの上層における守り神というわけだ。しかし、基本的に上層にはあまり強い魔物は置けない。
あくまでも、ダンジョンは侵攻されなければならない。人の魂がなければダンジョンが維持できないからだ。
だからこそ上層は弱めの魔物を配置して、獲物が入って来やすいようにしなければならない。その一方で、最深部に到達されてダンジョンコアを破壊されるわけにはいかない。だからこそ、深部に近づくにつれて魔物の強さは上がっていく。
自分の殺す危険のある者がいなければ生きていけないとは、ダンジョンマスターもなかなか大変だ。
階層ボスは死んでも生き返る魔物だ。生み出すときの10倍以上の魔力を支払うことで魔物を階層ボスにすることができる。魔物の強さが上がる毎に支払う魔力量の倍率も変わっていくのだ。
死んでも復活するため階層ボスは強力な魔物であるが、欠点もある。階層ボスにするのに大量の魔力が必要なのもその1つだ。
他にもLVやスキルはも固定され、成長することもできない。
また、ダンジョンが活動していないと復活できずに普通の魔物と変わらなくなる。そのため冒険者地から逃げることしかできなかった。もし戦っていれば、勝てはしなかったかもしれないがこう少し時間は稼げただろう。
この階層ボスたちは死んでもかまわない魔物たちだ。しかし、他の魔物はそうはいかない。階層ボスとは違い他の魔物は死ねばそれで終わりだ。
だからこそ、殺されやすい上層には弱くて替えが効きそうな魔物を配置しなければならない。
ダンジョンマスターが一番最初にぶち当たる壁だ。それは俺も例外ではないが、虫の魔物で構成されている俺のダンジョンではそこまで難しい問題ではない。
本来のダンジョンマスターは繫殖力が高いゴブリンなんかを配置するらしい。しかし、俺には虫の魔物が使える。
虫の魔物が恐れられていた由縁、繫殖力の高さ。これを利用すれば、たとえやられてもすぐにその代わりを用意できる。
蟲王が封印されて弱まった力だが、蟲王である俺が現れたことで少しずつ虫族魔物の弱体化は解けている。特に、俺が直接使役している魔物はその速度がかなり速いようだ。
ということで、上層には産む卵の数が多い魔物を配置することにする。とりあえずは蟻や蜂なんかの魔物を配置するつもりだ。
これらの虫は女王の個体さえいれば半永久的に莫大な数の魔物を増やすことができる。
【種族】パワー・アント ランクF
ランクF上位の虫族魔物。個々の戦闘能力は低いが、集団戦で真価を発揮する。
【種族】ファイアー・ビー ランクE
ランクE中位の虫族魔物。下位の火魔法を使う。集団戦が得意。
パワー・アントは体長30センチほどの蟻だ。大きさ以外には普通の蟻と、姿かたちは変わらない。
ファイアー・ビーは体長20~40センチほどの蜜蜂だ。体色は赤く、本来の蜜蜂よりも毒針が大きい。
俺はこの魔物を上層に配置することにした。勿論この魔物だけではないが、こいつらを主体として編成していくつもりだ。
女王の個体は敵として配置せずに、深層で卵を産み育ててもらう。そして成虫になればこの間、仲間にした百足竜に乗せて上層へと運んでもらう。
たとえ魔物が殺されてもこれを繰り返せば、上層に魔物がいなくなることはない。深く進攻されたり、前の冒険者たちくらいに強い相手だと止められないのが難点だ。
しかし、とりあえずはこいつらを中心とした編成を組めば上層は何とかなる。今からすぐにこいつらを配置しておこう。
できれば貴族が新たな調査隊を差し向ける前に、上層だけでも準備を終えたい。虫の魔物が出るダンジョンは他になく珍しいから、その価値が分かればそれなりの獲物を送ってくれるはずだ。
それにこのダンジョンに冒険者たちを差し向けた貴族は、このダンジョンを独り占めするつもりだった。自分の利益となるものの調査なら念入りにやってくれるだろう。
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