第3話 [始まり]
シスは御礼だと言って服のポケットから、小汚い紙切れを取り出した。
「何これ?」
と、慶一はシスに聞いた。
するとシスは不思議そうな顔をしてこう言った。
「え、知らないの? あなた本当に勇者なの?」
慶一はなぜ、シスが自分のことを勇者だと知っているのかを不思議に思った。
しかしそんな質問をする暇は無く、シスは続けてこう言った。
「慶一、スキルウィンドウを見せて〜〜」
慶一は自分のスキルウィンドウには何も書いていないので見られるのは嫌だったが、シスに笑われることを覚悟でしょうがなく見せた。
シスは慶一のスキルウィンドウを見て笑いはしなかったが大変驚いていた。
「何にも無い……」
シスのこの言葉で慶一は酷く傷付いた。
「勇者なのにスキルウィンドウに何にも無いのはやっぱりおかしいよね……」
慶一がこう言うとシスは、
「勇者なのに知らないの?」
と言い返して来た。
慶一は「何を?」とすぐさま聞いた。
シスはやっぱり知らなかったか……と思いながら慶一に教えた。
「勇者は普通のスキルは覚えることが出来ないんだよ」 と。
そして続けてこう言った。
「その代わり、勇者は特別なスキルを覚えることが出来るんだよ」
その言葉に慶一はビックリした。
18年間生きてて知らなかったのだ。
まさかこんな幼女に教えられるとは……と悔しい表情を浮かべる。
まぁ、そんなことはどうでも良いという感じで
「じゃあ、コレ食べて」
とシスはさっきの小汚い紙切れを出して来た。
慶一は「無理、無理、無理」と首を振る。
しかしシスはそんな慶一の行動を無視して、紙切れを慶一の口の中に無理矢理入れた。
「ゴックン?!」
慶一は紙切れを飲み込んでしまった。
すると、 吐き気がする。 目眩がする。頭が痛い。と身体中の至る所に異常反応が起きる。
そして次の瞬間、慶一の身体が輝き出した!
「なんだ、これっ!?」
と慶一が焦っている中……シスは大喜びしている。
「何なんだよ〜〜、これ!!」
慶一は少し切れ気味にシスに質問した。
すると シスは喜びながら
「成功だよ〜」
と、その一言だけで終わった。
慶一には何が成功かが分からなかった。
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慶一の身体の輝きが収まると、シスはニコニコしながら、「スキルウィンドウを見せて」とまた言って来た。
慶一は何も書かれていないスキルウィンドウをバカにされていると思いながらもシスに見せた。
慶一はスキルウィンドウを見て二度見した。
何とそこには、たった一つだかスキル名が書かれていたのだ。
シスは「良かったね!」と自分のことのように喜びながら慶一に話し掛けた。
「今、覚えたスキルの名前読める?」
古代文字のような文字だ。慶一にはそれが読めなかった。
シスは笑いながら言った
「それは雷魔法で、ラムズっていうんだよ。」
慶一は何でこんな文字が読めるのかシスに聞いたが、「内緒〜」と言われてしまった。
シスは話しを変えるようにこう言った。
「ねぇ、ねぇ、知ってる? この世界にはまだまだ沢山の勇者しか使えないスキルがあるんだよ」
「そのスキルは紙切れとなって、ダンジョンにあるし、村や国の宝物としても大切にされているんだよ‼︎」
「ねぇ、シスと一緒に……」
シスの耳が赤くなっている。
そして、シスは決意をしたようにこう言った。
「一緒にそのスキルを全て探しに、一緒に旅をしてくれませんか!!」
慶一はその言葉に感動した。 今まで必要とされたことが無かったからだ。
そして慶一はすぐさまシスに「こちらこそ お願いします」と答えた。
そう言った瞬間に、シスは怪しく「ニヤリッ」と笑った。
慶一はそれを見たが、軽く受け流した。
~今、この瞬間から勇者慶一の物語が始まる~