第4話 [レヴィンチ]
「ーーー取り敢えず、森から出てこの国の首都を目指そう」
慶一がシスに言った。
シスは唐突すぎるその言葉に戸惑っている。
「え、今何と……?」
シスがこう聞くと慶一はこう言い返した。
「だから今日までにこの森を抜けて、レヴィンチに行くんだよ!」
レヴィンチとは、今慶一達が居るこの森が属している国の首都である。
ここから行くとしたら、おそらく十日は掛かるだろう
シスは慌てて言った。
「 れ、レヴィンチって……! 今から!?」
「うん、そうだよ」
慶一は冷静にそう返した。
そんな答えにシスは
「そんなの無理!! 危険すぎ〜!」
「今日はもう遅いから、明日〜」
シスが駄々をこねる。
そんなシスに慶一がこう言った。
「明日じゃ、ダメなんだ!!!!!」
「明日じゃ、ダメ」シスは慶一のこの一言が気になり質問したが、慶一はその質問には答えてくれなかった。
そして、慶一はシスに言った。
「2日前、なんて言ったけ?」
シスは慶一のこの一言で…
「ギクッ! アレ〜、何か言ったけなぁ〜?」
慶一がシスを睨む。
「ゔっ、分かってるよぉォォォ!! もう!」
シスのこの言葉で慶一はにっこりと笑う。
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今、慶一とシスの2人は森を抜けようとしているが森を抜け出すことが出来ず困っている。
別に迷っているわけではない。
では、なぜ抜け出すことができないのか?
森の主と闘っているからだ。
ーーー遡ること2時間前ーーー
「よし、魔法も覚えたし怖いもの無しだな!」
自信満々な慶一の表情は満天の星空にも負けないぐらいに輝いている。
そこに旅の支度をし終わったシスが来る。
別に森の中だから支度をするも何も無いのだが…。
カバンを片手にシスは言った。
「なんで、そんなに自信満々なの?」
「なぜかって?それは魔法を覚えたからさぁ〜」
「………………。」
謎の間が空く。
シスは慶一の話し方がとても気持ちが悪いと思った。
その衝動でさっきまで持っていたカバンが地面に落ちている。
そんな慶一にシスが一言。
「確かに、魔法は強力だよ。 だけど一日に数回しか使えないんだよ」
最近、シスの口調が変わったなぁ〜と思った。
いやいや、それよりもずっと大切な事がと大急ぎでシスに質問をする慶一。
「え、どうゆう事?」
シスは呆れてこう答えた。
「ハァ、知らなかったんだ。」
「その魔法は魔力じゃなくて体力を沢山消費してやっと発動出来るんだよ。魔力はすぐに回復するけど、体力は中々回復しないからね……」
「ま、一日経てば体力も回復してまた使えるけどね。」
「ま、マジ!?」
「マジ、マジ」
シスがそう返すと……
「おい、シス……」
シスは途中で途絶えた言葉のその先がとても気になりすぎて、少しイライラしている。
そんな中でも、慶一はゆっくりと喋る。
「最近、性格が変わったなぁ〜」
「本当に幼女なのか?」
「………………………。」
静寂に包まれる。
「はぁ!? 何言ってるの!!?」
「私、14歳なんだけど!!!!」
シスは涙目になりながら、とても怒っている。
慶一は衝撃な事実に驚きを隠せない。
我に返った慶一は、この状況を変えなければならないと「早く行こう!!」と言った。
シスは「やだ!」と言い返した。
そんなやり取りをしていると何処からか、唸り声が聞こえた。
慶一には聞き覚えのある声だった。
そう、森の主だ!
ヤバイと思った慶一はシスを抱き抱え、声のする反対方向へと走り出した。
「キャァアアアアアア!!!!!!! 降ろして〜、慶一!!!」
必死だった慶一にはその声が聞こえなかったが、森の主には聞こえたらしい。
森の主が慶一達を追い掛ける。
『ドダ、ドダ、ドダ、ドダ、ドダ!!』
足音がドンドン大きくなる。
必死になって走るが 足の遅い慶一ことだ、すぐに追い付かれてしまった。
慶一はもうダメだと、諦め掛けたその時だった。
「魔法! 魔法を使いなさいよ!!」
シスがこう言うと慶一は走るのをやめ、戦闘体勢に入った。