小参期1
疲れた。
子守りで疲れていたのは何とか解消したのだが、獣人達を移住させたので色々と嘆願がきていた。
とりあえず最優先は食料なので、肥沃な土地を用意した。
農作業はほぼ機械任せらしいので、土地だけあればいいと言われたのでこれは楽だった。
次に製造業の為の鉱石が欲しいと言われたので、鉱山を造ることになった。
地下の獣人の国の時は周りに十分な採掘場があったので、同じだけ用意するのは大変だった。
最初は適当に鉱山を造っていたのだが、造れるなら鉱石毎の専用の鉱山にして欲しいと言われた。
鉄鉱石を採る為の鉱山から宝石を採る為の鉱山まで細かく用意した。
ここも機械が作業するというので見ていたら、凄い速さで堀進められ、用意した鉱山はすぐに無くなった。
次々に鉱山を造るはめになり、時間をとられるので最終的に土精霊に必要な鉱石を提供してもらう方式になった。
鉄や銅や鋼等を出す事も出来るが、鉱石や原石で良いと言うので、専用の洞窟を造って定期的に置いておく事にした。
採掘用の機械も要らないし、保管場所にもなるからそれでいいらしい。
土精霊達に造ってもらう鉱石を管理する為に、数十体の器を造り代表の土精霊達に入ってもらった。
洞窟内でも動き易いように大きさは子供サイズにしたが、重い鉱石を運べる様に筋力は最強にしてみた。
両親や兄姉達が興味を示して一度対戦してみたいとか言っていたが、馬鹿力なだけで戦闘能力は無いよと言ったら、父以外は興味を失って去っていった。
父は育ててみたいと言ったので、戦闘訓練様に土精霊(肉体あり)を数体造って預けてみた。
次に林業の為に森を整理することになった。
適当に森を造っていたので使いにくいらしい。
家具や家の建材として、檜をもっと植えて欲しいと言われた。
後、森の育成に木々の間隔はもっとあけた方が良いと言われた。
森林の管理は森精霊や林精霊や木精霊達に任せているので、間隔が狭かろうがちゃんと育つのだが、伐採するときに機械が入らないから困るらしい。
仕方がないので間伐して森を整理した。
ここでも今後の管理のため、代表の精霊達に器に入ってもらった。
木々の間を俊敏に動けるように、森全体を見渡せるように、軽くて目の良い肉体にした。
大きさは人間と同じなので、区別しやすいように透き通った綺麗な羽をつけてみた。
他にも漁業用に海・川・湖を管理する精霊には泳ぎ易いようにヒレをつけて、家畜を管理する精霊には角をつけてみた。
虫を管理する精霊は、形は人間と同じだが親指サイズの小ささにしてみた。
中央大陸はとても住みやすい豊かな土地になった。
獣人達も精霊達と仲良くしてくれて、念話が出来るから意思疎通も図れているようだった。
人間の国の教会にいる獣人達も移住希望を出していたので、白い大きな翼をつけた人型の器に精霊を入れて、神の使徒として教会の獣人達と入れ換えた。
家族に被害が出て以来、人間の国は放置していたのだが、これを期に少し状況を調べてみると、人手不足が深刻化していて、いくつかの地域は畑を耕せず廃村になっていたし、女子供の誘拐・拉致が多発しているようだった。
東の大陸で雇用していた育児精霊や家事精霊も、期間限定で使用していたので、そろそろ器が消滅する為、唯一人手が足りていた東の大陸も人手不足になると予測できた。
人間を増やすには子供を産んでもらう必要があるのだが、東の大陸以外の大陸は食料難になっていて、子供を作らないか育たずに流産・死産が多く、妊婦の死亡率も高いままで、運良く産まれても乳が出ないので栄養失調で餓死してしまうなど、もう限界にきているようだった。
「人間が減りすぎるのも良くないから、別の世界の人間が多いところから期間限定で働きに来てもらうか。」
「別の世界???」
独り言を呟いていたようで、たまたま通りかかった父に聞かれてしまった。
「また何かするのか?」
「え?仕事の人材確保?勧誘?で別の世界から人間に来てもらえば、人手不足の解消にならないかなーと思って。」
「ほーう。別の世界があるのか。面白そうだからその別の世界とやらに行かせてくれ。」
「えーと。いくつかあるけど、父さん向きの世界だと魔王に滅ぼされそうなとこかな?」
「魔王!何か強そうだ。そこがいい。」
「何々~。何の話~。どこか行くの~?」
母さん達がやって来て、家族会議が開かれることになった。
「ミズ、俺も行ってみたい。」
「キサラギ兄さん、行ったらすぐには帰って来れないよ?イワナガどうするの?」
「もちろん連れていく。いいか?」
「はい。連れていって下さい。」
「いいの?数年は帰って来れないと思うよ?」
「数年も離れていたくないので一緒に行きます。」
「ミズ、私も行ってみたい。」
「私も~。」
「ムツキ姉さんとヤヨイ姉さんは駄目。子供どうするの?育児放棄は駄目、絶対。」
「んー。じゃあゲンブが十歳の成人になってからにする。」
「しかた無いから私も待つか。九年待ちか。長いな~。子連れで行くのはあり?」
