小弐期3
飛空船を手に入れたので、早速試運転することにした。
海に浮かべる必要はないのだが、海も陸も空も移動できると面白いかと思って、少し改造してみた。
土精霊に水漏れしないように船底から喫水線まで銅板を張ってもらった。
ただでさえ大きくて重いのに、銅板まで張ってしまったので、風精霊(小)数十体では浮かせる事が難しいようだ。
始祖の風精霊なら一体で浮かせられるそうだが、世界中に散らばっている分霊の指示をしているので、余り細かな操作は出来ないらしい。
『ふむ。木材などの素材は【ステータス】で書き換えたから軽くなっているはずなのだが、内装に設置された機械や色々な設備のせいだろう。』
『ミズ様。重力に干渉出来る精霊を造られてはいかかでしょうか?』
『いや、簡単だから我がやる。飛空船として完成しているから、素材の重力書き換えから個体の重力書き換えにすればいいだけだ。』
飛空船にかかる重力を書き換え軽くすると、風精霊(小)一体でも浮かせられるようになった。
船は軽くしたが、乗船する人間はそのままなので、大勢乗り込むときは風精霊(中)にお願いすることにした。
とりあえず準備が出来たので出発しようとしたら、大声をあげながら三人娘達がやってきた。
どうやら飛空船が大きくて学校から見えてしまっていたらしい。
「やっぱりミズっちだった~♪」
「これは船ですか?」
「面白そう!乗せて~♪」
「あれ?今日は魔法の指導日じゃなかった?」
「面白そうなものが見えたから、自習にした~♪」
「基本は教えてあるので後は練習のみなのです。」
「見てるだけだからつまらないの~。」
「う~ん。ならいいのかな?じゃあ中を案内するよ。え~と、まだ乗船用のタラップ作ってないから、浮かすね?」
「ああ、大丈夫です。自分達で飛べますから。」
「えぇ?もう空を飛ぶ魔法のができたの?」
「もちろん!」
「すごいでしょ~♪誉めて良いよ~♪」
どうやっているのか見てみると、風精霊(極小)に魔力を渡して少し補助してもらっているようだが、基本は魔力だけで重力に反発しているようだった。
「魔法は浮くだけ?移動は風精霊?」
「ええ。まだ中途半端なんです。」
「まだ浮くだけだけど、もうちょっと研究進めば自由自在にできるはず~♪」
「あとちょっとなの~♪」
とりあえず三人娘達は問題なく甲板に上がり、我も風精霊に運ばれた。
自身の重力を書き換えて、重力のかかるベクトルも操作すれば空中を移動出来るのだが、細かく書き換えながら移動するより、風精霊に運んでもらった方が早いので、最近は全て精霊に任せている。
精霊達も絶えず我の周りをウロウロしてお役目が無いか伺っているので、些細なことも頼むようにしている。
「ミズっち、早く案内して♪」
「早く!早く!」
「ここは庭園ですか?甲板に思えませんね。外からは樹木が見えなかった気がしますが。」
「うん。光精霊に隠蔽してもらってる。裸で日光浴しようと思ってたから。」
「「「えっ?」」」
「みんな来たからやらないよ~?」
「そうですか...。」
「...。」
「...残念。」
「ん?裸で日光浴したかった?僕は下に行くから日光浴してる?」
「「えっ!いいの?」」
「誰にも見られないなら、したいです。」
「うん、分かった。じゃあ、満喫したら風精霊に伝言伝えて。迎えに来るから。」
「「ありがと~♪」」
「ありがとう」
どうやら庭園を気に入ってくれたようで、しばらくは日光浴しているだろうから、出発することにした。
『とりあえず大陸横断するぞ。』
『はい。ミズ様。』
『オプト、船全体を見えなくしろ。風精霊は東に進路をとれ。』
『『はい。ミズ様。』』
国境の山を越え、元ブラウ王国の上空に入った所で、空路を確立するための地図を作成することにした。
『オプト、光精霊達にここから見える地上の景色をこの木板に焼き付けてもらってくれ。』
『はい。ミズ様。この高度から見える全世界の景色でよろしいですか?』
『ん?この大陸だけのつもりだったが、世界中か。海上もか?』
『お望みでしたら。小さな島がいくつか点在していますので。』
『う~ん。禁域の大陸も行けそうか?』
『はい。後程精霊達を浄化していただければ、可能かと。』
まだ汚染が酷く、浄化中で禁域になっている大陸も、大昔は豊かな大地だったらしいので、浄化して我の研究用の島にするのもいいかもしれない。
『うむ。できるなら世界中の地図を作成しよう。そのうち役に立つだろう』
『はい。ミズ様。』
ゆっくり飛びながら、光精霊達に地図を焼いてもらっていると、満足した三人娘達から船内の案内をしてと伝言が届いた。
『オプト、少し離れるから後は任せる。この大陸の地図が完成したら教えてくれ。』
『はい。ミズ様。』
船内の案内をするために甲板に上がると、ご機嫌な三人娘達がいた。
「ミズ、ありがとう。とても気持ち良かったです。」
「やっぱり裸は気持ちいいね~♪」
「だね~♪大きくなったら駄目って怒られて、できなくなったもんね~♪」
「そうだね。川で水浴びする時も裸は駄目って言われるね。僕はまだ大丈夫みたいだけど。」
「女の子は五歳から駄目って言われるね。」
「「私達は三歳から言われた~」」
「そうなんだ。今日はもう日が暮れるから、明日は僕が先に日光浴するからね。」
