小弐期4
三人娘達を乗せて大陸の地図を作成しつつ研究をし、週3日ほど学校に通う生活が始まった。
兄姉達も代表を務める国に移住することになって、姉達は子連れで行ってしまった。
子守り用に育児精霊と家事用に家精霊をつけてあるので、多分大丈夫だろう。
何かあれば連絡が来るだろうし、甥姪が会いたいと言うなら、すぐに飛んで行けば会える。
一番寂しそうにしていたコクヨウ兄さんが少し気の毒だったけど、共和国を建国したら引退して、皆でこの船に引っ越して来るそうだから、あと数ヵ月の辛抱だろう。
本格的にこの船を活動拠点にする為に、魔人から魔間となっていた人間と、魔人から人人となっていた人間も連れてくることにした。
書き換えでステータス表記を[人間]にする事はできたが、実際は精神しか人間に戻すことができなかった。
基本的に見た目は人間に近いのだが、肌の色が青かったり、鱗があったり、角が生えてたり、羽が生えてたりする。
そして身体能力が魔人のように高く、魔人のように魔を取り込んで魔力として操作できた。
このままだと人間の社会に復帰出来ないし、獣人とも違うので何処にも行くところがなく、我の元に残っていた。
魔人を倒せる我の家族なら恐怖することもなく、普通に人間として接してくれるので、ここしか居場所がないと諦めているようでもあった。
母親を亡くし絶望して魔人になっていた少女は、ヒルコという名前意外記憶がなくなっていた。
最近は少し笑ってくれるようになったが、まだまだ無表情の時が多い。
食欲も余り無いようで、同じ境遇の大人達に比べて精神の回復が遅い気がする。
大人達は船の中で自分達に出来る仕事を見つけては体を動かしているようだが、ヒルコは自室に引き込もっている事が多いらしい。
我も自室に引きこもることが多かったが、研究していたからで、何もせず一点を見つめてただ座っているというのは異常だと思う。
精霊達から時々様子を聞いているので、気にかけてはいるのだが、甲板にある庭園に誘ってみても断られる事が多い。
今日は断られなかったので一緒に散歩しているが、下ばかり見て黙って後ろからついてくるだけだった。
「少しはここの生活になれた?」
「...」
「何か足りないものとかある?」
「...」
「何かしたい事とかある?勉強なら教えてあげれるよ?」
「...」
今日も安定の無言で視線を合わすこともないようだ。
「あ、ミズっち、ここにいたー。」
「ヒーちゃんを苛めたら駄目だよ?」
「ミズは怖がられているのだから、少しは自覚して近寄らないように。」
「えぇ?なんで?僕何もしてないよ?」
「...し..つ。」
「え?なんて言ったの?」
「ミズ、いいから。あなたは下に行ってなさい。」
「「また後でね~♪」」
三人娘達に追い払われてしまったので精霊達に盗撮と盗聴をお願いしたら、三人娘達に気づかれて怒られた。
『ミズ様。「盗み聞きするなら絶交だよ!」だそうです。いかがしますか?』
『いい。諦める。引き上げさせろ。』
『はい。ミズ様。』
女の子の秘密を暴くのは駄目だそうで、以後ヒルコは三人娘達にまかせることにした。
たまに見かけると楽しそうに笑っていたので快方に向かっているようだった。
東の大陸を試験飛行を兼ねてのんびり回っている間に、建国際の日程やその後の生活とかも決まっていたらしく、船内に兄姉の部屋と母達の部屋が用意され、荷物が時々運び込まれているようだった。
「ミズちゃん、おはよう~。」
「あれ?シェーシャ母さん、どうしたの?」
「私は特に仕事も無いから、先に来たのよ。子供達も一緒よ?」
「あ、にぃにー。遊んで~♪」
「にぃに~♪」
『今日から一緒♪』
「あれ?ゲンブはムツキ姉さんとオラーンジュに行ったんじゃなかったっけ?フミツキいらっしゃい。ハツキはそろそろ念話じゃなく、お口で挨拶しようね。みんな元気にしてた?」
「フミツキとハツキがにぃにと一緒に住むって言ったから僕も来たの。」
「はい!よろしくおねがいします!」
「うー?。よーしくおねぐわいします。」
「みんないらっしゃい。中を案内するよ。」
「はい!」
「「あい!」」
「ミズちゃん、荷物は何処に運ばれたか分かる?精霊さん達が持っていってしまったのよ。」
「あ、はい。先に部屋に案内しますね。」
居住区の部屋に案内した。
図書室も娯楽室もお風呂も別にあるので、ほぼ寝るためだけの部屋なのであまり広くない。
基本的に一人部屋だが、夫婦で使用出来るようにベットはキングサイズだったりする。
「うん。いい部屋ね。窓から外の景色が見えるのもいいわね。」
「夜なら夜空が綺麗ですよ?昼間は青空しか見えませんが、たまに高い山なら見えるかもです。衣装部屋は別にあるので後で案内しますが、もう着替えますか?」
「着替えは別なのね?」
「はい。下着と寝間着はお風呂の隣の部屋に用意してあります。部屋着はここに衣装箱があるので、こちらをご利用ください。外出着等は衣装部屋になります。」
「みんな一緒なの?」