「あー。そうすると私はどうなるのかな?父親は要らない?」
「コクヨウ兄さんは姉さん達と行きたいの?子連れで行くのはお薦めできないよ?」
「私は行くつもり無いのですが、兄さんが行くならついていきます。」
「サツキ姉さんまで?!うーん。行き来出来るようにしてみるよ。」
「いいね!行き来出来るなら私も行ってみたい!」
「母さんもですか。分かりました。ちょっと考えます。」
別の世界から余っている人間を連れてくるのは『人』と『獣』に任せるつもりだったので、家族限定の転移門を造ることにした。
試行錯誤中に間違って転移させてしまった人間や獣人が数十人発生してしまったが、責任を持って元の世界に帰す約束をして落ち着いてもらった。
『人』と『獣』に連れて来られた人間達は、教会の使徒の管理で期間従業員として各大陸に派遣され、そこそこ上手くいっているようだった。
少々問題が発生した。
「ミズ、転移者が嫁にちょっかいをかけるから廃除していいか?」
「キサラギ君。彼女はまだ結婚してないのだから、嫁ではないだろう。それに彼女には私の方が相応しい。」
イワナガに横恋慕する転移者がキサラギ兄さんともめているし、
「ミズ、転移者がウザイ。」
「ああ、その冷たい視線も麗しい。私の番。」
ヤヨイ姉さんに惚れた獣人の転移者が熱烈にアプローチしているし、
「ミズっち~。助けて~。」
「待ってください。私の女神。」
コノハナを追いかける人間と、
「ミズっち。ヘルプ!」
「愛しい人。私の胸の中に。あぁ。」
サクヤを捕まえて抱き締めている人間は、美少女好きの変態だし、
「ミズ、邪魔な奴等をまとめて縛っておいたから、放り出してもいい?」
その他の煩い人間はムツキ姉さんが締め上げてくれたが、一部顔を赤らめてムツキ姉さんを見つめていた。
「ミズ、獣人さん達と観光に行ってくるね~♪」
善良な獣人の転移者達は母さん達と仲良くしているようで、こちらの世界の獣人達と交流して世界一周旅行に行こうとしていた。
「ちょっと、母さん!どこに行くの?!中央大陸なら良いけど、周りの人間の国は駄目だからね!」
『ミズ様。一部の転移者が元魔人の魔間に接触しました。危害を加えようとしたので拘束しましたが、如何いたしますか?』
母さん達に気をとられて念話に気づくのが遅れた。
『今から行く。そのままにしておいてくれ。』
『はい。ミズ様。転移者は”魔法”と呼ばれる力を使うようです。”超能力”と呼ばれる力を使うものもいます。お気をつけてお越しください。』
転移者達を送り帰すまでこの世界の住人と接触しないように飛空船の居住区域に隔離したはずなのに、勝手に出歩いて家族にちょっかいをかけたり内部を探検して勝手に装置をいじったりとやりたい放題の転移者達だが、攻撃的な人間はいなかった気がする。
なのに魔間達に攻撃を仕掛けたのはなぜだろうか?
「おい!そこにいるのは魔族だろう!なんで庇うんだ!」
「そうだ!世界共通の敵だろ!」
「お前らも魔族なのか?!だから俺たちを拐ったのか?!」
「.....!!!」
拘束されても”魔法”や”超能力”は使えるようで、特殊能力持ちは風精霊の結界で閉じ込めているらしい。
何か喚いているようだが、聞こえなかった。
「えーと、こちらの世界では魔族?は人間が変異したものなので、そこのもの達は元の人間に戻す治療中なのですよ?あなた達は同じ人間を訳もなく殺す殺人鬼なのですね?犯罪者として処罰させて頂きます。」
「な!?」
「俺たちは良かれと思って...」
「魔族は見つけたら即殺すのが世界の常識だと...」
「装置の暴走とはいえ、勝手にこちらの世界に連れてきてしまったのはこちらの落ち度ですが、この世界の常識も分からないあなた達に勝手に動かれては困ります。早々にお帰り願いましょう。」
本当は一人づつ転移した時の場所に転移直後の時間で帰す予定だったが、問題を起こすような人間に考慮するのはやめて適当に帰すことにした。
「それでは、さようなら。無事に戻れると良いですね?」
「おい!」
「約束と違うぞ!」
「ふざけるな!ちゃんと帰せよ!」
攻撃してきていた人間がいなくなり、ほっとした表情の魔間達に謝り、他の転移者達が来ないようにゲートを設ける事にした。
「ごめんね。他の転移者達も攻撃してくるかもしれないからゲート付けるね。もう来ないと思うけど、何かあったらまた呼んでね。」
「ミズ君。我々はもう元の人間に戻れなくても良いよ。」
「うん。寿命も延びたし、いつまでも哀しんでばかりじゃ死んだ家族に申し訳ないしね。」
「私はこの新しい力で魔物退治がしてみたい。」
「見た目は人間に近くなっているから、この世界の人間には区別しにくいと思うのだが、まだ降りては駄目なのか?」
魔人になった人間を見つけては拾ってくる父達のおかげ?か増えるばかりの魔間達だったが、初期の魔間達はほぼ見た目は人間に近く、人人と共に飛空船から降ろしても生活は出来そうだったので、希望者は降ろすことにした。
気がつけば年も明け、我は八歳になっていた。