「「分かった~♪」」
「分かりました。というか、明日も飛んでるのですか?」
「え?大陸横断飛行してから世界一周するから、しばらく飛ぶよ?一年位かな?一ヶ月は大陸横断飛行してるから、帰る時は風精霊に送らせるよ。まだここからならすぐ帰れるし。」
「ミズはその間研究はどうするのですか?」
「僕はこの船に研究室を作ったから、ここでやるよ?」
「「え~。ずるい~。」」
「私達の研究室も準備してもらえますか?」
「部屋は余ってるからいいけど、荷物はどうする?取りに戻る?」
「う~ん。明日でいいかな~?」
「かな~。」
「そうですね。今日は中の案内をしてもらって、寮まで送ってください。準備をするので明日また迎えに来てください。」
「うん。分かった。じゃあ、中の案内するよ。」
船内は居住区の他に農業区もあり、自給自足が出来るようになっているのだが、主に精霊達が作業する所だし案内は居住区だけにした。
多数ある客室は少し手狭なので、研究室には向かないと言われたので、貨物室の一部を区切って研究室を新たに三つ造ることにした。
「燃やしたり、爆発したりする実験はする?」
「そうですね。魔力操作に失敗するとよく爆発したりしますね。」
「私は魔力で火を操作する研究だから、燃えるかな~?」
「最近は、火水木風土を魔力で操作する方法を研究してるよ~?」
「略して火魔法、水魔法、木魔法、風魔法、土魔法です。」
「みんな凄いね。僕は精霊にお願いしかしてないや。」
「ミズっちは精霊を造れるから凄いよ!」
「そうだよ!私達の魔法も精霊に助けてもらってるもん!」
精霊は、我の本体からのエネルギーがこの器の体に入りきらなくて生じたものだから、造ったというより勝手に出来てた印象が強い。
赤子の時から漏れまくったエネルギーは、我の側で滞留して異界が生じ、異界で精霊の元の意思がたくさん生じている。
機会があるとすぐに顕現して出てこようとするものばかりだ。
「精霊は造ったというより、精霊のいる所からこっちに出てきてもらったって感じだよ?」
「それでも、ミズじゃなきゃ出てきてもらえないってことでしょう?」
「「愛されてるね~♪」」
「愛なの?!」
『ミズ様。精霊は皆ミズ様を愛しております。』
『そうですじゃ。皆ミズ様を敬愛しており、一部には寵愛を欲しておるやつもおりますじゃ。』
『寵愛は無理だろう。我はまだまだ子供だぞ。』
『精霊は不老ですから、ミズ様が大人になるまで
お待ちします。』
『ん?、オプト、いつの間にこっちに来たんだ?地図は?』
『地図はきちんと作成中です。特に私が見ている必要もないので、お側に控えさせていただきます。それと、話の流れ的に私にも家精霊達のような肉体をくださいませんか?ミズ様を抱き締めてみたいのです。』
『ふむ。オプトには世話になっているから別に良いが、家精霊達のような人間の女性体がいいのか?それとも男性体か?』
『できましたら両方あると便利かと。あぁ、子供の体もあれば御一緒に学校に通って勉強ができますね。』
『子供の体もか。まあ、抱き締めてもらうなら護衛の体より柔らかい方が我も嬉しいから考えておく。』
『ありがとうございます。よろしくお願いします。』
「ミズっち、精霊とお話中~?」
「まだ終わらない感じ~?」
「ごめん。もう終わった。次はどこ見る?だいたい主要なところは案内したけど。」
「そうですね。娯楽室は余り興味は無かったですが、図書室は良いですね。あれだけの本をよく集めましたね。」
「ああ、本は獣人達から寄贈されたから、人間の国より豊富にあるよ!失われた過去の人間の歴史が分かるほどね!」
「それは凄いですね。もう学校に通うよりここに住んでしまった方がいい気がします。」
「「あ、それ良いね~♪」」
「えーと、一応十歳まで義務教育にしたから、それまでは時々で良いから学校に通ってね?」
「私は来年十歳ですから、あと十ヶ月ですね。」
「えー。あと二年弱かー。」
「ここから通えないかなー。」
「ここに定住して、ここから通うのも良いけど、この船は世界一周するよ?別の大陸からは風精霊達に運んでもらっても半日はかかるよ?」
「ミズはその間どうするつもりですか?」
「僕は獣人の国に出入り自由だから、転移してくるつもりだよ?」
「「えー。ずるーい。」」
「私達も獣人の国には行ったことがあるのだから、転移させてもらえないでしょうか?」
「多分無理かな?あの時は緊急事態だったから、特別に一部エリアに入れただけでしょ?」
「獣人先生の家にも行ったことがあるよー?」
「ねー。」
「それも僕も一緒だったから特別に先生の家だけ入れたんでしょ?」
「ミズと一緒なら転移も使用できるということでわ?」
「「そうだよー。」」
「分かったよ。一応聞いてみるよ。駄目だったら諦めてね。」
「分かりました。」
「「うん。ありがと~♪」」
家精霊達が夕食を作ってくれたので、みんなで星を見ながら甲板で食事をして、風精霊達に寮まで送ってもらった。
我は日頃の子守り疲れの解消で、一週間の休みを勝ち取っているので、今夜からぐっすり眠れる。
明日は獣人の国に行って、転移装置を人間に使わせてもらえるか聞いてから、三人娘達を迎えにいく予定だ。




