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第17話・温泉

「ふぅ」


 俺は息をはいた。お湯につかると息が出るのはなぜなんだろうな。そんなことを思いながら俺は温泉に入っていた。かなり広い温泉で旅館なんかにある感じのやつだ。


効能なんかあるのかはわからないが、お湯はわずかに濁りわずかに硫黄の匂いが漂っている。


 洗い場には魔道具を利用した蛇口もあり、シャンプーやコンディショナー、ボディソープも完備してある。


 この温泉は32階層のドームの奥にある広間につながっている。この温泉は妖刀の黒蛍を生み出した後に作ったものだ。脱衣所までしっかり作ったらダンジョンコアの魔力がすっからかんになった。


 なぜ温泉をつくったのかというのはただ単にイメージの問題だ。本当はお風呂を作るつもりで、足を延ばして浸かりたいから小さめの温泉を出すつもりだった。しかし、出す際のイメージをするときに邪念が入り、かなり大きい温泉が出てきてしまった。


 その邪念というのはアリシアと一緒に入りたいというものだ。カップルなら小さいものでもよかったかもしれないが、俺とアリシアはそこまでの仲じゃない。


 アリシアがあまり意識しないで済むだけの広さが必要だった。どれくらいの大きさなら一緒に入ってくれるだろうかと考えると、どんどん大きくなり大変なものが出てきてしまった。


 そんな男の性が俺を苦しめた。とはいえ、生み出したときは後悔したが、今ではそうでもない。


 なぜなら、単純に広い温泉というのは良いものだからだ。日本人だからなのか広々とお湯に浸かれるというのは気分がいい。貸し切りの温泉というのは一度は浸かってみたかったからな。


 なんてことはいっても、実際こんなのは建前だ。


 本音はアリシアと温泉に入れたからだ。それも真横で、同じ湯船につかっている。最近はアリシアには常に変化のスキルを使ってもらっている。アラクネ状態の姿も嫌いではないが、やはり人の姿のほうが俺は好きだからだ。


 そんなアラクネは温泉が気に入ったようで1人で何度か入っている。色白な肌に朱が混じりずいぶん色っぽい。艶の良い唇からも可愛らしいため息が出る。


 そもそも、アリシアは魔物で裸を見られることで羞恥することはない。それに気づいていたら、もう少し温泉のサイズは小さくて済んだのだが。


 裸を見られても恥ずかしがりはしないが、羞恥心がないわけではない。実際、俺に抱き着いたことを思い出して恥ずかしがったりしている。


「やっぱり、いいですね。お湯に浸かるなんて考えたことなかったですよ」


「こっちの貴族なんかは、したりするんじゃないのか?」


「さあ、どうでしょう?私の知識のほとんどは先代ダンジョンマスターの書物から学んだことなので」


「ふーん。そうなのか」


 美女と湯船につかりながら平気で会話ができるのは、慣れというやつだ。初めて一緒に浸かったときは、のぼせてしまったのはいい思い出だ。


 こんな美女が裸で隣にいたら、のぼせもするさ。鼻血が出なかっただけマシだ。緊張しすぎて俺の息子が元気にならなかったのは幸いだった。


「これからダンジョン強化どうするんですか」


「そうだな、また仲間集めをするか、ダンジョンの整理をするか、俺を含めた魔物のLVを上げるかだな」


「仲間集めより、ダンジョンの編成を確認したほうがいいんじゃないですか。下層はともかく上層はこの前の侵入者に滅茶苦茶にされてますから」


「そうだな、少なくとも侵入者を迎撃できるように編成しとかないとな」


 今後のダンジョンの課題を考えながら、俺たちはまったりしていた。次にやることは上層に魔物を配置しなおすことだな。


 やることが多すぎて嫌になる。体も心も癒す場所である温泉で気の滅入ることは考えたくないな。


「そろそろ、俺は出るけどアリシアはそうする?」


「そうですね、私も出ます」


 2人して湯船から上がり、脱衣所へと向かう。湯船につかっていた時とは違い今はアリシアの裸体を隠すものはない。


 流石にこの光景には慣れる訳はなく、目を背けながら横を歩く。アリシアはそんな俺のことはお構いなしに、一切隠す様子はなく堂々と歩いている。


 普段人の姿なため忘れることがあるが、こういった光景を見るとアリシアは魔物なんだなと感じさせられる。


 脱衣所で用意していたタオルで体を拭く。髪をタオルで挟んで水をふき取るアリシアの姿は、それだけで絵になる美しさだ。


 体を拭くと浴衣に着替える。肌に朱が混じる色っぽいアリシアについつい見とれてしまう。何の華やかさもないシンプルな浴衣だが美人が着ると、それだけで純白のドレス姿にも匹敵する。


 裸の時とは違う色気がそこにはある。見えないからこそ素晴らしいものもあるのだ。


「カナデさん、いつものお願いできますか?」


「おう。了解」


 アリシアに頼まれいつも風呂上りにする儀式なようなものの準備する。その儀式とはある飲み物を飲むこと。そう、コーヒー牛乳だ。


 俺とアリシアの分、2つのコーヒー牛乳を生み出す。それをアリシアに手渡し、2人そろって腰に手を当てぐっと飲み干す。


「ぷはぁ、カナデさん、やっぱり温泉の後はこれですよね」


「そうだな、火照った体にこの冷えたコーヒー牛乳はたまらないよな」


「普段飲むのと、温泉の後に飲むのとでは味すら変わっている気がしますよね」


「そうだよな、いつもより美味しく感じるんだよな」


「さて、すっきりしましたし、ダンジョン強化の準備を始めますか」


 アリシアと温泉の後のコーヒー牛乳に語っていたが、アリシアが現実に戻す一言を放った。


「はぁ、面倒くさいがやるしかないか…」


「頑張りましょう!」


 意気込むアリシアとダンジョンの魔物編成を始めることにした。


最新話の終わりから感想、評価をつけることができます。


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