幼児期2
言葉を話せるようになった。
まだうまく舌が回らず、短い単語ばかりだか、なんとなく意思疎通できるので、毎日楽しい。
蟻の行列がいた。
「ア、アリー」
蟻を指しながらしゃべると、通りかかった仲間のひとりから、蟻の生態についてと毒のある蟻の見分け方を説明された。
幼児に説明しても理解できる人間は少ないと思う。
我が狩人仲間だと思っていた人間達の半数が、実は父の奥さん達であったことを最近知った。
どうやら一夫多妻制の集団らしい。
残りの半数が、我の異母兄や異母姉となるようだ。
先程丁寧に説明していたのは、黒髪黒目のまだ若い異母兄だった。
「アリ、ニイニ、アリー」
さらに異母兄に話しかけると、蟻を一匹捕まえて我の手のひらにのせてくれた。
逃げようとする蟻を掴むとつぶれてしまった。
ヒクピクとしばらく曲がった脚が動いていたが、やがて動かなくなった。
「104経験値獲得」
「レベルが2に上がりました。次のレベルまであと102です。順調ですね。」
蟻一匹で104も経験値をもらえるならばと蟻の行列を踏み潰してみたが、特に変わらなかった。
蟻についての知識を得たことと、その命を初めて奪った事の経験値ということだろうか。
「ミズちゃん、トンボだよー」
「ミズ、こっちには蛙がいるぞ」
「お兄ちゃんと狩りに行こう」
「それは早すぎでしょ。お姉ちゃんとお昼寝しよ♪」
しゃべりはじめの幼児は大人気で、異母兄や異母姉から毎日声をかけられる。
今日は経験値も上がったし、大満足の一日だ。