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第14話・現状確認

 俺の武器となる黒蛍を手に入れた後、本来の目的であった生み出せるものの検証をしていた。


「どうやら地球の武器はダメみたいだな」


「そうみたいですね」


 検証の結果、地球の用途が武器として使われるものは生み出せなかった。しかし、包丁や金属バットなんかは生み出せたので、武器として使えても目的が殺傷するためのものでなければ良いみたいだ。



 後、家電製品はダメだ。生み出せはしたが、ダンジョンコアの魔力を大量に使う。その挙句、この世界には電気がないから使えやしない。


 この世界にも電気の代わりに魔力を使う冷蔵庫みたいなものがあるらしく、それなら生み出せそうだ。


 本当なら今すぐにでも魔力で動く冷蔵庫は欲しいところだが、それを生み出さないのには訳がある。


 ダンジョンコアの魔力量がかなり減ってしまったからだ。ダンジョンコアの魔力はダンジョンの力の源とも言えるものだ。


 ものを生み出すのにも、魔物を生み出すのにも使う。ダンジョンの維持にも必要なものだ。500年近くダンジョンが活動していなかったのに、32階層の森が枯れていなかったのも、ダンジョンコアの魔力で維持していたからだ。


 ダンジョンコアの魔力は普通の魔力を込めただけでは、満ちることはない。ダンジョンコアの魔力は人の魂を喰らうことで満たされる。ダンジョンコアにとって人の魂を喰うことで生きている。


 だからこそ、ダンジョンコアは触れた生物をダンジョンマスターにして、ダンジョンを作り獲物をおびき寄せる。


 強ければ強いものほど魂は大きく、補充されるダンジョンコアの魔力量も増える。たとえ自分を破壊する可能性があるとしても、強いものをおびき寄せようとするのだ。


 このダンジョンコアは魔力があまり残っていなかった。先代のダンジョンマスターは国相手に戦い、膨大な魔力を得ていた。しかし、その大半を虫族魔物を生み出すのに使ってしまった。


 残った魔力もダンジョンの維持に使われが、俺が手にした時にはまだそれなりにはあった。しかし、妖刀の黒蛍を生み出し、その後にも色々使ってしまい残りの魔力が殆どない。


 本当はこのダンジョンで静かに暮らしていけたらそれが一番だったんだが、そうもいかなくなった。ダンジョンマスターとなった俺はダンジョンコアが死ねば俺も死ぬ。俺が生き続けるためには人間をダンジョンに誘い込み、その魂をダンジョンコアに喰わせなきゃならない。


 それはつまり、このダンジョンを人間に知られなければならない。そうなれば、ここは安息の地ではなくなる。ここを安息の地にするには、絶対に最深部に来られない戦力を配置する必要がある。


 本格的にダンジョンを運営するしかない。そのためには第一に現状確認だ。ダンジョンの戦力はもちろんのこと、人間の認知度を確認する必要がある。このダンジョンは500年近く活動していなかったが、アリシアによればその間に侵入者はいなかったという。


 しかし、今回500年ぶりに冒険者による侵略を受けた。果たして、この冒険者だけが見つけただけなのか、それとも国などに発見されて依頼を受けたのか。どちらか確認する必要がある。


「アリシア、ベルゼブブからの報告は来たか?」


「いえ、まだです。確認しに行きましょうか?」


「いや、直接俺が行こう」


 俺とアリシアは30階層にいるベルゼブブの元へと向かった。



 ☆☆ ☆ ☆



 ベルゼブブには前回侵入した冒険者から情報収集するように頼んでいた。2人は死に1人は苗床となった。残り1人は心が壊れはしたが、唯一損傷がなかった。拷問によって情報を吐かせることはできないが、魔法がある世界ならまだ手はある。魔法を使って記憶を読むのだ。


 記憶を読む魔法はかなり高等なものらしいが、最上級の魔物であるベルゼブブには使えるようでダンジョンに来た経緯を調べてもらっていた。


 30階層のベルゼブブがいる場所に着いた。薄暗い部屋には拷問器具らしきものから鉄格子まであった。女の冒険者は椅子に張り付けられており、その前にベルゼブブがたたずんでいた。


 ベルゼブブは俺とアリシアが部屋に入ると気づいたらしく、こちらを向いて優雅にお辞儀した。


「これはこれは、蟲王様自らお出でになるとは。この小娘の記憶についてですかな」


「ああ、そうだ。本格的にダンジョンを運営していくことに決めたからな。冒険者たちのダンジョンに来た経緯を知りたいんだ」


「でしたら丁度良いところに。準備が整いましたので、今から始めるところです」


「記憶を読むとなれば準備が必要なのか」


「いえ、もっと弱い相手ならすぐに行えるのですが、この小娘は中途半端に強いのでね」


 冒険者たちはAランクの魔物たちにあっけなくやられたが、仮にも上級冒険者ということか。相手が悪かっただけで人間の中では強いほうなんだろう。


「そろそろ始めましょうか、ご覧になっていってください」


 ベルゼブブは椅子に張り付けた冒険者の頭に手を当てた。


「眷属よ」


 ベルゼブブの周りに眷属の蠅が現れる。


記憶掌握(グラスプメモリー)


 ベルゼブブの叫びとともに蠅が地面へと落ちる。ベルゼブブの手に僅かな光がともった。目を閉じて集中しているようだ。


 ベルゼブブが手を当ててから1分ほどたつと、ベルゼブブは手を離した。


「なるほど、おおよそ分かりました。この冒険者は人間の国の貴族に、このダンジョンの調査をするために雇われていたようです」


「国の貴族か、ということは国にこのダンジョンのことは露見しているのか」


「いえ、どうやらそうではなさそうです。依頼をした貴族は国の王への報告を怠っているようでして」


「ということは、まだ国全体に知られているわけではないんだな」


「おそらくは」


 国に知られていないのならまだ大丈夫だ。そう遠くないうちに国に発見させるつもりだが、体制の整っていない今はまずい。


 国に知られていないとはいえ、安心はできない。


 国に知られてはいなくても、少なくとも貴族の1人には知られている。その貴族がまた別の冒険者を差し向けてくる可能性も考慮しておく必要がある。


 とはいえ、その貴族が報告を怠っているのには理由があるはずだ。何らかの大きな訳がなければ王に隠し事などしない。恐らく当分は王への報告はしないでいてくれるだろう。


 しかし、また調査隊が来たときに一方的に殺すのはまずい。可能性はかなり低いが、手に負えないと思い王へと泣きつかれることも考慮しなくてはならない。


 そうさせないためにも穏便に済ます必要がある。上層は弱めの魔物を配置してある程度調査させておくか。


 どうするにしろ、いつかはダンジョンを公開しなければならない。やはり必要なのは戦力だ。普通のダンジョンマスターなら弱い人を殺してダンジョンコアの魔力をためることで、新しい魔物を生み出すのが定石だ。


 しかし、俺はダンジョンマスターであり、蟲王でもある。蟲王の眷属支配の力を使えば野良の虫族魔物を仲間にできる。


 はっきり言ってダンジョンマスターがダンジョンの外に出るのは危険だ。恐らくアリシアに止められるだろうが、安息のためには四の五の言っていられない。


 まずは外に連れていく魔物を選別しなければ。


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