幼児期4
剣の練習を始めた。
本物の剣はまだ重くて持てないので、木の棒を削って作った木剣だ。
一番上の姉に教わりながら、今日も素振り100回のノルマを達成した。
「大姉、終わったよー。」
「そろそろカッコいい技とか教えてよー。」
多分今日も駄目だろうけど、一応聞いてみた。
「まだ駄目よ。」
「まずは基礎からね。」
「後、筋力も上げないと剣を持てないし、体力も上げないとすぐに疲れちゃうよ?」
正論だけと、なぜかモヤモヤする。
人間の感情は不思議だった。
モヤモヤを払うには周りに当たり散らすのが手っとり早い。
「やーだ、今したいー」
「教えてったら教えてよー」
手足をばたつかせながらただをこねてみた。
少しすっきりしたが、姉の反応がないのが気に入らなくて、泣き出した。
「やーだ、やーだ。」
「大姉のバカー。」
暴言を吐いている自覚はある。
...が人間の感情はなかなか理性で押さえ込めなかった。
姉の悪口を言ってしまった後悔でふて腐れながら木剣を振り回す。
めちゃくちゃに振り回していたら、止めようとした姉の頬に当たってしまった。
木でできているとはいえ、勢いよくぶつかったので血が滲んでいる。
「...ごめんなさい。」
「大姉、痛い?」
わざとではないけれど、姉を傷つけてしまって、オロオロした。
「これくらい平気よ。」
「でも危ないから振り回すのは止めて、ちゃんと練習しようね。」
黙ってうなずくと姉が頭を撫でてくれた。
モヤモヤしていた嫌な気持ちが軽くなった。
人間の感情は制御が難しい。
姉のように穏やかでいられるようになるにはどうすれば良いのだろうか。
精神を鍛えれば良いのか?
しかし精神ならば我は遥か彼方の高みにある。
にもかかわらず、感情に振り回される。
納得できない。
「106経験値獲得」
「レベルが3に上がりました。次のレベルまであと296です。」
「人間達の感情は本当に複雑で扱いが難しいですよね。」
久しぶりに響く獣と人の意思にほっとして安心したら涙がでてきた。
人間の感情は難しい。