「個人スペースで区切っていますので、衣装部屋の中にさらに小部屋がある感じです。好きに使ってください。」
「ふふ。ミズちゃん、執事さんみたいね?」
「むぅ。せっかくカッコつけたのに~。」
「ふふ。カッコよかったわよ?お母さん
ドキドキしちゃった♪」
「それは良かったです。では、次に案内します。」
居住区の案内の後、他も見たいと言うので農業区と研究室を案内して機関室までやってきた。
「今日は。ミズ様のお母さんですか。ミズ様にはお世話になっています。我々は魔人になったところを助けていただいた者達です。」
今日は機関室で手伝いをしていたようで元魔間と元人人が土精霊と一緒に作業していた。
「今日は。初めまして。今日から一緒に暮らすシェーシャと申します。こちらは元ロート王国の王子コクヨウの子のゲンブです。そしてこの二人がミナツキの弟妹のハツキとフミツキです。」
仕事も一段落したそうなので、昼も近いしみんなで食堂に移動することにした。
今日は子供が増えたのでデザートにプリンがついていた。
いつもは果物なのに、デザートが付くとは。
おかわりのプリンを要求したら、子供三人分ならおかわりするだろうから用意してあると言われた。
「にぃに、僕お代わりしないからどうぞ?」
「わたちもー。」
「あい!」
甥と弟妹から譲られて少しカッコ悪い気がするが、プリンを三つおかわりして上機嫌になっていた。
『ミズ様。プリンがお好きなんですね?毎日ご用意しておきます。』
『いや、流石に毎日はいらないぞ?たまに甘いものが無性に食べたくなるだけだ。今日はたまたまプリンの気分だった。』
午後からは甲板に出て庭園を散歩しながら案内して、のんびりお茶の時間も楽しみ、操縦室が見たいと言うので最後に無人の操縦室に来た。
「誰もいないねー?」
「「ねー?」」
「自動運転だから誰もいなくてもちゃんと飛んでるんだよ?」
「ミズちゃん、この船は今はどの辺をとんでいるの?」
「東の大陸を一周してきて今はロートのフィーア上空辺りかな。これから海に出る予定だよ。」
「あら残念。大陸の空を回ってみたかったわ。」
「風精霊での空路で良ければいつでも飛べますよ?行ってみますか?子供達は僕が見てますよ?」
「え?風精霊の空路って箱が空飛ぶやつよね?中はまあまあだけど、見た目が良くないのよね。部屋が飛んでる感じでちょっとね。」
ふむ。
余り見た目を考えてなかったが、どうやら不評らしい。
我の兄姉達の意見だと見た目より実用的かに傾くので、一般的な意見を取り入れるべきか。
「シェーシャ母さんはどんな感じなら乗りたいですか?」
「そうねー。この船みたいに乗り物だと分かる感じの見た目が良いわね。首都の機関車でも良いわね。もちろん客車だけじゃなく全部よ?」
「機関車の機関部は飛ぶなら使わないよ?客車だけだと駄目なの?」
「見た目の問題よ?客車だけだと変でしょ?」
「そういうものなの???」
機関車だと客車がついて長くなるので発着所をどうするか悩む。
鉄道の駅から飛びたつのはどうなのだろうか?
各国の首都には鉄道を整備してあるから、使えると言えば使える。
着陸した後にそのまま鉄道を走ることも出来るから良いかもしれない。
「うん。鉄道と空路を一緒にするのは良いかも!シェーシャ母さん、ありがとう。早速運用してみるね。」
「あら?機関車を飛ばすの?試運転には乗せてくれるのかしら?」
甥姪弟妹達も乗りたいと騒ぐだろうから、家族旅行でもしてみるか。
この船は既に家だから、大陸を飛んでいても旅行ではないはず。
「兄さん姉さん達が役目を終えたら、迎えに行くついでに試運転してみようと思います。」
「ふふ。じゃあ皆でお迎えに行きましょうね?」
シェーシャ母さんと話している間に、ちびっこ達は寝てしまっていたので、育児精霊達に頼んで部屋に運んでもらった。
船は既に海上を進んで、今夜には禁域に到達する予定だ。
『オプト、海上の地図を映し出してくれ。』
『はい。ミズ様。汚染大陸も表示しますか?』
『ああ、汚染大陸の地図も作成完了したのか?』
『はい。後ででいいのですが、精霊達の浄化をお願いします。船が汚染されるといけないので、外に待機しています。』
『ああ、すまない。すっかり忘れていたよ。』
何日外にいたのだろうか?
雑事に追われてすっかり忘れていた。
風精霊に外につれ出してもらうと、船の後方にキラキラ輝いている光精霊達がいた。
近づいてみると、黒いシミのような部分が染み付いていて、汚染されているのがよく分かった。
『すまない。すぐに綺麗にする。』
『※※※※※※※』
極小精霊は念話が聞こえないので、オプトに通訳してもらったが、皆『気にしないで下さい。』とか『大丈夫です。』とかで我を攻める精霊はいなかった。
怒られないと逆に気分が落ち込んでくる。
急いで正常になるように書き換えて、お詫びに極小から小に書き換えた。
『※※※※※※※※※※』
レベルを上げてないので、念話は相変わらず聞こえないが、感謝の言葉なのだろう。
皆嬉しそうに我の周りをキラキラ輝きながら回っていた。




